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地方創生 対話フォーラム

開催レポート

地方が活力を取り戻し、安心して暮らしていけることが、日本再生の大きな力になります。それが2025年6月、閣議決定された「基本構想」の目標であり、その実現に向けた方策などを検討する「地方創生対話フォーラム@東海・北陸ブロック」が10月27日、福井県立大学 永平寺キャンパス(福井県永平寺町)で開かれ、地域で取り組まれている好事例を紹介いただき、地方創生の推進に向けた議論を深めました。

※所属・肩書・組織名等は、2025年10月27日時点のものです。

全編動画

開会挨拶

開会挨拶

大野 達

内閣官房 新しい地方経済・生活環境創生本部事務局 次長

「新結合」で地方に新たな価値を

地方創生の取り組みでは、全国各地でさまざまな好事例が生み出されてきたものの、人口減少、東京一極集中の流れを変えるには至っていません。「基本構想」は、「新しい日本、楽しい日本」を目指す姿として掲げ、今後10年を見据えた方向性を示しています。異なる分野の施策・人材・技術を組み合わせる「新結合」で新たな価値を生み出す考え方のもと、国としては多様な主体の参画を通じた地域の取り組みを強力に支援してまいります。

来賓挨拶

来賓挨拶

杉本 達治

福井県知事

地方創生は具体的に取り組めば実を結ぶ

福井県では、北陸新幹線福井・敦賀開業を活かした「恐竜王国福井」のブランディングや、子育て支援の拡充などによって、デジタル庁の地域幸福度指標で今年、幸福度が都道府県別でトップとなりました。地方創生は、しっかりと取り組めば効果が上がると考えています。今回の対話フォーラムを実り多いものにして、地域活性化、地方創生、地域未来戦略といったことを各地域で進めていただければと思います。

政策説明

政策説明 政策説明
政策説明 政策説明

大野 達

内閣官房 新しい地方経済・生活環境創生本部事務局 次長

「強い経済」「豊かな生活環境」「新しい日本・楽しい日本」

「強い経済」と「豊かな生活環境」の基盤に支えられる多様性の好循環が「新しい日本・楽しい日本」を創る。基本構想ではこれを10年後に目指す姿としています。
「強い経済」とは、自立的で持続的に成長する稼げる経済の創出で新たに人を呼び込む強い地方経済を育てること。「豊かな生活環境」は、生きがいを持って働き、安心して暮らせる環境を構築して、地方に新たな魅力と活力を生み出すこと。そして、「新しい日本・楽しい日本」は、若者や女性にも選ばれる、一人ひとりが幸せを実感できる地方を創出することです。

地方産業の高付加価値化、新技術の活用などを促進

実現に向けた政策の柱は、①安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生②稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生③人や企業の地方分散④新時代のインフラ整備とAI・デジタルなどの新技術の徹底活用⑤広域リージョン連携の5本です。
①では、若者や女性に選ばれる地方になるための地域づくり、日常生活に不可欠なサービスを維持していくための拠点づくりなどが含まれます。②では、地域のポテンシャルを生かした多様な要素の新結合でイノベーションを起こし、地方経済に活力を生み出します。③では、東京一極集中の是正に向けて、人や企業、大学などの地方分散を進め、地方への新たな人の流れ、関係人口の拡大を図ります。④では、GX・DX・AI・デジタル分野のネットワーク整備や産業立地、大規模投資を促進します。⑤では、複数の自治体と企業、大学、研究機関などが広域に連携する枠組みを整えます。

制度改革や効果的な広報周知活動も実施

こうした政策に関わる各主体への支援策も国では用意しています。
具体的には、使い勝手を改善し、大幅に増額した交付金をはじめ、国の職員が中小規模の自治体の課題に副業的に取り組む伴走支援制度、自治体からの新結合に関する相談を受けるワンストップ窓口の開設、地方創生に関する各種指標を自治体間で比較可能な形で可視化した地域課題ダッシュボードなどです。さらに、必要な制度改革の検討を進めるほか、効果的な広報周知活動を通じ、国民的な機運醸成も図ってまいります。

トークセッション1

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テーマ:新結合による地域ブランディングの推進

能作 千春

富山県

能作 千春

株式会社能作 代表取締役社長

「見せる工場」で産業観光に注力

弊社は富山県高岡市で109年の歴史をもつ鋳物工場です。先代である父が2002年に自社ブランドを立ち上げ、錫(スズ)を用いた製品づくりを開始しました。現在、テーブルウエアやインテリア、アクセサリーなどを、伝統技術を生かして製造しています。鋳物は、かつては3Kのイメージが強い産業でしたが、このイメージを変え、「ものづくりの素晴らしさを伝えたい」との思いから、産業観光に力を入れ始めました。
2016年、私たちは社内に産業観光部を設立し、2017年には本社工場を「見せる工場」として移転新築しました。ここでは、職人の作業を五感で体感できる工場見学や鋳物製作の体験工房、地元の食材を弊社の食器で楽しめるカフェを設け、結婚10周年の「錫婚式」を祝うブライダル事業も行っています。「ものづくり」だけでなく、「ことづくり」を通して豊かな「時」を提供することで、今では年間13万人以上が訪れるようになり、本社工場前には「能作前」というバス停までできました。

「面白い」が若者の雇用に大きな効果

こうした取り組みは、人材の雇用と育成にも劇的な効果をもたらしています。工場の平均年齢は30代半ばです。採用コストをかけなくても、ファンになった若者たちが「ここで働きたい」と集まってくれます。
子どもたちに地域に根差した産業の素晴らしさを伝え、シビックプライドを高めること。そして何より、私たちが「面白い」と楽しむ気持ちが、地方創生につながると信じています。

谷川 由美子

福井県

谷川 由美子

福井県立恐竜博物館 館長

研究の継続がブランドの土台に

1989年に発掘調査を開始した当初、福井県にとって「恐竜」は、ほんの小さな種に過ぎませんでした。「恐竜なんて出るわけない」と言われた時代もありましたが、現在までに日本で発見された新属新種の恐竜の約半数が福井で見つかっています。熱意を失わず研究を続けたことが、今日のブランドの核、土台になっています。
福井県立恐竜博物館は2000年に開館しました。開館以降、リニューアルを重ね、地層の観察や発掘体験ができる「野外恐竜博物館」や、通年で化石クリーニングやCT化石観察ができる「化石研究体験」など、コンテンツを強化してきました。「化石研究体験」は国際的なデザイン賞も受賞しています。11月からはリアルに動く恐竜が間近に迫ってくるライブショーも始まります。

地域全体を巻き込み「恐竜王国」へ

企業とのコラボや県外へのPRも実を結び、昨年度の入館者数は初めて100万人を突破しました。重要なのは、こうしたコンテンツを地域全体で活用している点です。北陸新幹線開業に合わせ、行政と経済団体が一体となり、福井駅前に恐竜モニュメントを設置しました。当初、「恐竜は化石を産出する勝山市のもの」という意識もあったのですが、県が「恐竜王国福井」の旗を振り続けた結果、今では県内全域で活用されるようになっています。
この春には福井県立大学に日本初の「恐竜学部」も開設され、来年には博物館の横に学部棟が完成します。大学との連携による人材育成や新産業の創出に期待が集まるほか、今後はリゾートホテルの開業や中部縦貫自動車道の開通といった環境変化を生かし、来館者の満足度向上と経済波及効果の拡大につなげたいと考えています。

松井 侑樹

岐阜県

松井 侑樹

「やくならマグカップも」活用推進協議会事務局

多治見の伝統産業をアニメ化

「やくならマグカップも(やくも)」は、美濃焼の産地である多治見市を舞台に、女子高生が陶芸の魅力にのめり込むアニメです。もともとは、2012年に地元の事業者が多治見のPRのために発刊したフリーコミックで、当時から花火大会のポスターやタクシーのラッピング、ラジオドラマなどに起用されていました。
アニメ化は、19年に多治見在住の日本アニメーションの社員さんが企画を上げたことで制作が決まり、それと同時に市役所内に当協議会も設置されました。ロケの協力に加え、放送前からモニターツアーやロケ地マップ作成などを実施しました。21年のアニメ放映時には、声優さんを呼んでの記念イベントや焼き物甲子園の開催、市内のお店を巡るコレクトラリーなどでまちを盛り上げました。

地域発だからこその自主展開

アニメ放映は4年前ですから、「やくも」はもう下火かと言うと、そんなことはありません。今もラッピングバスを運行していますし、今年度、JR多治見駅にフォトブースを設置し、改札の音声も声優さんのナレーションが流れるようにもなりました。
行政だけではありません。地域の皆様の自主的な取り組みもあります。銀行さんがカードを作ったり、バス会社さんがツアーを組んで、それがニュースになったり。「やくも」の焼印を押したあん巻やサイダーのほか、「やくも」グッズを大量にそろえるコンビニだったり、JRの改札音声のポスターを高校生が作ってくれたりもしています。
こういった展開が生まれるのは、アニメ化が単に外から来た棚ぼた企画ではなく、「やくも」が地域で生まれ、地域で育ったからこそではないかと思います。

山田 久貴

静岡県

山田 久貴

熱海市役所 観光経済課 メディアプロモーション戦略室 室長

宿泊客の減少を捨て身で克服

熱海市は東京から近く、高度経済成長期に首都圏から多くの宴会旅行客がお見えになりました。これは熱海が何か仕掛けたわけではなく、時代の流れでした。
その一方で、「歓楽温泉街」「男性天国」という負のイメージが残念ながら定着し、熱海の宿泊客数は1969年をピークに、2011年には半数を割るまでに落ち込みました。さらに、新東名高速の開通、北陸新幹線金沢開業、LCC(格安航空会社)の拡大などによって旅行先の選択肢が増え、逆風が強くなることも当時予想されていました。

費用をかけずメディア露出

そうした危機感の元、落ちた熱海ブランドの刷新を図るため12年にスタートしたのが、テレビ番組のロケ支援事業です。事業タイトルは「ADさん、いらっしゃい!」。予算は0円の事業でした。
平日の定時勤務の印象の強い市職員が、たった一人で24時間365日、無茶なバラエティー番組のロケに喜んで対応しました。絶対不可能と思われた住宅街でのゴルフや、公共ビーチでの大爆破なども受け入れました。
おかげで、業界に「バラエティーの聖地・熱海」「困ったら熱海」というイメージが広がり、市民のご理解とご協力、市役所内の応援もあってロケがあれよあれよと増え、ロケ数は13年間でドラマ・映画も含めて1,300本を超えました。この事業自体を取り上げる番組も計82本放送されました。
メディアで熱海の露出が増えるのに合わせて、宿泊客数も増えました。認知度が高まり、来訪者も増えた結果、23年の全国市区町村魅力度ランキングで13位の評価をいただくまでになりました。
熱海に観光地としてのポテンシャルが備わっていたからこそ、地元の皆さんの努力も重なって、「劇薬」の効果が得られたのだと思います。

岸田 里佳子

モデレーター

岸田 里佳子

内閣官房 新しい地方経済・生活環境創生本部事務局 内閣審議官

トークセッション2

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テーマ:産学官連携の推進

小田切 信之

石川県

小田切 信之

金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター(ICC) 教授

連携先は国内のみならず欧州へも

炭素繊維複合材料を新たな地域産業に育てる研究開発拠点として当センターは発足しました。産学官が一つ屋根の下に集まっている点、異分野融合体制で研究開発を進めているところが特徴です。多くの企業がサテライトラボとして当センターを活用するほか、産業技術総合研究所が全国初のブリッジ・イノベーション・ラボラトリを当センター内に開所し、見学も含めると年間で6,000人が訪れています。
地域のクラスター企業をパートナーとして新しい複合材料技術を開発、社会実装してきました。成果はいくつかあります。例えば、鉄筋の代わりにFRP(繊維強化プラスチック)筋を使用することで長寿命化を実現したコンクリート構造体をはじめ、船舶の燃費改善に役立つ伸縮式の帆、陸上競技用シューズのソールに採用された熱可塑性ランダムシート、善光寺や富岡製糸場の補強工事に使われた軽くて強い耐震補強ストランドロッドなどです。
連携のネットワークは海外にも延びています。欧州最大の科学分野の応用研究機関であるフラウンホーファ研究機構と協同イノベーション拠点を当センター内に開設し、欧州につながるゲートウェイができました。地方にあっても、首都圏の研究機関や大学に決して劣らない連携を実現できているのです。

「産」と「学」の間には緊張感を

「産官学」の連携が今回のフォーラムのテーマですが、特に「産」と「学」の間には、真剣勝負の緊張感が必要だと私は思っています。成果と対価を正当に尊重し合い、互いに妥協しない。一方で、「官」には経済合理性に左右されないビジョンや方向性を示し、立法と行政で主導し、時にはそのための予算も付ける。新技術の社会実装を加速させるには、そうしたことが欠かせないと感じています。

柴山 政明

愛知県

柴山 政明

愛知県経済産業局 顧問

国際イノベーション都市の実現へ

本県の基幹産業である自動車産業が100年に一度と言われる自動車産業の変革に伴った地域産業の構造転換が想定されることから、スタートアップを起爆剤としたイノベーションを巻き起こすため、2024年10月に日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」をオープンしました。
「国際イノベーション都市」として持続的成長軌道を描くには、AIを筆頭とするデジタル技術の加速度的な進展が必要であり、その原動力としてスタートアップに期待しています。
また、愛知県は2034年以降に開通するリニア中央新幹線によって東京都と40分で結ばれ、超巨大な都市圏が誕生します。これを見据え、2024年12月に東京都と、世界の投資家や企業を呼び込む「国際イノベーション都市」の実現に向けた協定を締結しました。関係人口の増加や二地域居住の浸透により新しい形が生まれるでしょう。

多くのスタートアップ企業が参画

そうした点を念頭に置いて現在展開中の愛知県版「地方創生モデル」では、社会課題の解決と地域活性化のアイデアを引き出す「革新事業創造戦略」と、オープンイノベーションやスタートアップグロースなどを推進する「Aichi-Startup戦略」を両軸としています。前者のプラットホームとなる「A-IDEA」、後者の拠点となる「STATION Ai」も設けました。
本県との連携でソフトバンクが2024年10月に開設した「STATION Ai」には、スタートアップ約590社、パートナー企業約350社が会員として所属し、各企業のオープンイノベーションをサポートしています。「STATION Ai」には研究開発機能がありませんので、ドイツのフラウンホーファ研究機構をモデルとした「知の拠点あいち」も整備しました。
このほか、9カ国22支援機関・大学とグローバル提携し、世界イノベーション創出の中核都市としての地位確立を目指しています。

冨樫 健二

三重県

冨樫 健二

三重大学 副理事(学生支援/附属学校担当)・副学長

地元定着を促す資格プログラム

三重県では1990年代以降、若者を中心に県外流出が続いており、県内企業の50%以上が「人手不足」を経営課題に挙げています。
県は、若者に地元への関心を深めてもらい、将来的な定着を促そうと、2016年、県内14の高等教育機関と連携して「高等教育コンソーシアムみえ」を設立しました。その中核となるのが、地域課題の解決に主体的に取り組む人材である「三重創生ファンタジスタ」の養成プログラムです。
学生向けのこのプログラムでは、三重県の特長や課題を学ぶ授業を各教育機関で開講しています。これに加えてディスカッションやフィールドワークも実施し、学生は多様な立場の人々と協働しながら行動する力を養います。6単位の履修で「ベーシック資格」、12単位で「アドバンス資格」、面接などの選考を経て「エキスパート資格」を取得できます。所属校だけでなく他校の授業も単位対象として認められ、学生間の交流促進にもつながっています。

自主的な地域活動の広がりも

資格取得者は未取得者と比べ、県内企業や自治体への就職率が高い傾向にあります。企業側にも協力の働きかけをしており、「応援企業」に登録してもらった場合、各高等教育機関内で行われる就職説明会に優先して招くなど、学生との接点が増えるメリットを設けています。資格の有無を採用時の参考にする企業もあり、学生の間では、資格取得が就職活動における強みとして認識されています。
また、プログラムから派生した学生組織「三重創生ファンタジスタクラブ」には、現在130人を超えるメンバーが所属しています。インスタグラムでの観光・飲食店情報の発信や、観光マップ作成など、地域課題を解決するための自主活動に取り組んでいます。

石山 志保

新しい地方経済・生活環境創生会議メンバー

石山 志保

大野市長

「日本一美しい星空」をブランドに

大野市の六呂師高原は、環境省が2005年度に実施した「全国星空継続観察」で、「日本一美しい星空」となりました。そこで本市では、この星空を地域ブランドとして活用する取り組みを2018年から進めてきました。中部縦貫自動車道の県内全線開通を見据え、「通過点でなく、到着地として訪れたくなる地域にしたい」との思いが背景にあります。
地域ブランドとしての星空の魅力を引き上げるため、米国の民間団体による認定制度「星空保護区®」の取得を目指しました。光害の影響のない暗い自然の夜空を保護・保存するための優れた取り組みを称える制度です。

観光誘客と地域活性が加速

認定取得に向け、福井工業大学と連携して光害対策の普及・啓発活動や星空を生かした誘客イベントを開催したほか、市民に星空保護区の制度を知っていただくためのシンポジウムを開きました。
さらに20年からは、パナソニックを交えた産学官協働により、夜空に光が漏れない「光害対応型防犯灯」約300台を南六呂師エリアに設置しました。こうした一連の施策が評価され、2023年8月、南六呂師エリアが星空保護区に認定されました。
これをきっかけに六呂師高原がテレビ、新聞、雑誌などで取り上げられる機会が増えました。観光客の増加につながり、星をモチーフにしたグッズ開発など、地元民間事業者のビジネスも活性化しています。
市としても、国内にある他の星空保護区認定地と連携して観光情報の相互発信をしたり、福井県や民間企業との協働により、本年7月、星空観察が楽しめるキャンプ場のオープンにつなげたりするなど、さまざまなアプローチで誘客を図っています。

岸田 里佳子

モデレーター

岸田 里佳子

内閣官房 新しい地方経済・生活環境創生本部事務局 内閣審議官

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