

事例- 働き手
本業は「全国」、副業は「ローカル」で!地域ではたらく人たちを応援する
パーソルキャリア株式会社に所属しながら、副業で2019年4月から長野県塩尻市で地域おこし協力隊を始めた横山暁一さん。その後も地域をより良くしていきたいと自らNPO法人を立ち上げました。約3年間の地域での取り組みついてお話を伺いました。

横山 暁一さん
パーソルキャリア株式会社
タレントシェアリング事業部 Loinoグループ
NPO法人MEGURU代表理事
長野県塩尻市
当事者としてより地域と関わりたい、副業で地域おこし協力隊にチャレンジ
地域に関わるきっかけは、鳥取県智頭町に訪れた時に当事者として地域を良くしようと活動している人たちとの出会いでした。当時、私は名古屋に住んでいたのですが、会社と自宅を行き来する生活で、地域に対して思いを持ったコミュニティが身近になく、サードプレイスを持つ人生の豊かさに憧れを抱くようになりました。
その後、長野県塩尻市のシビック・イノベーション拠点スナバの地域おこし協力隊の募集を見つけて、これは面白そうだと応募して市とのご縁ができました。ただ、その募集はすぐに塩尻に移住する必要があり、会社との調整もあったので諦めたのですが、市から別のポジションの打診を頂きました。その後、会社の地域活動に参加するために時短勤務ができる制度や副業・リモートワークができる制度を活用して、2019年4月より地域おこし協力隊として副業が始まりました。

全国から社会・地域課題を解決したい起業家が集う、市民(シビック)の革新(イノベーション)の拠点「スナバ」
取組内容本業と副業の相乗効果によって自分ごと化した「自分が地域をどうしていきたいのか」という思い
地域おこし協力隊の活動は塩尻商工会議所に席を置き、主に地域の中小企業の支援をしています。例えば、塩尻市内の中小企業に対して副業人材の活用を促進するプロジェクトや総務省の関係人口創出事業、首都圏での移住転職セミナー開催などを担当してきました。また、本業で培った人材業界の知見やプロジェクトの進め方などの経験を活かして、所属する会社と一緒に地域をフィールドにした実験的な事業を行ってきました。
一方で、塩尻での副業人材活用のプロジェクト経験が本業でも活かせる機会もあり、会社で「地方副業」のマッチングサービスが立ち上がる際に、部署を異動して現在はそのサービスを全国に広めています。地域おこし協力隊では会社で培った経験を塩尻に持ち込んで「ローカル」で活かし、そこで得た経験を今度は会社に持ち込んで「全国」で活かすという、本業と副業を越境して相乗効果をつくることができました。

塩尻市は自然に囲まれた環境で、市内のあちこちから北アルプス穂高連峰を眺めることができる
「当事者として地域に関わりたい」という思いで塩尻に移住しましたが、徐々に「自分がその地域をどうしていきたいのか」という思いが強くなりました。ここまで自分ごと化されると地域の課題が自分の人生と重なるようになり、将来、自分の子どもたちが「このまちで育ってよかった」と思える、持続的なまちをつくっていきたいという思いにつながりました。そして、移住して2年目の2020年11月に、地域の人材課題を「民間」で「持続的」かつ「専門性」を持って解決する組織として、「NPO法人MEGURU」を立ち上げました。「塩尻の人事部」というテーマで行政や商工会議所などと連携しながら、主に地域の企業に対して外部人材活用や人材採用・定着支援や、学生から社会人に対してその人らしいキャリアを歩む支援などを行っています。様々な働き方やライフスタイルに合わせて活躍できる場をつくることで、人と企業・地域が持続的に成長していく循環を生み出したいと活動しています。
そして、この地域に関わる活動は本業がテレワークだからこそ実現できています。移住した当初は週に2日程度、名古屋に通勤していたのですが、時間的にも家庭的にも大変でした。そこに会社メンバーの理解があり、会社の制度を活用して塩尻でテレワークできたからこそ、地域の一員として地域の企業や働く人たちを支援する活動ができています。働く場所と時間が自分で選択できるテレワークによって、自分らしいキャリアをつくることができたと思います。
取り組みの結果約3年間の活動で、行政や地域企業と実施した副業人材活用のプロジェクト数は約30件、マッチングした人材は56名になります。この中からスナバの会員になった方や塩尻に移住した方など、自分ごと化して地域のために行動する人が増え、地域に関わるきっかけをつくることができました。また、プロジェクトを通して、行政や地域企業などに「人に投資をする」という考え方が根付いて、持続的に地域を良くしていこうといった機運が高まったと感じています。MEGURUの活動に協力してくれる方々も増え、行政や商工会議所などと連携して事業展開が進んでいます。

塩尻の「はたらく」を応援する「地域の人事部」を立ち上げた横山暁一さん
今後の展開今年3月で地域おこし協力隊は卒業となりますが、今後も塩尻を拠点に本業とMEGURUの活動を続けていきます。さらに、今年1月に「ながの人事室」という長野県内で想いを持って活動する企業や人との出会いの創出をテーマにしたメディアを立ち上げました。長野県にエリアを広げて、この活動も「人と地域が持続的に成長していく循環をつくる」ためのもので、長野に関わる人や移住のきっかけをつくっていきたいと考えています。本業は「全国」、MEGURUは「ローカル」で自分らしいキャリアを構築しながら、地域にいる人たちがいきいきと働くことができる活動を行っていきます。
CONTENTS
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事例企業官民が一体となり目指す「起業成功率ナンバーワンの島」
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事例企業キーワードは「防災・減災」 技術を活かし地域の課題解決に向けて協働
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事例企業地方の人材を掘り起こし 地域に生かす