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地域再生推進のための基本指針


平成15年12月19日
地域再生本部決定


 本年10月24日に、地域経済の活性化と地域雇用の創造を地域の視点から積極的かつ総合的に推進するため、内閣に地域再生本部を設置したところであるが、同本部による総合調整のもと政府、地方公共団体、民間事業者等各関係者が一丸となって地域再生に向けた取組を着実に遂行するために、今後の地域再生を進める上での基本的な指針として、地域再生に関する基本的な考え方、地域再生の取組の方針、今後のスケジュール等について本基本指針を定める。


1 地域再生に関する基本的な考え方
 
  (1) はじめに
 我が国経済は、現在、景気が持ち直している一方で、1)少子・高齢化の進展、2)国際化の進展、3)情報通信技術の高度化、4)環境問題への配慮、といった構造的な変化が生じており、地域経済には、これらの課題への対応が求められている。
 その際、景気刺激を財政出動に頼る手法では地域の持続可能な経済発展を実現することは困難である。国としては、「国から地方へ」、「官から民へ」という構造改革の流れをより強化し、「持続可能な地域再生」を実現することが重要である。
 また、地域が上記の状況の中で地域を再生していくためには、地域を取り巻く環境の変化や地域の置かれている条件が様々であることを踏まえつつ、「自助と自立の精神」の下、それぞれの地域の特性や住民のニーズなどを踏まえながら、自ら「知恵と工夫の競争による活性化」を図ることにより、地域経済の活性化と地域雇用の創造を実現することが重要である。
 
  (2) 地域再生の意義・目的
 地域再生とは、地域の産業、技術、人材、観光資源、自然環境、文化、歴史など地域が有する様々な資源や強みを知恵と工夫により有効活用しながら、文化的・社会的なつながりによる地域のコミュニティの活性化を図ったり、地域内外のニーズを掘り起こし、それに応じて民間事業者がビジネスを健全な形で展開することを通じて、これを成し遂げるための十分な雇用を創出できるようにすることにより、個性ある豊かな地域づくりを達成するものであり、これらを通じて「地域経済の活性化」と「地域雇用の創造」を実現することである。また、地域の「自助と自立の精神」を活かすため、従来型の財政措置を講じないことを基本とする。
 地域再生を実現するためには、できるだけ現場に近い意欲のある地方公共団体が、地域の特性を踏まえつつ、主体的かつ計画的な取組を住民や民間事業者など地域の構成員と一体となって行うことが必要であり、国としても政府が一丸となってこのような創意工夫ある取組を全面的に支援する必要がある。
 すなわち、地域再生は、経済的に困難な状況に直面している地域を国が一方的に支援するということではなく、あくまで1)「自助と自立の精神」「知恵と工夫の競争による活性化」の尊重を念頭に置きつつ、意欲のある地域自らが、現場である地域の視点から自発的に立案し、自立的に取り組む、2)国は、その地域の取組を全面的に支援する、3)それにより、意欲のある地域が自発的に地域再生を進める、すなわち、「地域が自ら考え、行動する、国は、これを支援する」ことを基本とするものである。


2 地域再生の取組の方針
 
 地域再生の実現のためには、あらかじめ国が地域の要望を踏まえて、制度改正など地域が自ら地域再生を行うための環境整備を行った上で、それぞれの地域が自ら地域再生のための計画を策定し、国としてこれを支援するという手法をとることとする。
 これにより、1)地域自らが中長期的なビジョンを持ち、自らが主体的に取り組むという認識を地域で共有できる、2)地域が主体的に行うことと国が支援することとの関係が明確になる、3)当該計画が外部に対して明確になることにより、当該地域の住民に対しても地域の取組が啓発できるほか、当該地域の民間事業者が策定するそれぞれの事業計画とも有機的な連携が図られる、といった効果が期待できるものである。
 
  (1) 各地域における取組
  1)地域における地方公共団体の役割
 まずは、各地域において現場である地域の視点に立って自発的に明確な構想を描くことが前提であり、地方公共団体、特により現場に近い市町村(特別区を含む。以下同じ。)が、地域の特性、住民や民間事業者のニーズを十分に踏まえながら、アイデアを結集して地域再生のための計画(以下「地域再生計画」という。)を策定し、着実に実行することが重要である。
 この地域再生計画は、地域の産業、技術、人材、観光資源、自然環境、文化、歴史など地域が有する様々な資源や強みを知恵と工夫により有効活用しながら、民間事業者が、地域内外のニーズを掘り起こし、それに応じてビジネスを健全な形で展開することを通じて、これを成し遂げるための十分な雇用を創出することができるようにすべく、例えば、地域の基幹的な産業の再生・事業転換、新規産業の創出をはじめとして、その地域の再生を進めることを内容とする。
 また、地域再生計画の策定は、各市町村等が単独又は共同して行うものとし、その際、必要に応じ様々なアドバイザリー機能を活用しながら、関係する地域内外の民間事業者等の意見を聴くことが必要不可欠である。
 
  2)都道府県の役割
 地域再生における「地域」とは、主に単一又は複数の市町村程度の範囲が想定されるが、都道府県の範囲においても、民間事業者が市町村の範囲を超えてビジネスを展開し各市町村共通の政策目標や手段が想定されるなど住民のニーズを都道府県レベルで実現することがふさわしい場合には、自ら地域再生計画を策定し実行することが考えられる。この場合には、都道府県は、1)の役割を基本としつつ、より現場に近い市町村におけるニーズ・取組の状況を十分に勘案して、広域的な観点から、地域経済の活性化や地域雇用の創出に向けた取組を着実に実行することが必要である。
 このほか、都道府県は、基礎的自治体である市町村が地域再生の主体となる場合においては、複数の市町村に関する連絡調整など各地域の主体的な取組が進められるよう最大限の配慮が望まれる。また、国が市町村に対して(2)で述べるような権限移譲、行政サービスの民間開放等、施策の利便性の向上などの支援を行うのと同様に、できる限り当該市町村におけるニーズを反映する方向でそれぞれの支援措置の具体的内容に応じて適切な対応を行うことが望ましい。
 
  (2) 国の役割
 地域再生については、例えば、地域の視点に立った雇用対策の推進、中小企業の再生等の推進、建設業の事業転換などの経営革新や、農業の競争力強化等を通じた地域の基幹産業の再生、観光など地域の特性を活かした新規産業の創出、都市と農山漁村の共生・対流の推進などに関し、内閣の関係機関や各府省において様々な検討・取組が進められつつある。また、こうした検討・取組にも資するものとして、地域金融の面では、中小・地域金融機関によるリレーションシップバンキングの機能強化や政府系金融機関等との連携が図られているほか、金融機能の強化のための新たな公的資金制度を設け、地域における金融の円滑化等を図ることとされている。これに加え、中小企業の新事業展開・再生を支援するファンドや地域住民のニーズに対応した事業を支援するコミュニティ・ファンドの組成促進等の取組も行なわれている。今般、地域再生本部が設置されたことから、同本部が総合調整機能を十分に発揮することにより、今後、政府が一丸となって各種施策の一層の推進を図っていくことが必要である。
 さらに、地域再生本部としては、これらの施策と連携しつつ、関係府省と協力しながら、1の地域再生に関する基本的な考え方に基づき、各地域が策定した地域再生計画の実現に向けて、具体的には以下の取組を行うことにより全面的に支援する。
 
  1) 地域からの提案募集、制度改正等
 まずは、各地域において具体的にどのようなビジョンを持っており、国に対してどのような要望を持っているのかを明らかにするための提案を地域再生本部において一元的に募集する。寄せられた具体的提案については、地域再生のため「実現するためにはどうすればいいか」という基本姿勢で検討を行い、各種の支援措置に係る政府としての対応を「地域再生推進のためのプログラム」(仮称)(以下「プログラム」という。)として地域再生本部において決定し、これに基づき、必要な制度改正等を行う。
 
  2) プログラムの内容
 プログラムに定める支援措置の基本的な内容は次のとおりとする。地域再生本部においては、国に対する要望について検討を行うに際し、地域再生の実現のため、地域の再生に資すると考えられる事項について、一般的な制度的対応に加え地域を限定した思い切った対応を行うことを検討する。
 また、各種の支援措置に係る関係行政機関の対応状況については地域再生本部においてフォローアップを行い、その状況を公表するとともに、運用状況について適切に評価を行うことにより、必要に応じて改善を促すこととする。
 なお、構造改革特区制度は、地域の特性に応じた規制の特例措置を講ずることにより、地域の特性を顕在化し、その特性に応じた産業の集積や新規産業の創出、消費者等の利益の増進等により、地域の活性化につなげるという点において、地域再生と共通の考え方を有するものであることから、積極的に構造改革特区制度を活用するものとする。   
 
  a 行政サービスの民間開放等
 内閣府が本年11月26日にまとめた「行政サービスの民間開放等に係る論点について」にあるように、行政サービスの民間開放には、民間事業者による創意工夫ある取組によってサービスが効率的・効果的に実施されることや、これまで地方公共団体が直接担当してきたサービスについて地域の特性に応じた潜在的なニーズを民間の創意工夫で顕在化させ、新たなビジネスの機会や雇用の機会を創出することなど各種の効果が期待されるところであるため、これを阻害している要因がある場合には、一般的な制度的対応に加え地域を限定して更にアウトソーシングを思い切った形で実現することを可能とするなど制度改正等による適切な対応策を講ずる。
 また、PFI等、公共的な事業等に対する民間資金の活用手法の一層の活用やその他の多様な手法も含めた活用のための方策についても、地域の具体的な要望に応じて検討した上で、関連制度の見直し等必要な措置を講じるなど積極的に推進していくこととする。
 
  b 権限移譲
 地域の再生に当たり具体的に権限の移譲が必要な場合、全国的な権限移譲に加えて、地域を限定した更なる権限の移譲を行うなど、思い切った取組を促進するものとする。
 権限移譲のうち、国から地方公共団体への権限移譲については、「地方にできることは地方に」等の基本理念に沿って、積極的に対応するものとする。また、地方公共団体における権限移譲(例えば、都道府県から市町村への権限移譲)についても、地方自治法上の事務処理特例(条例によって都道府県の事務を市町村が処理することができる特例)を市町村のニーズが反映できるよう改善するほか具体的な要望に応じて個別の制度改正を行うなど適切に対応するものとする。
 
  c 施策の利便性の向上
 国の施策が全国一律の取扱いとなっており地域の実情に合っていないものとなっていること等により当該施策が活用しにくい状況が存在する場合に、利便性の向上の観点から、地域の視点で一般的な施策の在り方や地域を限定する形での対応を検討することにより地域再生に資するものとする。
 その例として、以下のものが考えられる。
   補助金等の統合及び採択基準、対象、利用条件等に係る要件の改善
   許認可に係る手続等の一元化・連携
   公共施設等の利用手続の容易化・迅速化
   国の機関その他の体制整備
   既存施設等を再生・有効活用する場合の阻害要因の除去
   その他
 
 また、政策金融においても、本基本指針を踏まえ、地域再生に資するよう現行の地域関連融資制度のあり方の見直しを検討する。
 
  d 各種施策の集中
 地域再生計画を実現するためには、府省ごとに各地域において行われる地域再生に関連する施策を地域再生計画が認定された地域に集中して行うことが重要である。このため、各府省が実施する各種の支援施策の企画・執行について、地域再生計画の区域に集中して行われるよう努めるものとする。
 
  e 各種施策の連携
 府省ごとに縦割りになっている各種の政策について、地域が、産業、技術、人材、観光資源、自然環境、文化、歴史等を活かした地域特性ある施策を効率的一元的に推進するという観点から、施策の連携の推進を促すものとする。
 具体的には、同一の地域で行われる同一又は類似の政策目標を有する複数の施策であって複数の府省に所管がまたがっているものについて、それらの施策を統合して実施し、又は進行管理を調整する等の手法により、関連する施策を効率的一元的に推進するものとする。
 
  f その他
 地域再生を進める上での国等に対する要望であって、国による規格・基準、諸制度の整備など上記aからeまでの分類に該当しないものがある場合には、具体的な事案に即して個別に判断の上、政府として支援することが適当であると認められる場合に支援を行うものとする。
 
  3) 地域再生計画の認定等
 地方公共団体が創意工夫をもって作成した明確な構想に基づく地域再生計画について、内閣総理大臣は一定の基準により認定を行うものとし、当該認定が行われた地域について、2)の支援措置により支援するものとする。なお、地域再生計画の認定や認定後の評価に当たっては、地域経済の活性化や地域雇用の創造などの効果が計画され、その効果が実際に出ているか、また、円滑かつ確実な実施が予定され、それが実際に行われているか等について、適切に行うことが重要であり、今後第三者の意見を踏まえることなどを検討する。


3 今後のスケジュール等
 
 地域再生本部において、地方公共団体や民間事業者等から上記の(2)2)に関する要望の具体的内容を盛り込んだ地域再生構想の提案を12月下旬から1月中旬までの間募集し、受け付けた提案を整理する。              
 その整理を踏まえ、地域再生に係る対応について、内閣官房を中心として政府が一体となって「実現するためにはどうすればいいか」という基本姿勢で検討を行い、その検討の結果を、2月下旬を目途に開催する地域再生本部において、「地域再生推進のためのプログラム」(仮称)として決定を行う。プログラムにおいては、地方公共団体や民間事業者等からの提案における政府の支援措置に関する要望に対し、政府としての対応を決定するものとする。
 同プログラムの決定を受けて、各府省は、速やかに必要な法令等の改正について内閣官房と所要の調整を行い改正案の検討を行うものとする。このうち法律改正が必要な事項については、所要の法案を国会に提出することを準備する。 
 なお、地域再生の支援に当たり、地域再生本部において関係行政機関の局長レベルで構成される幹事会を開催するなどの体制整備を行い、関係行政機関における密接な連携を図ることにより、政府が一体となって積極的な取組を実行するものとする。