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事例 企業

類型離職防止、地方人材の採用・育成、ワーケーション推進を目的とした企業等

テレワーク+フレックスで 場所と時間を選ばない働き方を提供

小川 慶幸さん

マンパワーグループ プラス株式会社
エグゼクティブ・アドバイザー

地域

東京都

マンパワーグループ プラス株式会社は、総合人材サービスのマンパワーグループ株式会社の特例子会社として、障がい者を中心に雇用し、主として親会社や関係会社から事務処理、定型業務等を受託するBPOサービスを行っています。入社時にフルリモート勤務か必要に応じ出社する勤務かを選択してもらい、テレワーク希望者には会社の費用負担でネットワーク環境を整えるなど働きやすい仕組み作りを行っています。在宅勤務制度の導入は2004年と先駆的で、運用しながら制度を整え、多様な人材の活用を実現してきました。現在は40都道府県に179人のテレワーカーを雇用し、地方人材の雇用機会を拡大すると共に、社員の地方移住などにも柔軟に対応しています。

地方創生テレワークのきっかけ

障がいや適性に寄り添う企業として設立

小川さん)設立のきっかけは、人材不足が加速する中、障がい者の中には働く意欲がありながら就業機会を逃している人が多くいることに着目したことです。 当初は社員全員が出社してオフィスで働く形態でしたが、2004年から在宅勤務制度を導入しました。この制度は、仕事を自宅に持ち帰り作業を行い、週に一度は出社して完成した仕事を提出し、次の出社までの新しい仕事を持ち帰るというものでしたので、出社の為に車イスを利用する、家族の付き添いが必要になるなど、社員への負担がありました。この負担を軽減するため、2009年からオフィスと自宅をネットワークで接続し、出社しなくても仕事の受け渡しができるテレワーク制を試験的に導入しました。当時はテレワークを導入している企業が少なく、安定した通信環境が確保できる地域も限られており、コミュニケーションツールも少ない時代でした。そのため運用も手探りでしたが、チャットが使用できるツール「Skype」を使い遠隔で業務指示や連絡・相談が行えるようにするなど、試行錯誤しながら在宅でもオフィス勤務と同様に仕事ができる形を整えていきました。その後ネットワークインフラの充実に合わせて、2012年ごろからフルリモートワーク体制を実現。日本全国の居住地から働けるようになったことで、求職者の関心がより高まり、社員数が増加し現在に至ります。 事故や病気のために人生の途中で障がいを負った方や、先天的な障がいのある方、育児や介護などを両立している方、働き方に選択肢を求めている方など、健常者も含めて当社には多様な社員がおりますが、一人一人の適性に合った環境整備を行い、業務をアサインすることで就業機会を創出してきました。

取組内容

テレワーク導入のポイントはセキュリティ対策とIT環境整備

小川さん)テレワーク制の導入にあたっての必須事項は、セキュリティ対策と社員のIT環境整備でした。当初、在宅勤務者に通信ネットワークを通じて業務の情報を提供することについて、社内でセキュリティ上の懸念が強くハードルは高かったですが、親会社であるマンパワーグループが理解を示しセキュリティシステムを強化してくれたことでスムーズに進めることができました。社員に対してはデスクトップ上にデータを置かないなどのガイドラインを策定し、定期的にオンライン研修を実施するなど、個人ごとのセキュリティ意識の向上を図っています。セキュリティ対策はテレワークを推進するための重要なポイントで、ここがネックとなって導入が進められないという他企業の悩みをよく耳にします。

在宅社員も通勤社員と同じプロジェクト、同じ業務で協働。オンライン会議も頻繁に行われます。

仕事はすべてパソコンで行うため、ITサポートも必要です。パソコン本体の貸与から社員の自宅へのネットワーク環境の導入、プロバイダー費用の負担まですべて会社側で行います。ITサポート専門チームを社内に設け、不具合などの問い合わせに常時対応する他、パソコンの使い方の研修も実施します。サポートチームを置いたことで、パソコンを使ったことのない人も安心して働くことが可能になりました。

チームワーク形式とフルフレックスタイム制で働きやすく

テレワークの課題の一つにコミュニケーション不足が挙げられますが、その対策としてチームワーク形式を取っています。案件ごとに5~10人のチームを組み、リーダーを中心に毎日朝礼と終礼を行ってオンライン上で顔を合わせ、その日の仕事や体調を確認します。メンバー同士の物理的な距離は離れていますが、重視しているのは「オフィスでやる仕事をそのまま在宅に置き換える」ということ。朝礼で作業を指示して夕方まで音沙汰なしということには、あえてしません。例えば急に隣の人から質問される、問題が持ち上がったからみんなで集まってすり合わせする、というようなオフィス勤務で通常行われていることがオンライン上でも日常的に起きるわけです。するとメンバー同士は自然とお互いを知りチームワークが醸成され、モチベーションにもつながっています。社員の自主的な呼びかけで食事会などの「オフ会」が全国各地で開催され、遠隔地から参加しているケースもあり、仕事を離れた交流が生まれていることも嬉しい成果です。

リモートワークでも距離感を感じることはなく、業務上でもコミュニケーション面でもオフィスへの通勤の必要性は感じません。体調管理面での安心や時間も有効活用できます。

チームワーク形式のモデル図

離職防止の取組の一つとして、コアタイムを設けないフルフレックスタイム制や、定期通院の所要時間を一定時間まで勤務時間とみなす制度などを導入し、時間的な制約による離職をできるだけ防いでいます。また、仕事は個人に紐づけず、全体でフォローしあえる形にすることで、体調不良や通院で急な欠勤が起こり得る重度障がい者も安心して働くことができます。
フルリモートワークの導入当初は、障がいのある社員自身が働きやすい仕組みを考えるプロジェクトチーム「社員サポート体制整備プロジェクト会議」を立ち上げ、要望を社へ提案してもらいました。その中から、社員専用のサイトを作って意見や情報を交換できるシステムや、「図書部」「料理部」といったオンライン上のサークル活動などが生まれて、テレワークの課題である孤立感の解消やモチベーションの維持、離職防止につながっています。

現在4つのオンライン部活動に39人が所属して活動しています。各部活動の参加メンバーも増えており、部活動間の情報交換も活発に行われています。

取り組みの結果

40都道府県に179人のテレワーカー

小川さん)現在、全社員241人のうち、フルリモートワークは179人で、社員全体の74%になり、テレワーク制導入初期の2010年が2割程度だったことに比べ大幅に増えました。テレワーカーの居住地は40都道府県にわたり、全国に広がっています。制度の導入時から全国の人材を採用対象にすることを想定していましたが、最初は都市部周辺に偏っていた社員も、ネットワークインフラ整備の広がりとともに地方の人材が増えてきました。
もともとは障がい者にとって働きやすい環境を作るためのテレワーク制導入でしたが、採用に線引きをしているわけではなく健常者も雇用します。何らかの理由で企業を退職したものの「時間と場所の融通が利くならぜひ働きたい」という人からの応募が多いです。介護や子育てで時間的制約がある、配偶者の転勤によって頻繁に転居があるという人もリモートワークなら働けます。また「子どもの夏休み期間、1ヶ月は帰省先で働きたい」などの声にも応えます。当社としても社会経験や業務経験が豊富な人材は非常にありがたく、こういった方々を受け入れ、能力を発揮していただく環境を整えてきました。「障がい者に優しい制度は誰にとっても働きやすい」ことを実感しています。

今後の展開

働き手から選ばれる企業になる

小川さん)これまで当社は、重度身体障がい者を中心に採用活動を行ってきましたが、今後は精神障がい者の採用も増やす計画です。テレワークでの在宅勤務は、これからも人材採用の中心になっていくと考えます。障がいの有無や生活環境・価値観の違いなどを超えて多様な人材を受け入れ、テレワークを活用して活躍してもらおうと考えています。
労働力人口が確実に減少するなか、企業そのものの存続のためにも社会全体として働く意欲のあるすべての人に働く場を提供する必要があります。障がいがあってもなくても同じように働ける、働き方の選択肢を提供できる、働く人に選ばれる企業として成長していきたいと考えています。

社員の声

小澤晃さん(岩手県に移住)
以前は東京の企業で営業職をしていたのですが、仕事中に倒れ、左半身麻痺という重度障がいとなりました。障がいのある体でも就職できる先を探し、2015年にハローワークの紹介でマンパワーグループ プラス株式会社へ入社しました。 最初に驚いたことはしっかりとしたサポート体制です。パソコンの貸与から自宅のネットワーク設備まですべて会社が対応してくれました。事務職は初めてでしたが、チームの先輩にはどんなことも質問できるので戸惑うことなく業務になじめました。チームで助け合いながら仕事を成し遂げる達成感は、心地いいものです。オフ会にも出席しました。一緒に働く仲間と直接顔を合わせるのは楽しいし、その後の仕事もとてもやりやすくなります。倒れた当初は先行きに不安ばかりでしたが、本当に入社してよかったと思っています。
2016年、実家の父の介護が必要になり家族でのUターン移住を検討しました。会社に相談すると、「まったく問題ない」と背中を押していただき、岩手県への「転職なき移住」が実現しました。フルフレックス制を活用し、自分自身の身体もケアしながら、父も看ることができました。以前の仕事のままだったら、介護は二の次にしてしまい、父との時間は持てなかったと思います。テレワークという働き方のおかげですし、会社には心から感謝しています。今、身体は不自由ですが、この会社に出合うことができ、以前の仕事よりも充実して幸せです。これからも一生懸命仕事を続けたいです。

(取材日:2023年10月17日 ※各種数値、データは取材日時点のもの)

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