稚内駅周辺の施設配置においては、一般市民のみならず、公共交通機関を利用する高齢者や子供などの交通弱者や、土地に不慣れな観光客などが、それぞれの施設に容易にアクセスできるユニバーサルなデザインを進めなければならない。特に、本市では冬季の風雪が強く、風雪の影響を受けにくい施設配置の検討は、同整備を計画するうえで欠かせない。そこで、稚内駅周辺地区を対象に風雪シミュレーション実験をおこなった。1.3m×1.8mの広さに1:300スケールの駅周辺地区を再現し、北国特有の乾いた雪の性状と相似する活性白土を用いての風洞実験である。冬季に見られる北寄りの強風と雪の影響を受けにくい望ましい交通拠点として、稚内駅周辺施設の配置パターンを検討する。駅周辺の配置パターンは本市市街地総合再生計画においてすでに数パターンが検討されており、本調査ではこれらのパターンについて風雪シミュレーションによる評価と、風雪に対する対応策を検討する。
市民活動は都市文化のバイタリティそのものである。都市再生に向けて、都市文化を支える市民活力をさらに活性化していくことが求められている。現在、稚内において実施、開催されている市民活動の実態および活動に利用している空間の実状を把握するとともに、実施主体のもつ催しや活動と利用している空間に対する意識を把握することが目的である。演奏会などの市民活動を主催する代表や、近年完成し多数の来場者を獲得している図書館の館長、TMO準備室のキーパーソン、商店街の実状を知る地元事業主、観光協会、文化センター、市民生活を支える行政の担当者らに、活動や窓口の実態についてヒアリングをおこなった。本調査の結果を踏まえて、それらの活動や催しにふさわしい空間形成に必要と考えられる事項の整理を行い、空間を運営するために必要と考えられる方針を策定する。
駅周辺整備を契機とし、従来分断されていた「マチ」〜「みなと」の空間が一体化する方向で整備検討が進められることとなる。稚内の歴史や日常風景、まちのよさなどを再発見し、景観形成の要素について意識を高め街なみの目標像を共有するために、まちづくり談義と称して、稚内の歴史に詳しい研究家や駅前通商店街の店主らの参加によるワークショップを3回実施した。コンピューターグラフィックにより3D空間を立ち上げ、ウォークスルーによるプレゼンテーションなどを用いるとともに、話の流れをリアルタイムにコンピューターグラフィックに反映するなどして、視覚的でわかりやすい景観要素の検討をおこなった。「美しい」景観形成は、稚内市の都市再生においては付加価値要素ではなく、「都市が備えているべき都市機能」として捉えることとしており、双方を結ぶ都市軸景観形成の方針を市民議論を通して検討することにより、美しく、にぎわいと豊かな空間づくりの送出の方針を協働で策定する。 |