都市再生本部
HOME 都市再生本部 会議情報 都市再生プロジェクト 民間都市開発投資の促進 全国都市再生の推進 都市再生レポート 関連情報 リンク
HOME 全国都市再生の推進 熊本市
全国都市再生の推進
街中の空地の有効利活用促進スキーム
熊本県
時間貸し無人平面駐車場の効率的用途への変更促進施策
街区単位の整備のための計画案とWSの経緯
まちなか居住の実態と意識に関する調査分析
調査名 低・未利用地の効率的用途への変更促進施策
取組の概要 熊本市中心市街地北・南地区に存在する約70ヶ所(2005年現在)もの時間貸し平面駐車場をタネ地として,中心市街地の低・未利用地をより効率的な用途に有効利活用するための各種施策を検討した.
1)駐車場利用者に対する駐車場利用実態調査と駐車場利用者意識調査,
2)駐車場地権者に対する土地利用意向調査と土地の有効利活用に必要な支援策アンケート調査,
3)地権者に立体駐車場や共同住宅などのより効率的な用途への転用を促す容積率施策,税制などの方策,および事業スキームの提案
4)具体的な実証調査研究のための街区を設定し,WSでこの街区の整備にこれらの方策と事業スキームが実行可能かどうかのフィージビリティスタディ
取組内容
 第2章では,熊本市中心市街地を分析対象として,低・未利用地の典型的な形態である無人時間貸し平面駐車場の実態と利用特性を把握した.また,駐車場利用者の実態と利用意識,駐車場特性と駐車後の回遊行動特性との関係を分析した.さらに,地権者の今後の平面駐車場の利活用意向を調査した.
 第3章では,中心市街地の無人時間貸し平面駐車場の地権者に対して行った土地利用意向調査データから,現在の時間貸し平面駐車場に至った経緯や理由,今後の土地活用法,転用希望の用途や転用するために期待する支援策などを明らかにした.さらに,土地の有効利活用に必要な支援策調査を基に地権者の転用用途選択モデルを推定し,低・未利用地の効率的利活用を促す各種の支援策の有効性を検討する立地予測シミュレーションを行った.
 第4章では,従来の大規模な再開発ビル建設による単一の都市再開発事業方式ではなく,住宅付き集合店舗による小規模連鎖型の街区形成と他街区への持続可能な連鎖という方式による街区整備の実行可能性を検証するため,ワークショップ形式で整備計画案,特に整備目標とそれに沿ったデザイン案の検討を行った経緯を示した.
 第5章は,街区一体型,ブロック別,敷地別に資金計画や事業計画を検討してものである.
 第6章では,都心居住者の世帯主属性を含む都心居住の実態,都心居住者の周辺環境に対する評価と整備を望む施設との選好構造を分析することによって,都心居住者の定住促進と新規転入者の定着のための施策について言及した.
まちづくりへの効果
H19年8月現在
 第2章では以下のようなことが明らかになった.
1)中心市街地の無人時間貸し平面駐車場の増加によって,同一目的のトリップの郊外部から都心への目的地変更,公共交通機関からの利用手段変更,駐車場探しのうろつき交通の増加などにより,都心部の交通需要は増加している.
2)中心市街地にある無人時間貸し平面駐車場はその規模や位置,および駐車後の利用者の回遊行動特性により,特性が異なる幾つかのグループに類型化できる.
3)都心部への自動車交通の流入・通過を回避することができること,駐車後の利用者のまち歩きは非常に活発であり,回遊の活発化による中心市街地の活性化にも寄与するという点で,外縁部の時間貸し平面駐車場は,駐車場を継続的に経営する場所として有効である.
4)以上より,中心市街地外縁部の幹線街路沿道にある幾つかの時間貸し平面駐車場の地権者に対して,敷地を交換・共同化して立体駐車場を整備するような施策の導入が望まれる.
5)この地域の地権者は,土地の交換・共同化によって敷地を拡大して駐車場事業を積極的に行う意向を持っており,上記の施策は地権者の意向にも整合している.
6)立体駐車場の利用者は外縁部の平面駐車場利用者と同様かそれ以上に回遊行動を活発に行っている.また,収容台数が大きく,料金を低く抑える可能性のある外縁部での立体駐車場整備は有効である.
 第3章では以下のようなことが明らかになった.
1)現状の平面駐車場としての土地活用に概ね満足している地権者が北地区で68.8%,南地区で84.0%である.現状に「不満である」や「どちらともいえない」と回答した地権者は銀座通周辺や上通アーケード沿いなどの路線価が高い地域に多い.満足している理由の約4割が「運用利回りが悪くない」ことを挙げており,「他の有効策がない」が19.4%と続いている.
2)しかし,このまま無人時間貸し平面駐車場として活用したいとしている地権者は北地区で9.1%,南地区で30.0%に過ぎず,その他の地権者は別の用途に転用したいという意向が強い.その用途としては,複合ビルが17.3%,オフィスビルが9.6%,共同住宅が9.6%,定期借地としての活用が7.7%である.
3)他の地権者の土地との共同利用や共同建替に対しては,南地区では87.1%の地権者が賛成であるが,北地区では45.5%しかいない.北・南地区で共同化に対する意向には違いがあるものの,土地の交換・共同化に対する意向は低くない.
4)地権者が求めている有効な用途への変更のための支援策としては,税金の優遇,建築規制の緩和,資金援助を望んでいる.
5)地権者の転用用途選択モデルより,地権者は平均期待収益額が高く,相対的リスクが低く,固定資産税額の少ない用途ほど他用途へ転用する意向が強い.
6)転用用途選択モデルを用いた立地シミュレーションの結果,指定容積率の最大限利用施策を導入すると,上通りや下通りの裏側にオフィスビルが,上通り裏やシャワー通り西側に共同住宅が,主要街路沿いに事業用定期借地が,フリンジ部やその外側に立体駐車場が立地するようになる.
 第4章では明らかになったことを以下に示す.
1)ケーススタディを行う街区は中心市街地北S街区であり,WSは街区内の大規模駐車場の地権者2人と熊本市都市整備局市街地開発課,および不動産鑑定士を参加者とし,まちなか工房がファシリテーターとなって運営した.WSは5ヶ月の間に計4回,実施された.
2)第1回目では,1.街区内外の連携を強化する.2.まちなか居住の魅力を生かした住環境を整備する.3.交通体系を整備する.4.街区の景観,街区からの景観形成を図る.5.事業化プロセスの選択肢を増やすという5つの整備目標を立てた.その上で,複数の単純モデルをつくり,整備目標を評価基準として比較検討するという作業を行った.
3)第2,第3回のWSでは,地権者の土地保有意向に配慮した小規模連鎖型の街区形成と整備目標の達成を考慮して,まずは街区一体型で,次にブロック別に,最後に敷地別に整備する場合を想定してデザイン案を検討した.
 第5章の成果を下記に示す.
1)街区単位で小規模連鎖型街区形成を行った事例を収集したが,地方都市における既成市街地内の低・未利用地をタネ地として,従来の再開発事業と異なる手法で街区単位の整備を行った例はあまり無い.
2)ケーススタディの対象街区に設定した中心市街地北S街区では,適切に設計された施設計画がなされれば,総利回りや住宅1戸当価額の評価からは,一体や敷地別の整備よりブロック別の整備の連鎖による街区形成の実行可能性が高い.
3)ただし,ブロックによっては実行可能性が高くないブロックがあり,街区全体として利回りが7.4%程度にしかならない.したがって,事業化のためには何らか方法で外部のファイナンスに持ち込む工夫が求められる.
 第6章では以下のようなことが明らかになった.
1)現在のまちなか定住層の居住環境に対する総合評価への影響が大きい項目は「治安」と「近所づきあい」などであり,彼らの都心定着のためには,快適で安心な生活を提供すること,食料品店・衣料品店などといった日常生活に必要な施設が供給されることが必要である.
2)新規転入者がまちなかに定着するためには,防犯・防災といった安全性の改善と共に,教育・交流施設やコミュニティ施設など,都心生活における付加価値の高い施設整備を優先することが必要である.
3)このように,人とのつながりを形成することが,新規定着者のみならず現在の居住者の都心部へのさらなる定着のための条件ともいえる.これは近年の家族のあり方やライフスタイルの変化とも関係しており,ただ生活するためだけでなく,身近にある多様で豊富な文化施設や教養・教育施設を日常的に利用できるという都心居住の魅力を最大限に引き出すことが重要となるという意味で,まちなかにおいてもSocial Capitalの充実が望まれる.
応募団体名 熊本大学工学部まちなか工房
リンク 中心市街地における低・未利用地の効率的用途への変更を促す施策・事業化スキームの提案と そのマネジメントを行う人材育成のための教育プログラム開発
http://www.e-columbus.biz/kumadai/index_top.htm
部局/担当者名 大学院自然科学研究科/溝上章志
連絡先 TEL : 096-242-3541
Emailアドレス : smizo@gpo.kumamoto-u.ac.jp
推薦団体名 熊本市都市整備局開発公園部市街地整備課  
 
 
(C) Copyright : 内閣官房 都市再生本部事務局
〒100-0014 千代田区永田町1−11−39 永田町合同庁舎3階 TEL03-5510-2151