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事例 働き手

八ヶ岳にお試し移住から完全移住!「消費だけ」の生活から「生産もする」生活へ

コロナや災害をきっかけに自給自足生活を始めようと、仕事はそのままで、2020年4月から八ヶ岳にお試し移住をはじめて、1年後には完全移住した森成人さん。移住までの流れや移住後の変化などを伺いました。

森 成人さん

株式会社リクルート
じゃらんリサーチセンター研究員/気仙沼市復興アドバイザー研究員

地域

山梨県北杜市

地方創生テレワークのきっかけ

自給自足の生活を求め、お試しから本格移住へ

2020年春、新型コロナの感染が拡大し、東京では地震もありました。当時子どもが2歳だったこともあり、このまま複合災害が起きたらまずいのではと感じました。断水や停電を心配し、防災グッズなどを買い込みましたが、「必要なことはそんなことではないのでは?」と思うようになりました。そこで東京から出て、水や電気などのエネルギーを自給自足できる生活を始めようと決めました。

親族が八ヶ岳に持っている別荘が使われていなかったので、まずはそこに6ヶ月暮らしてみました。すぐに「移住」と決心がつかなかったので、八ヶ岳にウェイトを置きつつ、東京にある家を残して、もし生活するのが難しければ東京にまた帰ろうという気持ちでゆるく始めました。勤務する会社は完全にテレワークに移行していたのと、私自身は地方への出張が多い仕事なので、仕事自体の変化はありませんでした。

森成人さん。仕事場の近くには大自然が広がる

取組内容

環境が変わったことで人生の価値観が大きく変わった

親族の別荘にお試しで住み始めてからすぐに緊急事態宣言が出て、「今後どうなるかはわからないけど、コロナが落ち着いたら東京に帰る選択は本当に良いのか?」と考えるようになりました。地方出張の仕事はキャンセルになりましたが、かわりに時間ができたので、こちらの不動産屋をまわり始め、4月末には家購入を決めました。当時、「この辺りはあなたの父親世代が建てた別荘が多数余っていて、買い手がつかないほど」と不動産屋の方から稀有な目で見られることがありました。ただ私が購入してすぐ、40年近く買い手がつかなかった別荘が全部売れたそうです。私と同じように移住を考える人がこのタイミングだったのだと思います。

購入後には、北杜市の補助金もあって築40年の家のリフォームを行い、水やエネルギーの自給自足体制を整え、約1年後の2021年の3月末から完全に住み始めました。はじめは妻が教育の問題や虫の問題などで移住に難色を示していたのですが、実際に住み始めると、「もう東京の家はいらないのでは?」と言うほどこちらの生活に慣れていきました。子どもがこちらの保育園に入れたため、子育てでお休みしていたパン教室を再開し、それを通したコミュニティをつくりはじめていて、とてもいきいきしています。

保育園帰りのお子さんにすぐ「おかえり」と言える幸せ

森さんお手製の積み木

私は完全な都会人間で、エクセルやパワポしかできない人間です。でも、もしもの時に電気と水と場所だけあってもダメで、自分が変わらないといけないなと思いました。そこでDIYや畑といった自給自足に取り組もう、自身が楽しみながらやっていこう、と思い、現在、畑や庭の整備を手探りしながら始めています。先日は仕事終わりに、自分で庭に造ったかまどで料理を作って家族と外で食事をしたり、子どもの誕生日プレゼントに木を切って色をつけてオリジナルの積み木を作ったりしました。本当に何気ないことですが、このような時間は今までの生活では考えられなかったものです。東京にいた頃は、仕事や飲み会などで家にいて子ども接する時間も少なかったのですが、環境が大きく変わったことで、家族との時間も増え人生に対する価値観が大きく変わりました。

また、私は観光振興や地方活性の専門家ですが、その身分はこちらでは明かさず、イチ住民として暮らしていようと思っていました。ただ、全くこの辺りに知り合いがいませんでした。そこで2021年に入って流行った音声SNSで八ヶ岳コミュニティを探していたら、八ヶ岳周辺の観光地域づくり法人(DMO)のメンバーと知り合うことができました。今後はこれまでの経験や知識を生かしながら、住民として相談に乗るといった新たな関わり方をしていきたいと考えています。

取り組みの結果

パソコンで資料をつくることしかできなかった人間が、コロナや災害がきっかけで、エネルギーの自給自足生活を始め、そこからリフォーム、DIY、ガーデニング、畑、と手作りの取り組みを広げてきました。そして自然豊かな環境で生活をしている中で、今までは消費しているだけの生活だったことに気づき、持続的な生活をするためには、自分が生産する側にならないといけないと思いました。それを実現するには八ヶ岳の生活はぴったりで、庭にある不要な木からウッドチップをつくることや、畑で野菜をつくることなどもそうですが、自ら生産し始めると、その中に新たな楽しみや発見があることを実感しています。

今後の展開

仕事仲間や友人たちから「八ヶ岳に行ってみたい」「移住の相談をしたい」という声をもらっているので、自宅の裏庭にツリーハウスのワーケーション施設をつくろうと考えています。実際につくる時はお手伝いを募集して、私の自宅や周辺施設でリモートワークをしながら施設づくりに参加してもらうことで、この場所を中心としたコミュニティがつくれるのではと考えています。また、僕らの世代が「地方創生テレワーク」を先行してやり、実践する姿を若い世代に伝えていきます。都会人だった私が変わったので、私と同じように変わる人がこれから増えていくのを楽しみにしています。

(取材日:2021年8月6日)

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