本文へジャンプ

事例 自治体

企業誘致は人材誘致の時代に!全国初!「サケモデル」でのUターンでデジタル人材の集積を

企業誘致からUターン人材へのアプローチなど、テレワークを軸とした取り組みを約9年間続けてきた北海道北見市の松本さん。事業を進めていく中で出てきた課題や、そこで生まれた北見独自のモデルについて、お話を伺いました。

松本 武さん

北見市商工観光部工業振興課工業係長

地域

北海道北見市

地方創生テレワークのきっかけ

市の弱点と特徴から導き出したのはIT企業の誘致

北海道北見市は東西の距離が約110kmと日本一長く、オホーツク海に面していますが、苫小牧や室蘭などの国際拠点港湾より物流の面でハンデがある地域です。そのため、どうしても製造業などの二次産業が弱く、一次産業が中心となります。そこで製造業といっても物流のハンデがないIT産業に目をつけて、北見の特徴を活かしたIT企業の誘致に取り組んできました。

北見市は今後30年以内に震度6弱以上の地震の発生確率が0.8%と低く、台風もほとんど来ない地域のため自然災害のリスクが低いことや、女満別空港から市内まで車で30-40分と非常にアクセスが良いことが特徴です。さらに、国立の北見工業大学があるため、優秀な理系人材がいることをIT企業にPRしようと、年間50社ほど東京のIT企業を訪問しました。そこで北見への進出に興味を持っていただいた企業と、地元北見に残りたい学生をマッチングする就職イベントを開催しました。

大自然での生活とテクノロジー→ IT×北見=サテライトオフィス北見

取組内容

「テレワーク」の普及によりUターン人材へアプローチ、企業から個人向けの取り組みへ

誘致企業と学生との就職イベントを行って、マッチングの成果は出たのですが、企業側には採用した新入社員を北見の拠点で育成することができる中堅のIT人材がいないという大きな課題に直面しました。私は当初、企業が市内に事業所やサテライトオフィスを開設し、新卒採用するのと合わせて本社の中堅人材が転勤してくる展開を想定していましたが、実際に中堅人材が転勤してくるのはハードルが高いことに気づきました。

そこで北見工業大学と連携し、「北見に戻って来たいという学生に東京の本社で数年勤務してもらい、その人材が中堅人材になったタイミングで北見市に戻ってきてもらう」という5年先を見越して人材が回帰する「サケ(鮭)モデル」を始めました。実際に今では東京勤務で経験を積み、中堅の社員となって北見に戻ってきたほか、その社員が北見にいることで、最初から北見で働ける新卒者も生まれてきました。

ぬくもりのある広々としたワークスペース

その後、平成27年に「ふるさとテレワーク地域実証事業」を行い、約半年間で9社延べ180名が市内のワーキングスペースでテレワークを体験しました。当時は「ワーケーション」という言葉がなく、「はたらく」と「あそぶ」で「はたらぶ」と名付け、実証事業以後も北見市でのテレワーク推進を継続しました。具体的には、実証事業参加企業から講師を招いた東京でのPRセミナーや、地方でのテレワークに興味を示した首都圏の企業による合同視察ツアーの実施、商店街の空き店舗を改装した「サテライトオフィス北見」の整備等を行いました。その頃から首都圏で働く北見出身者に対するテレワークUターンのPRも始めました。とはいえ首都圏にいる北見出身者を探すのは難しいので、地元にいる親御さんに向けて、お盆や正月前に「会社を辞めずに北見に帰っておいで」というセミナーを開催したり、北見出身の東京の大学生が帰省した際に地元でテレワークを体験するインターンシップも行いました。

ここ1-2年はテレワークが普及し個人が「働く場所」と「住む街」を自由に選べるようになったので、企業向けだったパンフレットやサイトを家や子育て情報、移住者の体験談などの個人向けに一新しました。パンフレットはUターンを考えるきっかけとなる病院(里帰り分娩など)、葬儀場や火葬場などにも置いています。昨年10月からは全国の自治体で初となる企業誘致の補助金を1名の移住者から対象とし、すでに2社から申請をいただきました。企業誘致をしていた時は、1社で20名程度の雇用創出と考えていましたが、テレワークの普及によって20社20名の時代だという考え方に変わりました。

取り組みの結果

「サケモデル」と「ふるさとテレワーク地域実証事業」に参加した3社のIT企業が市内にサテライトオフィスを開設し、北見市と地方創生プロジェクトを行う連携協定を結びました。その3社が北見工業大学、地元企業など連携し、市役所窓口でのRPAの活用や、道路点検システムの実証実験、カーリング競技の共同研究などのICT産業創出プロジェクトが動き出しました。また、「サテライトオフィス北見」は年間延べ3,500人の利用者となり、Uターンした人の利用も増えています。これまで地道に取り組み続けてきた結果、個人と企業が次々と集まって地域が活性化し始めています。

2021年第一回地方創生テレワーク推進セミナーにも御登壇頂いた北見市生まれの松本武さん

今後の展開

テレワークが普及したとはいえ、北見に縁がない人にIターンしてもらうのはハードルが高いので、今後もUターン人材を中心にPRをしていきます。ハードとソフトの両面を充実させ、テレワークをきっかけに「人と企業が集まってイノベーションが起きるような地域」をつくりたいと考えています。北見市が抱える課題を、ITを活用して一緒に解決するということを個人や企業に理解いただければ「北見に住みたい」、「北見に進出したい」という動機になります。現在取り組んでいるICT産業創出プロジェクトをより発展させ、先端技術と大自然が混ざり合う北海道のIT都市「オホーツクバレー」を構築していきたいと考えています。

(取材日:2021年10月20日)

当サイトを使用することにより、クッキーの設定および使用に同意したことになります。 詳細については、プライバシーポリシーを参照してください。

ページトップへ