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事例 自治体

地方創生テレワークとDX戦略を組み合わせて、企業から選ばれる都市へ

長野県塩尻市は、自営型テレワーク推進事業「KADO」をフックに企業と関係性を構築し、サテライトオフィスへの誘致や、官民連携による地域DX事業を推進しています。実際の取り組みやどのように企業との関係を発展させているかを伺いました。

太田 幸一さん

企画政策部官民連携推進課
課長補佐

地域

長野県塩尻市

地方創生テレワークのきっかけ

「地方創生テレワーク」で地域の人材不足の解消を目指す!

2010年、地域で時短でしか働けない人に向けた就労の機会をつくるため、時短就労者を対象とした自営型テレワーク推進事業「KADO」を立ち上げました。厚生労働省の「ひとり親家庭等の在宅就労支援事業」として始まり、その後、市の施策として子育て中の女性へ対象を広げ、最終的には地域の”働きたいけど、働けない人すべての人“へと、10年かけて広げていきました。

地方は都市部に比べて、育児・介護、障がいなどで時間に制約のある方が就労可能な時短の仕事が不足しています。その状況で求職者を就業に結びつけても、時間の制約、スキル・自信のなさにより、求職者も企業側もお互い不幸になると感じました。その状況を回避するため、「KADO」で働くことを第一チャレンジとして経験や自信をつけてもらい、第二チャレンジとして就業を目指してもらうことで地域の人材不足の解消を目指す仕組みをつくりました。

周りには10室のワークスペースが広がる「KADO」内のラウンジ

取組内容

「地方創生テレワーク」で地域と企業が課題を解決し合うパートナーに!

現在「KADO」では約250名の自営型テレワーカーが就労しています。テレワーカーのために、休みをとりやすくすることや、ナレッジシェアをして成長を促進する目的でチームを組むようにしています。また、チームをとりまとめるスタッフとしてテレワーカーからキャリアアップしたディレクターがいて、クライアントとチーム間の課題認識、ギャップを埋めるための業務分析、業務を円滑に進める為のマニュアル作成、テレワーカーのメンタルケアや成長支援をしています。さらに専門的な知識や技術が必要な部分や各プロジェクトの生産性向上や高度なチームビルディングは民間のプロ人材と連携しています。

「KADO」における塩尻市の役割は、ワークスペースや機器の整備、運営サポートが主となります。それらに加えて、公的与信や事業の社会的意義等、「KADO」が業務を受注する上で重要となるクライアント企業との関係性構築に寄与しています。また、クライアント企業との関係性が深化することによって、受注業務が拡大するだけではなく、ワーケーションやサテライトオフィスの設置等、地域の活性化につながる新たな展開も生まれつつあります。

子育て中の女性が「KADO」のワーカーとして高精度3次元地図などを作成

これらの展開を加速するためには、「企業のビジョンや課題解決が塩尻と連携することで叶えられる」という付加価値を提案する必要がありますが、その付加価値の一つとしてDX関連事業が挙げられます。例えば、2020年度から本格化した「塩尻MaaS プロジェクト」は、塩尻市における地域DXの中核事業であり、塩尻をテストベッドに国内最先端の自動運転技術の実証実験などを行っていますが、ここでの「KADO」の役割は、実証実験の様々なサポートと自動運転に用いる高精度3次元地図の製作です。実際に塩尻市内を走る自動運転車両の制御には「KADO」のテレワーカーが作製した高精度3 次元地図が使われており、「『KADO』と協業することで事業が加速する」という価値を提供しています。

このように「KADO」はこれからのデジタル社会においてなくてはならない社会機能として、常に新規性や市場性、クラウドソーシングで今後どのような仕事が出てくるだろうということを予測し、専門のスキルを持ったチームをつくって柔軟に対応していくことが重要だと考えて、人材育成や企業との協業に注力してきました。クライアント企業が目指しているところと、私たち自治体が目指しているところが合致した上でアライアンスを組むということが大切で、いかに良好なパートナー関係が築けるかが、クライアント企業にとっても塩尻市にとっても肝なのだと思います。

取り組みの結果

2011年度の「KADO」の売上は約200万円でしたが、2020年度には100倍の約2億円となりました。特に立ち上げ期は十分な量の業務の受注が困難でしたが、テレワーカーの皆さんやスタッフの地道な努力により、今では「KADO」のクライアント企業6社が市内にサテライトオフィスを構えるまでになり、そこにテレワーカーが現地社員として就職し始めるという新たな展開も生まれています。さらに、クライアント企業との官民連携によって地方創生関連の新たなチャレンジが始まり、現在はDX 領域や障害者雇用にも広がり、官民連携による地方の課題解決が拡大しています。

「KADO」を立ち上げた後も関わり続け、現在は官民連携推進課の太田幸一さん

今後の展開

これまでの経験をもとに、移住・複業希望の方に新しい仕事を提供できないかと考えています。特に地方では新たな就業者が一次産業である農業や林業単体で安定した収入を得ることは難しいため、「KADO」の仕事と組み合わせたいと考えています。また、「KADO」をフックとして企業や地方都市と関係性をつくり、「スマートシティ」を形成するために必要となる新しい社会機能の創出につなげていきたいと考えています。「KADO」は単なるアウトソーシングを受けるだけでなく、自治体や企業のDX パートナーや需要が高まるDX人材を育成する場としてさらなる成長を目指します。

(取材日:2021年8月25日)
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