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事例 企業

会津若松でオプトイン社会を実現し、市民中心のスマートシティを全国へ展開!

2011年の東日本大震災の後、福島県会津若松市に拠点を置いたアクセンチュア。震災復興をきっかけにスマートシティへの取り組みを10年間推進してきました。その内容や成果について、拠点立ち上げから関わる中村彰二朗さんにお話を伺いました。

アクセンチュア株式会社/中村 彰二朗さん

アクセンチュア株式会社 アクセンチュア・イノベーションセンター福島
センター共同統括 マネジング・ディレクター 

地域

福島県会津若松市
アクセンチュア・イノベーションセンター福島

地方創生テレワークのきっかけ

地方から全国展開を目指して国の問題を会津で実証して解決する

東京一極集中の是正や分散社会の実現を目指して地方拠点を探していたところに東日本大震災が起き、「震災復興」をテーマに復興に時間のかかる福島に拠点を置くことになりました。震災後に会津若松市を訪問した際、旅館をすべて開放して大熊町の住民約1万人を受け入れている行動に感動しました。震災のような非常事態の際でも受け入れができる市民性は、オプトイン社会を実現できる可能性が高く、受け入れを決めた市長の決断力はイノベーションを起こすために重要であると思いました。

会津若松市の人口は約12 万人で、日本全国の1/1000、東京の1/100という実証実験をするに適正な数です。まずは会津で、市民中心のスマートシティ実現のために市民の方に生活をより良くするデータの還元をしていきますが、会津のためだけでなく、国全体の課題を会津というフィールドで実証実験し、成果が出たものを全国展開することをミッションとしています。

会津地方を象徴する赤べこはオフィスの至る所に鎮座

取組内容

市民がデータ提供に同意したオプトイン方式で、10年かけて形成した市民中心のスマートシティ構想

2011年7月に会津若松市、会津大学、アクセンチュアの3者協定が締結し、その中核に「スマートシティ」が入った復興計画の素案をつくってプロジェクトが始動したのが12月でした。福島は原発の電力問題があったので、まずは省エネの実証実験から始めました。オプトイン方式で約100世帯の家の分電盤に装置をつけて、リアルタイムで電気の使用料を見えるようにしたことで、電気を使用する時間を減らす動きが出ました。市全体では約27%の電気量を削減し、市民一人ひとりは約1/3 電気代が下がる成果となりました。

このようにオプトイン方式で市民からデータを提供いただくことで、パーソナライズされた情報を市民に返すことができ、行動変容を促せます。市内全体の電力使用量が見えるだけではなかなか個人が動くことはありませんが、自分の家の使用量が見えれば何かしらアクションします。その合算が地域・社会の成長や復興につながります。このようなオプトイン社会を10年かけて形成してきました。スマートシティはそこに住んでいる市民のためのシステムであり、市民を中心にした考え方で市民が幸せになることが重要なポイントです。

スマートシティAiCTのオフィス棟に隣接する交流棟は市民や学生が交流できる多目的空間

現在、「スーパーシティ構想」に挑戦するために、ICT(情報通信技術)を活用した医療改革を申請しているのですが、そのためには体温や脈拍などのバイタルデータだけではなく、DNA 情報も必要となります。昨年、まずは約30名の方を集めて説明会を開催した時、「何のために使うのですか?」という質問が出ました。この問いがすでにオプトイン社会が形成できている証拠だと感じました。市と共に10年間かけて市民の方々と実績と信頼を築いてきたこと、また、データの預け先が企業ではなく、スマートシティ会津という地域団体というのが今の状況を生んでいると思います。

アクセンチュアの会津若松拠点では、スマートシティという最先端分野に携わっているので、ここで働きたいと希望する人がとても多いです。会津の他にも、北海道、関西や福岡・熊本など会社として地方に機能分散をしているため、それぞれの拠点が特色を持っており、社員はテレワークも取り入れながら仕事をすることができます。単純に同じ仕事の地方版であれば、働く人材は本社を目指しますが、最先端分野が地方に機能分散すると自然と社員も分散していきます。さらに、都市部に行かずに地方で最先端分野の仕事がテレワークでできれば、地域の学生の受け皿になります。実際にITの単科大学である会津大学の学生にヒアリングすると、「行きたい企業が東京にしかないから東京を選んでいるだけで、それが会津にあれば残ります」と。これが地方創生であると思います。

取り組みの結果

2019年に産官学民が集まる拠点として「スマートシティAiCT」が完成しました。市と共に企業を誘致して、約200社の応募があり、スマートシティの取り組みについて話し合いを重ねた結果、現在は満室の37社が入居、合わせて約420名が在籍しています。観光、農業、教育、ヘルスケア、モビリティなどの領域で担当を分けて取り組んでいます。市民のためとなる目指すオプトイン社会の実現に向けて、スマートシティAiCTに入居する企業や地元企業、行政、大学と連携してスマートシティプロジェクトを推進しています。

会津発での地方創生モデル構築・成功事例の全国展開に取り組む中村彰二朗さん

今後の展開

私たちのミッションは日本全体をデジタル化して分散社会をつくることです。現在、地方自治体は約1,750ありますが、これを約300の生活圏として地域を捉え直したいと考えています。会津若松市の人口は12万人ですが、生活圏である周辺の市町村を入れると約30万人になります。生活圏単位で地域を捉えて、会津はスマートシティ、農大がある福島はスマートアグリといったイメージで、300の地域それぞれでプロジェクトを起こしていく。はじめは関係人口が増えて、プロジェクトが進めば移住者が出てきて人の分散が進む社会が実現できると考えています。

(取材日:2021年8月19日)

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