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事例 働き手

類型離職防止、地方人材の採用・育成、ワーケーション推進を目的とした企業等

「転職なき移住」で地元にUターン 地元にいるから生まれた地域との新しい関わり

東京で働きながら地元のための活動を行い、いつかは仕事を持って帰りたいと考えていた冨川竜生さん。日本マイクロソフトへの転職、そしてコロナ禍のテレワークをきっかけに予定より早く地元の萩市に戻ることができました。移住後は、東京にいたころとは違った形で地元に関わるようになりました。

冨川 竜生さん

日本マイクロソフト株式会社
コーポレートソリューション事業本部
Azure Core Specialist
一般社団法人萩大志館
理事

地域

山口県萩市

地方創生テレワークのきっかけ

リモートワークの社内制度を利用し故郷へ

大学進学のため地元を出た後、2011年から東京で働き始めました。それと同時に、自分の出身地である萩のために何かしたいと、当時任意団体だった「萩大志館」を手伝い始めました。(「萩大志館」は、萩出身者、市民のふるさと愛を資金として預かり、萩の課題解決、価値創造にダイレクトに寄与する事業を行う民間団体)そうしたなか、2015年に萩市が「サテライトオフィス実証実験」を行い、参加企業の方たちから「働く場所の選択肢が増やせる新しい働き方がある」という話を聞いたりもしていました。わたしもIT企業の営業として全国を飛び回りながら、ビデオ通話ソフトを用いたオンラインの打ち合わせも行っていたので、「仕事をそのまま持って、いつかは地元に帰りたい」と漠然と思っていました。

2019年12月に日本マイクロソフトに転職し、すぐコロナ禍となり仕事が全てテレワークに。1歳の子どもがいたので萩市に家族で2ヶ月一時避難したところ、「ネットの回線があればどこでも働ける」と改めて実感しました。その後、社内では以前のリモートワークのルールが更新され、さらに新しい働き方のガイドラインが出ました。50%以上リモートで働くという社内制度を利用することに決め、上長から承認をいただき、2021年6月に移住しました。

効率の上がるリモートワークのためにはストレスがない快適な環境作りもポイント

取組内容

故郷に戻ったから広がった地域活動

本業では居場所に関係なくチームが回る仕組みが確立していた

仕事については、移住前からオンラインツールを社内で活用しており、お試し移住も経験していたので、移住後もスムーズに進めることができました。東京勤務の時から1つの顧客に対して複数の部署から担当メンバーを出して、仮想のチームをつくるという方式をコロナ前から採用しており、オンラインで参加できれば担当の居場所に関係なくチームが回るようになっていたため、チームのメンバーにも気兼ねすることもありません。現在、チーム内ではわたしの他にも青森から熊本までフルリモートで働いているメンバーが数名います。

地域との関わり方の変化

移住して変わったことの1つが「萩大志館」を含めた地域との関わり方です。東京で参加していた頃の、わたしの主な活動内容は萩の事業者が東京で実施する物産展の手伝いでした。当時は「萩大志館」立ち上げメンバーが福岡在住、わたしを含めてもう1人が東京在住、と萩から離れてサポートしていたので、それ以外の活動が難しかったというのもあります。2017年に改めて自分たちの活動を見直し、直接萩に貢献できる事業をするため、組織を一般社団法人化し萩市へ登記しました。萩市に法人税を納めることができ、地元への貢献につながったと思います。その際にわたしも理事に就任しました。

地域に住んでいるからこそ出来ることがある

2021年に萩に移住してからは、活動の幅も広がりました。そのうちの一つ、地元を離れて帰れない人たちに向けて萩市のライブ映像を見られるようにしたことも、わたしが現地でライブカメラの設置などが出来たからこその取り組みだと思います。そのほか、萩市に進出したIT企業と連携した講演や中・高校生に向けたオンラインのしごと紹介も行っています。この活動から地元中学の学校運営協議会への参加の依頼をいただき、職場体験に向かう子どもたちにビジネスマナーの講座を行なったり、萩大志館の取り組みを直接伝えたりしています。これもわたしが萩市に住んでいるから声を掛けていただいたのだと思います。また、個人でも地元の方からのお声がけで、小学生への食育活動の参加やWeb会議のサポートを行っています。

わたしの家は、祖父の代から自動車の整備工場を経営しています。現在は父親が経営しており、将来的に地元に戻り事業承継しようと考えていました。テレワーク普及のおかげで、予定よりも早く戻って来られたので、家業にも今から少しずつ関わりを見つけていこうと思っています。

「萩・明倫学舎 コワーキングスペース」萩藩校明倫館の跡地、旧明倫小学校の教室をリノベーション

豊かな自然環境のもとでの子育てもUターンを決断したポイントのひとつ

取り組みの結果

自分自身がテレワークのソリューション事例に

仕事の方は、移住してからも変わらず目標数字を達成できています。むしろ、わたし自身が自社の提供するテレワーク等のソリューションの事例となるので、より製品価値やセキュリティなどが訴求できるようになりました。身近な事例を見ていただけるので、お客様の働き方を変えていくことにもつながっているのではと感じています。地域での活動も、やはり地元にいるから生まれるものがあると実感しています。

今までは東京から頭でっかちに「やるべき」と考え、それを地域の方にお願いして見守るだけでした。それが今は、地域の方と一緒につくりあげる感覚が強くなり、お互いに感謝して信頼できる関係になったと思います。家庭面では、夫婦2人での子育てから、実家や親戚の手も借りることが出来るようになり、安心感が増えました。また喧騒がなく静かな環境でよく眠れて、身体的・精神的なゆとりが生まれ、家族との時間も増えました。

今後の展開

本業、地域活動、家業のトリプルワークを目指す

現在の仕事と、「萩大志館」を中心とした地域での活動、そして家業とトリプルワークに挑戦したいと考えています。もちろん、日本マイクロソフトでの仕事が最優先ですが、地元にいるからこそ、朝など使える時間も増えるので、地域や家業により関わっていきたいです。

萩市では学生がやりたいという仕事がまだまだ足りないため、県外に出ていく人が多いのが現状ですが、テレワークを活用することにより、わたしのように県外で働いた後、転職せずに地元に戻り、リモートで働くことが可能です。このような働き方を子どもたちに伝えて、萩での仕事の選択肢を少しでも増やしていきたいと考えています。そして次世代や地元の企業、サポートしてくれる人たちと一緒に、新しい萩ならではの価値をつくっていきたいです。

(取材日:2022年10月6日)

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