活用事例 第4回 石川県
「地域産業の未来を切り拓く!石川県と地元企業による共同研究プロジェクト」(令和7年1月)
石川県におけるプロジェクトは、地元企業の技術力を活かし、環境に配慮した複合材料の研究開発と強靭なサプライチェーンの構築を目指すことで地域産業の活性化を図ります。金沢工業大学の「革新複合材料研究開発センター(ICC)」(写真1)が中心となり、地域全体で持続可能な未来を目指します。
プロジェクトにおける現時点での成果
このプロジェクトでは、地域で培われてきた高度な繊維・機械加工技術を活用し、以下のような企業とICCによる共同研究が進められています。
○ 小松マテーレ株式会社:世界で初めて、耐震補強材に用いることができる熱可塑性炭素繊維複合材料(カボコーマ・ストランドロッド)を開発しました(写真2)。軽量で取り扱いやすいことを活かして、従来では工場の稼働を止める必要があった耐震補強工事を、稼働を止めずに行える工法を開発しています。これにより、古い工場建物の早期耐震化という社会課題の解決を目指しています(写真3)。
○ 津田駒工業株式会社:道路や橋などの土木インフラは、老朽化に伴う建て替えや補強、定期的な点検等にかかる維持コストが高いという課題があります。同社が開発中のコンクリート構造や土木資材向けの複合材料(FRP筋)(写真3)は、構造物の長寿命化に寄与し、維持コストの低減に貢献します。
○ 谷口製紐株式会社:石川県の伝統的な組紐技術を用いて、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を作製し、CFRPの特徴である軽量かつ高強度が活きるドローン用固定翼や風力発電用部材などの長尺材料を開発しています。
また、金沢工業大学では、研究開発・人材育成の両面で複合材料産業の拠点となるための大学改革を進めています。大学内に「複合材料産学連携機構」を設置し、大学のリソースを地元企業が活用できるようにしたほか、社会実装型の教育・研究活動として、大学生を対象に地元企業等の研究開発現場で実業務に従事する「コーオプ教育」(写真4)も実施しています。
地域全体の産学官を結集した産業創生へ
石川県の取組は、地域内の産学官が緊密に連携することで、地元企業をクラスター化させ、複合材料の川中産業を創出することで強靭なサプライチェーンを構築しようとしており、この点は他の地域にない特徴です。石川県の事例は、他地域でも実践できるモデルケースとしての可能性を秘めています。(図)
(写真1) | |
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金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター | |
(写真2) | |
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カボコーマ・ストランドロッド | |
(写真3) | |
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工場での耐震補強(天井に格子状に張られたものが、カボコーマ・ストランドロッド) | |
(写真4) | |
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FRP筋(コンクリート構造物の鉄筋代替) | |
(写真5) | |
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小松マテーレ株式会社でのコーオプ教育の様子 |
(図) |
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複合材料サプライチェーンの全体像 |
石川県 「地域産業の未来を切り拓く!石川県と地元企業による共同研究プロジェクト」(令和7年1月)(PDF/1,361KB)