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LIFE STYLE移住者の暮らし

マイペースで無理なく 憧れの農業生活へ

谷口 浩基さん

PROFILE
谷口 浩基さんの写真

谷口 浩基さん

滋賀県彦根市出身。2018年3月に東京都から滋賀県東近江市に移住。

  • 移住時の年代:30代
  • 家族構成:妻、子
  • 移住スタイル:Jターン
  • 職業:兼業農家

地方でのんびり子育てしたい

滋賀県東近江市の中でも、旧愛東町は鈴鹿山系の麓に位置し、寒暖差を生かした果樹栽培が盛んに行われてきた地域だ。中でも梨は「愛東梨」と呼ばれ、甘く豊潤な味わいで人気を呼んでいる。「梨はつくる人によって形が変わってくるんです。今は週末だけ携わる兼業梨農家ですが、いずれは自分の農園を経営し、美しいといわれる梨をつくりたいです」と語る谷口さん。しっかりと地に足をつけ、夢に向かって一歩ずつ前進している。
谷口さんは、小学6年生から滋賀県彦根市で育ち、大学卒業後、大阪でシステムエンジニア(SE)の職に就いた。2012年に東京へ転勤。忙しい時は土日関係なく仕事が入り、帰宅が深夜になることもあったが、一人暮らしの間は不満を感じることはなかった。しかし、結婚を機に、将来について考えるようになった。
「家を買うにしても東京から出ないと厳しいし、車を持つにも駐車場代が高い。東京はどこに行っても人が多いなあと、だんだん息苦しさを感じるようになり、子育てや家族のことを考えると、のんびりと過ごせた滋賀に戻りたいと思うようになりました」
今の仕事を辞め、自分の時間を確保できる仕事に就きたい。でも、それがどんな仕事かつかめない。もやもやする思いを抱えていたある日、偶然見たテレビ番組にくぎ付けになった。東京から地方に引っ越した人が、農業をしながらのびのびと暮らしている。「これだ!」と思い、東京・有楽町にある「ふるさと回帰支援センター」へ行ったのが、移住に至る最初の一歩になった。

滋賀県東近江市の風景

無理はせず、自分のペースで

「センターでは相談員が親身に相談に乗ってくれ、東近江市で就農支援をしているNPO法人を紹介してくれました。いきなり専業農家になるのではなく、『梨づくりなら会社勤めを続けながら週末の休みを利用してやっていけるのでは』とアドバイスいただいて、かなり気持ちが楽になりました」と振り返る。まずは、休日のたびに東近江市に通い、ベテランの梨農家の方のもとで梨づくりを学ばせてもらうことにした。
農家の方は「梨は芸術品だ」といい、栄養が十分に行き渡った甘くて大きな梨に育てるには、冬の間の枝の剪定が重要だということを丁寧に教えてくれた。東近江市は雪が降るため、寒い中での作業は思った以上に大変だったが、それ以上に、未知の体験が新鮮で面白かった。愛知県出身で大学時代を滋賀県で過ごした妻の賛成も得て、研修を始めて数か月後の2018年3月、東近江市に移住した。
「移住する前に現地に通ったことで、地域のことや農園管理の難しさを知ることができたのは良かったと思います。ひとつひとつの作業は面白いのですが、梨園を運営して利益を上げていくには、知識も経験も圧倒的に足りないことを自覚できました。農家の方やNPOの方々に無理をしないよう助言いただき、まずはSEの仕事を見つけ、梨づくりについては、NPOが管理する梨園の木の一部を任せてもらい、週末だけ関わる形をとりました」
農業をしたいという夢を大切したいからこそ、丁寧に、無理のない範囲で一歩を踏み出したのだ。「何より嬉しいのは、梨づくりをできるようになったこと。農業の経験がまったくない自分が梨農家を始められるなんて、東京にいる頃には想像もできませんでした」

梨農園

通勤ラッシュから解放、イライラが消えた

引越し先のマンションは農園に近く、周辺にはスーパーマーケットやドラッグストアがあり、暮らしていく上で不便はなく、東京では7万円だった家賃は駐車場代込みで4万円台になり、マイカーを購入し、行動範囲も広がったという。
会社へはマイカーで通勤している。「電車の通勤ラッシュから解放されたのは大きいです。時間に追われてイライラすることがなくなり、自分の時間も持てているなと思います」。SEを続けつつ、週末は梨農家。かえって忙しくなったようにも思えるが、「やることがまったく違うので、SEの業務でたまったストレスを梨づくりで発散できて、すごくバランスがいいんですよ」と明るい笑顔を見せる。
移住後に生まれた子どもが思いきり遊べる大きな公園も幼稚園もすぐ近所だ。「温かい土地柄で、子どもを連れて歩いていると、いろいろな人が優しく声をかけてくれます。妻ものびのびと過ごせているようで、移住して良かったと、心から感じています」

公園で遊ぶ様子

「つくる喜び」を家族で分かち合いたい

梨づくりを始めてもうすぐ4年。管理する木は当初の1本から今では15本に増え、枝の剪定もかなり忙しくなった。養分に偏りのないよう枝を整えていくのは難しく、今も考えながらの作業だ。雪や風など天候にも影響を受け、大変だと思う一方で、“食べ物をつくるという役割”を担えることにたまらない魅力を感じ、心の底から農業を楽しんでいる。最初の収穫時に比べ、だんだん実のサイズも大きくなってきた。規格外の実を持ち帰ると、妻や子どもがおいしそうに食べてくれ、その様子に自信を深め、手ごたえを感じている。
「梨農家は後継者不足で、就農支援で栽培に携わっている方も60代以上の方がほとんどなので、30代の私は若手として重宝されているようです。理想の暮らしを実現させてくれた地域に恩返しの気持ちを込めて、梨栽培を盛り上げていければいいですね」と谷口さん。
「今は子育てで忙しいけど、いずれは妻にも農園を手伝ってほしいし、子どもにも教えてあげたいなと思っています。まずは一戸建ての家を買い、家庭菜園で食べ物を育てる楽しみを一緒に味わっていければと思っています」

作業中の谷口さん

(2022年12月26日取材)

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