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事例 企業 自治体

類型地域プロジェクトへの参加を目的とした企業等

官民連携で市内製造業のDX化を推進する

2020年8月に「富士市デジタル変革宣言」を行い、市内のDX化のために動き出した富士市。相談先として選んだのが、コロナの数年前からテレワークを導入していたコニカミノルタジャパン株式会社(本社:東京都)でした。翌年、富士市とコニカミノルタジャパンの子会社であるコニカミノルタ静岡株式会社との協働による市内企業のテレワーク推進、DX化に向けた取り組みが始まりました。

吐前 敏孝さん

コニカミノルタ静岡株式会社 
代表取締役社長

地域

静岡県静岡市

松葉 剛哲さん 

富士市
産業交流部
産業支援課 主査

地域

静岡県富士市

地方創生テレワークのきっかけ

製造業もDX化を進めないと時代に乗り遅れる

「富士市デジタル変革宣言」をきっかけにDX化に向けて取り組みを開始

松葉さん:富士市には中小の製造業が多く、テレワークをはじめDX化を進められていないという課題がありましたが、今、製造業ということを言い訳にしていたら、時代に乗り遅れます。実際に、コロナ禍でさまざまな課題が浮き彫りになりました。その状況を変えるため、2020年8月に市長による「富士市デジタル変革宣言」をきっかけにさまざまな取り組みに着手しました。市内には家庭紙を製造している企業が多いので、コロナ禍でも業績は好調でしたが、工場に出社できなくなることも想定した業務の効率化とシステム作りを進めていきました。

市内企業はコロナ最盛期でも有効求人倍率は1倍を大きく下回ることはありませんでしたが、数年前に市内唯一の大学が撤退してしまい若い世代の流出が加速しているという現状があるため、働き手が少なく、このままいくと黒字倒産もあり得る状況です。業務効率化とともに少人数でも働ける体制構築も急務となります。ただDX化に向けてのノウハウが市にはないことから、テレワークをはじめDX化を自社で進めていて、ハード面でもソフト面でも相談ができるコニカミノルタジャパンを2020年12月に訪問しました。

富士市からの相談を受けて「市内の事業者のテレワーク推進」を開始

コニカミノルタジャパンでは、2013年より働き方改革に取り組み、2016年には「保管文書ゼロ化」の運用開始とともに全社員を対象としたテレワークの運用が開始しました。これにより、単身赴任の解除や、介護や育児などを理由としたリモート勤務も可能になりました。そしてわたしたちのコニカミノルタ静岡は、地域に寄り添い活性化を促す地方創生モデル企業として2018年に設立しました。

富士市が課題としていた「市内の事業者のテレワーク推進」はわたしたちコニカミノルタ静岡が担当することになり、2021年、年初に富士市に対して改めて会社の紹介と市内事業者への取り組みの提案書を持参しました。実際にお会いして、優先課題や将来的に目指している姿などを直接伺うことができました。富士市が2021年3月に作成された「富士市テレワーク推進ロードマップ」に沿う形で議論を重ね、2021年7月に富士市、富士商工会議所、富士市商工会と弊社の4者でテレワーク推進に関する連携協定を締結しました。商工会議所と商工会にも加わっていただいたので、市内事業者には「富士市としてDX化の為の具体的な取り組みを進める」というメッセージが伝わりやすかったと思います。

令和5年1月開業のテレワーク用施設「WORX新富士」は新富士駅直結

取組内容

首都圏と地元、両方の視点で富士市の魅力を発信

市内事業者向けの「富士市テレワーク実践会議室」を開設

松葉さん:最初の取り組みとして、2021年10月に市内事業者がリモートワーク等の体験や、導入に向けての相談ができる「富士市テレワーク実践会議室」を開設しました。テレワークコンシェルジュとして、コニカミノルタ静岡の社員の方に週1回常駐いただき、そのほかは予約に応じてスタッフが体験等の対応ができるようになっています。

吐前さん:「テレワーク実践会議室」は実際のテレワークが行えるオフィスイメージを取り入れて設計しました。集中して作業ができる「ソロワークスペース」、テレワークや業務改善に関する相談窓口の「テレワークコンシェルジュ」、そして机や椅子を自由に動かしてチームでアイデアを生み出せる「グループワークスペース」という3区画に分かれています。

市内事業者に向けて「テレワーク」導入、DX化に向けた取り組みを実施

吐前さん:「テレワーク推進会議室」には3つの機能を持たせました。まず1つ目が、「テレワークの体験」という機能です。まだ「テレワーク」の認知が不十分ということもあり、「どんなことができるのか」ということをこの場で体験してもらえるように、テレワークに必要な機器やネットワーク環境を設置しています。2つ目は、「興味はあるが何から手をつけていいかわからない」という事業者向けの「テレワークコンシェルジュ」機能です。お客様の業務内容をヒアリングして、業務を可視化して整理した上で必要なものを優先順位付したレポートを提供しています。お客様の業務効率化や働き方改革による生産性向上という最終ゴールに向けて、テレワークという手段でわたしたちがご支援させていただくものになります。3つ目は、「メッセージの提供」という機能です。「テレワーク」の認知を向上させるための情報発信の場として、市内事業者向けのテレワーク、DX勉強会を今年度上半期で6回開催しました。この施設は首都圏企業に富士市の魅力を知ってもらうアプローチ拠点にもなっています。市内にあるコワーキングスペースの利用促進や環境作り、それを首都圏企業に向けてホームページやSNSで発信するマーケティング活動を富士市からの受託事業として行っています。

2022年3月に、県内外の8企業がブースを構えて、DXで業務改善を体験できるマッチングフェアを開催しました。展示会を通じて製造業のテレワークの第一歩として、リモート会議などで製造工程などを整理しやすいデジタルホワイトボードの需要が高いことがわかりました。

地方が抱える「技術伝承」という課題をDX化で解決へ

松葉さん:市としては、市内企業からDX化に向けて相談などがあった場合は、テレワーク実践会議室のテレワークコンシェルジュへの相談を促しています。実際に、吐前さん達が積極的に商工会議所や商工会に出向いてくれているので、市としても一緒にやっているということが市内事業者に伝えやすいです。

市内事業者のテレワーク導入事例として、自動車関連の企業が機械の納入先でトラブルが発生した際に、高性能のカメラとオンライン会議ツールを活用することで直接訪問しなくても機器の修理ができ、出張費用が削減したという結果が得られました。そのほか、市内事業者の「技術伝承」という大きな課題が生まれ、ここをコニカミノルタの技術とマッチングさせて市内企業2社とともに実証実験を行っています。

首都圏企業への発信も民間へ委託

松葉さん:首都圏企業や働き手に向けた富士市の発信については、プロポーザルを経てコニカミノルタジャパンとコニカミノルタ静岡へ委託しています。コニカミノルタジャパンの本社が首都圏にあり、そこから見た富士市の魅力という視点が得られ、さらに1年間共に活動してきたのでこちらのことも理解していただけるという、内外の視点が得られるのが利点と考えています。

富士市に開設した「コニカミノルタ静岡 富士営業所」

富士山の裾野に拡がる富士市特産のお茶畑

取り組みの結果

富士市に営業拠点を設置 首都圏企業への富士市の認知向上

吐前さん:富士市で活動しているなかで、実際に自分たちも市内事業者となり、商工会議所のメンバーとしてスタートしようと2022年11月に富士営業所を開設しました。わたしたちの目的として、地域に根ざしてお客様と一緒に収益を上げていくというところがあるので、それを実践するためにも大事な一歩となりました。また実際に地域と連携して地域課題の解決に向けて取り組んでいるので、わたしたちが掲げている理念「真の社会課題解決企業になる」が実践できており、社員のモチベーション向上に繋がっている実感があります。こういった動きから、コニカミノルタジャパンでも自治体連携の動きが加速しました。

松葉さん:市内に営業所を出して商工会議所に所属してもらって、富士市に軸足を置いて活動していただける企業が1つ増えたというのは非常に大きいと思います。また、コニカミノルタ主導のデジタルマーケティングの結果、都内で開催した富士市を知ってもらうイベントで、30社以上の企業に来てもらえたことも大きな成果と考えています。サイトの閲覧数も格段に増えており、首都圏企業や働き手への認知向上も進んでいます。

今後の展開

テレワークは手段 その先にある働きやすい企業、業績向上を目指す

吐前さん:まだまだ市内事業者に向けて認知が足りないということをこの1年で痛感したので、発信を強化していきたいと思います。営業所も開設した今、地に足をつけて着実に地域事業者と共に発展していこうと思います。地域雇用で地域貢献するという点でも、市内を中心に地域での人材採用を進め、親会社からの出向社員を帰していく動きを加速させます。DXによる業務効率化、テレワークはあくまで手段です。その先にある、働き手の「創造じかん」と「自分じかん」が増え、さまざまな立場や環境にいる人が働きやすくなることにより、地域がさらに活性化し、そこから企業の業績が上がっていくということを実現すべく、注力していきます。

松葉さん:「テレワーク実践会議室」を中心に現在の市内事業者に向けた取り組みをより加速させて事例を多くつくっていきたいと思います。首都圏企業をより多く誘致し、多様な雇用を創出すると共に、市内事業者に対してはDX化によりどういう効果が生まれるかについて具体的事例をつくり、見える化することによって、事業を加速していきたいと考えています。

(取材日:2022年11月7日)

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