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事例 働き手

「まちづくり」の当事者になるために移住。豊かさに人口は関係ない!

企業の海外展開、東北の食産業という2つの分野で活躍する高橋大就さん。興味はよりローカルに向かい、福島県浪江町での「まちづくり」の当事者としてよりコミットするために移住。移住後の仕事や生活について伺いました。

高橋 大就さん

オイシックス・ラ・大地株式会社グローバル担当専門役員
(一社)NoMAラボ 代表理事
(一社)「東の食の会」 専務理事

地域

福島県浪江町

地方創生テレワークのきっかけ

震災を機に東北で活動して10年!より深く当事者になるために浪江町へ移住

震災後から10年近く、「東北の食産業」という切り口で活動をしてきている中で、南相馬や浪江を車で通ることもありました。ただ「東北で活動しています」と言いながら、一番難しいエリアから逃げているという思いが常にありました。やはりここで何かをやらないといけないが、今まで東北でやってきた食産業より前に「まちの再生」をやらないとここには貢献できないと、一般社団法人「NoMAラボ」を2019年に立ち上げました。

そして今年、震災から10年が経ち、今後自分がどうしていくかを考える節目でした。そんな時、前向きにまちづくりに取り組んでいる浪江町の方々の姿を見て、自身も当事者としてまちづくりにより深くコミットしようと思い、浪江町に4月に移住しました。もともと海外事業と東北がフィールドの仕事をテレワークで、東京の組織がやっているという働き方だったので、仕事上で移住の影響はありませんでした。

専務を務める「東の食の会」によるコミュニティ実験農場「なみえ星降る農園」開園式

取組内容

当事者としてより深くまちへコミット。視点はよりローカルに

NoMAラボの最初の活動拠点は、南相馬市の小高というところで、ここは住民の方がとてもがんばっていて、いい状況になってきていました。その隣の浪江町では、市内の大部分がまだ帰宅困難区域となっており、住民は約1,600人と震災前の1/10以下という状況でした。そこで知り合いを通して浪江町のフィールドワークに参加し、地元の方々とお会いしました。非常に前向きでオープンな方々がまちづくりに取り組もうとしていることがわかり、「ここで当事者となりたい」「一緒にやっていきたい」と思い移住先に決めました。

移住してからは、浪江のまちづくりの仕事が増えました。将来的には浪江町を移住希望の方に選んでいただける町にしたいですが、その前にまず「住民の方々が戻れる町、戻りたい町」にすることが大事です。そこで懸念されていることが文化や歴史の断絶です。町にあった文化や歴史がなくなった状態で新しくまちづくりを行うと、それは町をハイジャックすることになり、違う町になってしまいます。そこで、町の記憶や伝統、文化をつないでいく活動として、町中に昔あった建物やお祭りや文化をアートという見える形で残すような「まちのこし」の活動を始めています。そのほか、町役場での復興計画などの会合にも呼んでいただけていて、当事者として参加している意識が強くなりました。

県内有数の好漁場を沖合いに持つ請戸漁港の夜明け

浪江の方々はとてもオープンで、もともとそういう文化があるのだと思います。私がいろいろアイデアを出して、相談すると、どんどんやってくださいという感じで接してくれます。そこは他の町と状況が違って、ここは自分たちでつくっていかなきゃと思っている方々がたくさんおられます。実際に物事を進める上で時間がかかることはありますが、こういう人たちと一緒にやりたくて来たんだなと、すごくポジティブな気持ちでいます。

生活面では、東京では出勤の際には満員電車での通勤でしたが、それがないだけでも身体的にも楽ですし、精神的にも開放されて、QOLが圧倒的に上がりました。仕事も自宅、コワーキングスペースや、山や海、車で移動中にもできて、自然もあって非常に快適で生産的です。さらに、地域での活動をより増やしていきたいので、ここで消防団に入りたいと思っています。東京に住んでいた頃には、東北のこと、国のことなどは考えていましたが、自分の住んでいるローカルのことはすっぽり抜け落ちていたなと思います。

取り組みの結果

こちらに来て、とても豊かな暮らしができていると思っています。そして豊かさは、結局「人」だと思うようになりました。東京の人口は約1,400万人、浪江町は約1,600人ですが、人口が多い少ないは関係なく、自分がいい関係を持てている人数。こちらでは会えば挨拶して、気持ちよく会話をする人がたくさんいます。東京では友達はいますが、住んでいる地域でそういう関係を持てる人はいませんでした。そういう意味でも、この町の方々と一緒に豊かなまちを再生していきたいと強く思うようになりました。

東日本大震災後、東北の復興に尽力してきた高橋大就さんは元外交官

今後の展開

今、福島では地域を超えて広域でつながりができてきて、各地域の土着のキーパーソンたちがつながってきているので、とても面白いです。その一つとして、今後、実験農場を始めます。東北中の一流の農家の方々に集まっていただき、この地に適した農作物を見つけて、それを横展開していく予定です。地方がベンチャー化して、よりよくなるための挑戦や競争が起きれば、イノベーションがたくさん起こると思います。浪江町の役場にもそういう意識の方が多くいます。私は浪江町に骨を埋める覚悟で来ているので、これからはここでなんの制約もかけずにできることはなんでもやっていきたいです。

(取材日:2021年8月6日)

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