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LIFE STYLE移住者の暮らし

自然の中で子育て 家族との充実した時間

大野 拓己さん

PROFILE
大野 拓己さん

大野 拓己さん

神奈川県出身。2016年6月に東京都から山梨県笛吹市に移住。

  • 移住時の年代:20代
  • 家族構成:妻、子供2人
  • 移住スタイル:Iターン
  • 職業:農家

子育てするなら地方でのびのびと

東京都内で求人広告の営業マンだった大野さんは、2016年6月に山梨県笛吹市に移住し、農業を営んでいる。移住を考え始めたきっかけは、15年に結婚し、将来について妻と話し合ったことだった。

「当時はまだ子供はいませんでしたが、子供が生まれたらどんな環境で子育てをしたら良いのか話し合いました。東京の場合、保育園になかなか入れない待機児童が非常に多いことが大きな問題になっていました。東京で共働きしながら子育てをするのは大変、地方なら余裕をもって子育てができるのではないか、と思ったんです」と大野さんは語った。

山梨県笛吹市の綺麗な空と畑

「地方に移住するなら、農業をやってみたい」という妻の希望もあり、移住フェアに参加し情報を集め始めた。運命的な出会いがあったのは16年3月のこと。東京・有楽町にある「ふるさと回帰支援センター」に移住先について相談しようと訪れると、大野さんの直前に笛吹市の農家の女性が訪れており、「農業後継者がいなくて困っている。誰か農業をやってくれる人がみつからないか」と相談していたのだ。それが今の師匠、宮川良雄さんの妻だった。同センターの担当者からその話を聞いた大野さんは、連絡先を教えてもらい、さっそく宮川さんを訪ねた。

「それまでは、良い所がみつからなければ、そのまま東京で暮らしていくことも選択肢の一つでした。宮川さんとの偶然の出会いから、一気に移住が現実化しました」と大野さん。笛吹市は丘陵地にあり、甲府盆地を一望できる景観の良さに魅了された。人工物に囲まれた東京の景色とは異なり、四方を緑豊かな山に囲まれていて気持ちが晴れ晴れとした。3月の出会いからわずか3か月後の16年6月に移住し、7月から山梨県立農業大学校に半年通って農業の基礎を学びながら、宮川さんから実習訓練を受けた。

“師匠”からノウハウ引き継ぎ、楽しく農作業

「まったくのゼロから農業を始めるのはとても大変だと思います。私たちの場合、宮川さんの畑を引き継いだため、とてもスムーズに転職することができました。長年培ってきた宮川さんのノウハウがあり、いつどんな時にどんなことをすれば良いのか、仕事の流れがきちんとできていましたから、師匠の教えに従って、実践的に農業のやり方を身につけることができました」

ホウレンソウやブロッコリー、ゴーヤなど20種類以上の野菜を育てている。「実際にやってみると、非常に寒暖差の大きな地域で、夏は暑く、冬はこごえるほど寒い。体力的にはきつい作業でしたが、私はずっとサッカーをやっていて、体力には自信があったので大丈夫。ただ、妻は初めのころ、かなり苦労していましたね」

芽を出す農作物

東京で働いていたころは、平日は夜10時ごろまで残業するのが当たり前。土、日も家に仕事を持ち帰っていた。薬局で医療事務をしていた妻も仕事が忙しく、なかなか2人の時間がとれなかった。「今は一緒に作業しています。確かに農業は決まった休みもなく、早朝から作業することもあって大変と言えば大変ですが、仕事の予定は何でも自分たちで決められます。サラリーマンよりもずっと自由度が高いですし、トータルで働く時間はかなり短くなりました。何よりも生活のリズムが規則的で健康的になりました」

収穫の喜び ネット通販の反響も励みに

2017年には子供も生まれた。東京では難しいと思っていた保育園も、徒歩3分の所にすぐ入ることができた。生活コストが格段に低くなり、しかも毎日の過ごし方にゆとりが生まれた。「今は作業場の近くに引っ越しましたが、最初は、市役所から紹介してもらった市営住宅に入居していました。東京と同じような広さでも家賃は半分から3分の1くらいです。農業をしていますから自分たちで作った新鮮でおいしい野菜をふんだんに食べられます」。友人たちに収穫した作物を送るととても喜ばれる。「東京からも気軽に来られる距離なので、友人たちが収穫しに来ることもあります。将来的にはみんなでキャンプをして、楽しみながら収穫したいと思っています」と笑顔で語る。

奥さんと子どもの写真を撮る大野さん

移住して苦労したのは異常気象だという。「雨が多いと作物がすぐだめになってしまいます。強風が吹いたり、ときにはヒョウが降ったり。梅雨の時期が長く、その後はまったく雨が降らない状態が続くこともありました。自然の力には逆らえないな、と思い知らされています」

だが、苦労して育てた作物を収穫する喜びは格別だ。「がんばった成果が目に見える形で実感でき、とても達成感があります。インターネットサイトを使った直接販売も少しずつ始めています。そうすると、お客さんから直接、『おいしかった』という反響もたびたびあって、そんなときはうれしさがこみ上げてきます」

採れたての野菜

SNSで農業の日々を発信し始めた。すると全国の農家たちと連絡を取り合うこともできるようになった。「同じような悩みをかかえていたり、アドバイスしてもらったり。全国の人たちと情報をやりとりしています」。将来は、「フルーツの産地なので、果物にも手を広げてみたい」と語り、インターネット直販にも力を入れたいと考えている。苦労も多いが、充実した日々は幸福感に満ちている。

(2020年10月28日取材)

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