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都市再生基本方針

平成14年7月19日
閣議決定
平成16年4月16日
一部変更

我が国の活力の源泉である都市について、その魅力と国際競争力を高め、都市再生を実現するためには、公共だけでなく民間など関係者が総力を傾注することが重要である。政府は、都市再生におけるこのような取組みの共通指針として、本基本方針を定める。

第一 都市再生の意義及び目標に関する事項

1  都市再生の意義

  • 21世紀の我が国の活力の源泉である都市について、急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に対応して、その魅力と国際競争力を高めることが、都市再生の基本的な意義である。
  • また、都市再生は、民間に存在する資金やノウハウなどの民間の力を引き出し、それを都市に振り向け、さらに新たな需要を喚起することから、経済再生の実現につながる。
  •  さらに、都市再生は、土地の流動化を通じて不良債権問題の解消に寄与する。

2  都市再生の目標

  • 我が国の都市を、文化と歴史を継承しつつ、豊かで快適な、さらに国際的にみて活力に満ちあふれた都市に再生し、将来の世代に「世界に誇れる都市」として受け継ぐことができるようにする。
  •  その際、以下の観点を重視する。
    • ア  高度成長期を通じて生じていた都市の外延化を抑制し、求心力のあるコンパクトな都市構造に転換を図る。
    • イ  地震に危険な市街地の存在、慢性的な交通渋滞、交通事故など都市生活に過重な負担を強いている「20世紀の負の遺産」を緊急に解消する。
    • ウ  国際競争力のある世界都市、安心して暮らせる美しい都市の形成、持続発展可能な社会の実現、自然と共生した社会の形成などの「21世紀の新しい都市創造」に取組む。
    • エ  施設等の新たな整備に併せ、これまで蓄積された都市資産の価値を的確に評価し、これを将来に向けて大切に活かしていく。
    • オ  先進的な産業活動の場としての側面と暮らしや生活を支える側面という都市が併せ持つ二つの機能を充実させ、国民生活の質の向上に資する。

第二 都市の再生のために政府が重点的に実施すべき施策に関する基本的な 方針

1  都市再生に取組む基本姿勢

  • 都市再生を重点的に実施するため、以下の考え方に沿って対象地域、対象分野などを特定し、優先順位をつけて関係省庁が施策を集中する。これに併せて、関係地方公共団体等とも相互に協力しあって各種施策を戦略的に推進する。

2  都市再生施策の対象地域

  • 都市が我が国の活力の源泉であることにかんがみ、全国それぞれの都市について、その地域の実情に応じて的確な都市再生を進めることが必要である。その中でも特に、
    • ア  我が国の経済の牽引役となる東京圏、大阪圏など大都市圏が国際的にみて地盤沈下していることから、この大都市圏を、豊かで快適な、かつ、経済活力に満ちあふれた都市に再生することに取り組む。
    • イ  地方都市をはじめとする各都市については、人と自然との共生、豊かで快適な生活を実現するためのまちづくり、市街地の中心部の再生、鉄道による市街地分断の緩和・解消など、共通する横断的な、かつ、構造的な課題を抱えており、これらの課題に重点をおいて都市の再生に取り組む。

3  都市再生施策の重点分野

  • 都市再生の施策を進めるにあたって、その対象分野としては、以下に掲げる施策を重点分野としてとらえ、「都市機能の高度化」と「都市の居住環境の向上」に向けて、関係省庁の施策を、施設整備だけでなく規制改革など必要な制度改善を含め、総合的に推進する。
    • ア  活力ある都市活動の確保
    • イ  多様で活発な交流と経済活動の実現
    • ウ  災害に強い都市構造の形成
    • エ  持続発展可能な社会の構築
    • オ  誰でも能力を発揮できる安心で快適な都市生活の実現
    •    (注)具体的な施策例は別添1に記述のとおり。

4  都市再生施策の総合的な推進

  • 都市再生施策を企画立案するにあたっては、一つの視点に偏ることなく、以下に掲げるそれぞれの視点を複合的に組み合わせ、総合的な施策体系を構築し、これらの施策を推進することが重要である。
    • ア  「国際的な経済活力の回復を目指す取組み」と「身の回りの生活環境や地域社会経済の活性化を目指す取組み」
    • イ  「都市構造の根幹を変革する取組み」と「現状で直面する問題を緊急に解決する取組み」
    • ウ  「国及び地方公共団体等の公共主体の取組み」と「民間主導を進めるための規制改革・金融等の条件整備をする取組み」
  • このような考え方に基づいて、既に、平成13年5月8日の閣議決定に基づく都市再生本部において、各種の措置を講じてきたところであるが、今後とも、これらの施策の体系を踏襲しつつ、一層の施策の充実を図っていくとともに、第三及び第四のとおり、都市再生特別措置法に基づく施策を推進する。

第三 都市再生緊急整備地域を指定する政令の立案に関する基準その他基本 的な事項

1  都市再生緊急整備地域の指定基準

  • 都市再生特別措置法第2条第3項に基づき、都市計画・金融等の諸施策の集中的な実施が想定され、市街地の整備を緊急かつ重点的に推進する必要があると判断した地域であって、以下の具体的な指定基準に該当する地域を「都市再生緊急整備地域」として指定する。
    • ア  早期に実施されることが見込まれる都市開発事業等の区域に加え、その周辺で、土地所有者の意向や地方公共団体の定めた計画等に基づき都市開発事業等の気運が存在すると認められる地域
    • イ  都市全体への波及効果を有することにより、都市再生の拠点となる的確な土地利用の転換が将来見込まれる地域
    •    (注)具体的な地域イメージ例は別添2のとおり。

2  都市再生緊急整備地域の指定の進め方

  • 都市再生緊急整備地域は、現下の経済の現状に鑑み、早期の効果発現を目指して、都市再生特別措置法の施行後できるだけ迅速に第一次の指定を行う。その後、全国における都市再生の動きに対応しつつ、都市開発事業等の熟度などに応じて、本格的に、第二次以降の指定に着手する。

3  都市再生緊急整備地域における施策の集中的実施

  • 都市再生緊急整備地域においては、民間の時間感覚にあわせ、その創意工夫を最大限に生かすことを主眼として、都市再生特別措置法において規定している都市計画特例、金融支援措置だけでなく、許認可の適切な運用、公共施設その他の公益施設の重点的な整備や、都市再生上必要となる施策について、国及び関係地方公共団体が総力をあげ、当該地域の整備のため緊急かつ重点的な実施に努める。さらに、施策効果の発現状況等を踏まえ、これらの取組みについて集中的実施のために不断の見直しを行う。
  • また、都市再生緊急整備地域の整備にあたって、関係省庁、地方公共団体及びその他の関係者の意見調整が不可欠な場合には、都市再生緊急整備協議会を組織し、透明な手続きの中で時間を限って関係者間で調整を行い、迅速にその解決を図る。
  • なお、都市再生緊急整備地域の指定をするまでの都市開発事業の熟度や関連する公共公益施設の計画の具体性など条件整備が整わない場合には、都市再生本部において、都市再生緊急整備地域の指定に準じた手続きにより「都市再生予定地域」を設定し、この枠組みの中で、関係者が意見調整を行い、条件整備を迅速に進めるものとする。

4  都市再生緊急整備地域の整備にあたっての配慮等

  •  都市再生緊急整備地域の整備にあたって、国土の利用、開発及び保全に関する総合的な計画など国が定める計画との齟齬を来すことのないよう留意する。
  •  また、緑、水、大気、エネルギーや景観など都市の環境の保全・改善や、従前居住者の居住の確保などにも配慮する。
  • さらに、当該地域において都市開発事業に係る都市計画提案を行うに際しては、都市計画マスタープランなどを勘案しつつ、民間の創意工夫を十分に活かして進める。

第四 都市再生整備計画の作成に関する基本的事項

1  自主性と創意工夫による全国の都市再生の推進

  •  稚内から石垣まで全国の都市を対象として、身の回りの生活の質の向上と地域経済・社会の活性化を図る都市再生の取組を推進する。
  •  市町村の意欲的取組とこれに対する国等の支援の基本的枠組となる
    •  地域の自由な発想が活かせるまちづくり交付金
    •  都市再生に必要な権限の一体化
    •  行政と民間まちづくり活動との連携・協働
  • について、市町村が都市再生特別措置法第46条第1項の規定に基づき作成する「都市再生整備計画」は、市町村の自主性を尊重し、少子・高齢化等の地域社会の変化の動向、歴史・風土・景観、環境、産業構造、交通上及び市街地の安全上の課題などの地域の特性に応じ、地域の有形・無形の資源を活用した創意工夫を最大限発揮することを目指すものとする。

2  都市再生整備計画において具体的に明らかにされるべき視点等

  • 都市再生整備計画においては、選択と集中の考え方に立脚し、以下の視点を明らかにしつつ、現実的な計画期間内において迅速に実施すべき具体的事業・施策を内容とするものとする。
  • ア  得られる成果の重視、ソフトの充実等による戦略的・効率的実施
    • ○  得られる成果を重視し、計画に基づき実施される事業・施策についてできる限り客観的で透明性の高い適正な評価が図られること。
    • ○  既存施設の活用、ソフト施策との連携重視などにより、事業・施策の効率的実施と文化、環境、居住等の都市の機能の増進が図られること。
    • ○  構造改革特別区域、地域再生計画、観光施策等の活用を含め、関連し合う諸施策の連携と相乗効果の発揮が図られること。
  • イ  民間のまちづくりに関する活動等との連携・協働
    • ○  計画・事業・運営への地域の積極的参加と民間のアイデア・ノウハウ等の活用が図られること。
    • ○  まちづくりに関する住民、産・学、特定非営利活動法人、専門家等による民間の活動との協働とこれに対応した機動的な事業・施策の実施が図られること。

(別添1)都市再生施策の重点分野

1 活力のある都市活動の確保

  • ○ IT等を活用した交通渋滞・交通事故対策
  • ○ ボトルネック踏切、渋滞ポイント解消
  • ○ 民間投資誘発効果が高い都市計画道路等の優先整備
  • ○ 通勤・通学混雑解消
  • ○ 国際物流機能の強化など物流の効率化・円滑化     等

2 多様で活発な交流と経済活動の実現

  • ○ 国際交流機能の強化や都市観光の推進
  • ○ ITなど将来成長産業の育成
  • ○ 地域に密着した商業をはじめとする都市型の産業の活性化
  • ○ 大学など高等教育機関等と各種都市機能の連携・一体化 等

3 災害に強い都市構造の形成

  • ○ 密集市街地の整備
  • ○ 震災対策
  • ○ 都市型水害対策                   等

4 持続発展可能な社会の構築

  • ○ 廃棄物・リサイクル対策
  • ○ 都市公害対策
  • ○ 地球温暖化対策・ヒートアイランド対策
  • ○ 自然との共生等水や緑を活かしたまちづくり
  • ○ 美しい都市づくり             等

5 誰でも能力を発揮できる安心で快適な都市生活の実現

  • ○ バリアフリー
  • ○ 職住近接のまちづくり
  • ○ 既存住宅ストックの改修・更新
  • ○ 保育・介護等生活支援サービスの充実
  • ○ 都市型犯罪対策
  • ○ 安全でおいしい水の確保 等

(別添2)都市再生緊急整備地域のイメージ例

 第三の1の都市再生緊急整備地域の指定基準に該当すると考えられる都市再生緊急整備地域の具体的な地域イメージの例は以下のとおり。

  • ○ 高度成長期を牽引してきた重厚長大産業用地等で、大規模土地利用転換が見込まれる地域
  • ○ 駅等交通結節点及びその周辺で、生活・交流等の拠点形成が見込まれる地域
  • ○ メインストリート等基盤が整備されている市街地で、建物更新・共同化等が見込まれる地域
  • ○ 既成市街地において広幅員の道路整備を行う地域で、沿道の一体的開発が見込まれる地域
  • ○ 防災上危険な密集市街地で、一体的総合的な再開発が見込まれる地域
  • ○ バブル経済の遺産ともいえる虫食い土地等細分化された土地の集約化と有効利用が見込まれる地域
  • ○ その他、大規模な民間都市開発投資が見込まれる地域