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事例 企業

淡路島への地方移転が社員、地域、企業の課題を解決する

2020年、本社機能の一部を淡路島へ移転した株式会社パソナグループ。最終的に 1,200 名のポストを準備するための新規雇 用や人材育成、都市部とは異なる環境整備などの取り組みを伺いました。

伊藤 真人さん

株式会社パソナグループ 常務執行役員
CBO(Regional Advantage)

地域

兵庫県

地方創生テレワークのきっかけ

地域の社会課題解決と「人を活かす」企業としてモデルケースへのチャレンジ

パソナグループは「社会の問題点を解決する」という企業理念のもと、「人を活かす」ことで人材サービスの事業を行っています。その中で、地方の就業人口減少や人口流出という課題に対して、私たちは地方に魅力的な仕事をつくることにずっと取り組んできました。その上で 2020 年のコロナ禍で、地域をまたいだテレワークの実施に本格的に舵を切り、同年9月に本社機能の一部を淡路島に移転しました。

移転を決めた理由は 2 つあり、1つはいわゆる「BCPの対策」として、コロナ禍において本社機能を東京に密集させずに分散するべきだと考えました。この時期にテレワークを実施したことで、「東京でなくてもできる仕事はある」ということに気がつきました。もう 1 つは、「人を活かす」働き方、暮らし方、オフィスの在り方を私たち自らチャレンジをし、モデルケースをつくっていこうと考えました。

阪神淡路大震災の震源地の近くに位置する野島小学校をリノベーションした「のじまスコーラ」

取組内容

開始3ヶ月で120名の社員が移住!地方の環境をいかした新しい雇用創出も

私たちは2008年から淡路島で農業や、廃校のリノベーション、県立公園のテーマパークといった観光事業を始めました。BCPの対策としては、東日本大震災後に東京の本社機能を大阪に分けるという対応は既に実施しており、今回のコロナ禍でさらに1歩進んだ対応をすることになりました。その上で今回、パソナグループのコーポレート部門、インサイドセールスやコールセンターといった本社機能の一部を淡路島に移し、2020年9月からの約 3ヶ月間で120名が淡路島に移住しました。現在、最終的には1,200名分のポストをつくろうと、働く場所や住む場所を整えています。

私たちはただ社員が移住するだけでなく、このロケーションや環境を活かした新しい雇用を増やすことに挑戦しています。その 1つがシングルマザーの雇用で、職住近接で託児の環境を整備することや、都心部と比較して生活コストが抑えられるため、働きやすい、移住しやすい場所になるように取り組みを進めています。その他に、保育園や小学校が終わる時間に、会社のマイクロバスで拠点内の託児所の保育士が親の代わりに迎えにいき、仕事が終わるまで託児所にて子どもを預かっています。 他にもコロナ禍で、交通や観光に従事されていた方の企業間出向を通して、地方で働くことや移住の体験をしていただく実証の場にもつなげています。

神戸と淡路島を繋ぐ世界最長の吊橋ー明石海峡大橋ー

一方で、都市部との違いとして公共交通機関が少ないため、車を必要とする点や手段の確保が難しい点が実際に移住した社員からの声で上がりました。交通の問題に対しては、拠点間を巡るバスを定期的に運行したり、トヨタさんの仕組みを使って社用車をスマホで予約したり、カーシェアをしたり、車のリースを行う際の半額補助などを導入しました。

また、自治体からの協力も受けていて、補助金だけでなく家族で移住する社員のための環境整備のサポートをしていただいています。地域の保育園や小学校などでの子どもの受け入れや社員が生活する上での環境整備、兵庫県の公共の回線を利用できる通信整備をしていただきました。現在も自治体と継続的に環境整備について協議を重ねて、よりより環境づくりを一緒に行っています。 公共交通機関が少ない、働き方の環境が異なるなどのギャップを、どのように会社として福利厚生や自治体と連携して解決していくのかが今までにないケースだと思います。

取り組みの結果

コストの観点では、東京のオフィス家賃はコロナ前に比べて約1/3程度に減少しました。今後、東京の家賃は1/5程度まで落とし、その分淡路島に拠点を増やしていきますが、家賃相場が東京と比べて約1/10であるため、削減効果は大きいと考えています。広報の観点では、このような取り組みをしている企業が少ないため、私たちの取り組みがモデルケースとなり、他の企業や自治体の方が視察に来ており、社会的な認知も上がったと実感しています。そして、何より社員にとって働きやすい、暮らしやすい、健康によい場所を企業として提供できつつあると感じています。

「人を活かす」企業理念を軸に地方創生事業に勤める伊藤 真人さん

今後の展開

淡路島の拠点数は現在3箇所から、2022年までに6箇所に増やす予定です。1箇所は自社ビルを建設し、残り2箇所は現在の3箇所と同様に、使用されなくなった遊休施設をリノベーションすることで、働く場所をつくっていきます。そして、働き方の新しい取り組みとして「ハイブリッドワーク」を推進します。淡路島内で農業や観光事業を実施していることを活かして、例えば、昼間はオフィスで働き、隙間時間で農業をするなど、職種をまたいで社内の別の仕事を行う取り組みに挑戦し、地域の過疎化・人口減少という課題の解決への一助となることを期待しています。

(取材日:2021年7月28日)

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