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事例 自治体

類型企業等の地方創生テレワークを促す取組を行う団体等(自治体)

企業版ふるさと納税とテレワーク拠点を活用し 関係人口を創出

2040年には人口が半減すると予測が出ている能登町。2015年から地域の信用金庫と連携して、人口減少に対する取り組みを続けてきました。2020年からは「企業版ふるさと納税」を活用した課題解決型の関係人口対策を加速。2021年に整備したテレワーク拠点を活用し、企業のワーケーションや研修、複業人材の活用などさまざまな関係人口を創出する施策を行なっています。

灰谷 貴光さん

能登町
ふるさと振興課
地域戦略推進室 主幹

地域

石川県能登町

地方創生テレワークのきっかけ

20年後には人口が半減 リソース不足を解消する課題解決型人材を外から町に呼び込む

信用金庫と共に人口半減の危機への対策を開始

能登町は1950年から人口減少が続き、2010年に約2万人、そして2020年には約1.6万人となりました。高齢化率は50%を超え、2040年には人口は半減して1万人を下回る予測が出ているほど、厳しい状況です。しかしその一方で、2011年に能登町を含む能登地域が先進国で初めて「能登の里山里海」として世界農業遺産に登録されました。伝統のある能登町の暮らしをどう未来へ受け継いでいくのか考えながら人口減少と地方創生に取り組むために、まず、2015年に役場に地方創生を担当する地域戦略推進室が設置されました。同時期に、能登町に本店を置く興能信用金庫から「町の縮小という課題に対して対応していく必要がある」という検討課題が上がりました。そこで翌年から興能信用金庫と地方創生に係る包括連携協定を結び、人口減少や少子高齢化、地域経済の縮小等の地域課題等に向けての取り組みが始まりました。

企業版ふるさと納税を活用したプログラムへ応募

2020年8月には信金中央金庫が企業版ふるさと納税を活用して、地方創生やSDGsに伴走するプログラム「SCBふるさと応援団」を創設しました。興能信用金庫から声をかけていただき、それまでの取り組みの延長線上にある関係人口対策の具体案を提示して応募した結果、1,000万円の企業版ふるさと納税をいただくことになりました。

自由な発想が、里山里海の良さを継承しつつ活かしていく

取組内容

能登町の課題に向き合い解決する人を増やしていく

地域課題の解決に外部人材の活用を目指す

町には膨大な数の課題が発生しますが、人口減少の中で、それを「解決できるひと」も減ってしまいます。そこで、少しでも「解決できるひと」「解決したいひと」を増やしていくために、町の未来について話す「のと未来会議」を2018年から興能信用金庫と連携して開催してきました。会議の場には能登町民だけでなく、地域外の人も参加して、能登町の未来について語りあっています。ただ観光で訪れるということでなく、外部の人材も能登町と関わり、このような場に参加していただくことで当事者意識が生まれ、能登町のファンになっていくと考えています。このような外部人材の活躍の場として、地域の事業者の課題解決をすることを検討しました。そのなかの1つの案として、「地域課題をテーマにした企業研修の誘致」という課題解決のアイデアを発表したところ、2019年の内閣府主催の「地方創生・政策アイデアコンテスト2019」で賞をいただくことができました。このアイデアをより深め、具体化したものが企業版ふるさと納税で実施したプロジェクトです。

テレワーク拠点を活用し、企業のワーケーションを推進

プロジェクトが本格的に開始したのは2021年度からになります。交流から移住までの間を「のとをしる」、「のとにであう」「のとがはじまる」「のとでいきる」と4段階のステップに分け、それぞれ施策を打ちました。「のとをしる」の部分では、ただの観光とは異なる要素で能登町に来てもらうために「ワーケーション」を1つの切り口にしました。現在は、そこから進めてテレワークや複業等「新しい働き方」にしています。あわせて能登を五感で感じるコンテンツ造成、Webサイトの整備や、「のと未来会議」のオンライン開催等を行っています。

プロジェクトのターゲットを都市部に在住する新しい働き方を実行する層と設定しましたが、その時点では人物像が想像つかず焦点が定まっていませんでした。そこでANAあきんど株式会社(以降、ANA)から社員を地域活性化起業人として派遣してもらい共に事業を進め、知見を貯めてきました。そして能登に来た際にも仕事ができる環境づくりとして、2021年10月にテレワークができる活動交流拠点「ノト クロスポート」を開設しました。通信環境や施設内の設備については、2021年11月に4泊5日で2回ANA社員にワーケーションで検証していただきました。

大人たちの熱意が子どもを育み、未来へとつながる

能登半島から海越しに冬の北アルプスを望む

小規模事業者で複業人材を活用。首都圏企業の社員向け研修で町の課題解決に取り組む

能登町には家族経営の小規模事業者が多く、経営課題の解決に取り組めずにいます。そこで興能信用金庫と連携して、町内事業者と関係人口となった都市部人材がその解決に取り組む地域外複業人材活用促進事業も推進しています。複業人材活用は、外部人材の活躍の場として、地方での課題解決を行う選択肢の1つと考えています。そのほか、企業研修や合宿があります。2022年10月から12月には、一般社団法人ALIVEが主催する首都圏企業の社員が集まり地域課題の解決を題材にリーダーシップ開発する企業研修を誘致しました。36人の一般企業の社員に6人の町職員が入り、6チームに分かれて、「能登の暮らしから始まる新しい生き方・働き方の最先端モデルをつくる」「2026年までに町内の遊休施設を活用してサテライトオフィスを10社誘致する」という課題で取り組みました。これから提案の具現化に動いていきます。これ以外に「ローカルシフトアカデミー」という、能登町を知り事業創出する約5ヶ月間のプログラムを2年連続開催しています。このプログラムの昨年度の参加者の1人は今年東京から移住しました。

こういったプログラムを通じ能登町と向かい合ってくれたひとたちの完全移住を目指したいですが、ハードルが高いのも事実なので、365日中365日ではなく、10日間でもいいから能登町で活動する人を増やしたいと考えています。人口の減少予測が出て「どうせ無理」ではなく、「10/365日で活動する人」を複数つくることで「きっとできる」になると信じて、さまざまな施策を進めています。

取り組みの結果

テレワークが出来る活動拠点が出会いの場に

「ノト クロスポート」は移住定住の窓口にもなっており、単なるテレワーク施設というより「のとをしる」「のとでいきる」ひとたちの出会いの場になっていると言えます。今年度、ここに、常駐ではないですが、サテライトオフィスが一社入って来てくれたことは力強い成果になりました。そして複業、研修、未来会議等さまざまな施策を通して、ただ能登町を訪れただけではなく能登町の課題に向き合いたいという人が増えています。

何度も来町される人、二拠点で活動される人、起業される人が出てきました。いままでは施策を計画する際に「誰とするのか?」というところでつまずいていました。しかしいまは、わたしたちや連携している興能信用金庫等の地域事業者が、顔を思い浮かべ、気軽に連絡が取れる状態になった外部人材がいます。まさに関係人口です。こういった人を100人つくりたいと考えています。町の人口で考えると1%弱という大きな数字です。企業版ふるさと納税も、寄付を行った信金中央金庫の目的である「共創」を実現しているので、このままこういった取り組みを続けていけば他の自治体にも横展開できる事例になると思います。

今後の展開

能登町の暮らしを再構築していくパートナーとなるような企業の誘致を

能登町と向き合ってくれる関係人口を増やす取組みは2023年度まで推進していき、その後の2年間では企業誘致を進めることを目標に既に動き始めています。ただ、大事にしているのは能登町の暮らしを受け継ぐことです。ただ受け継ぐのではなく、外部の企業や人材と混ざり合って再構築しながら受け継いでいく形になると考えます。そのため単純にサテライトオフィスの誘致ではなく、わたしたちの目指す方向と企業が目指すところがかみ合い、共に能登町の暮らしを再構築して受け継いでいける企業に来ていただきたいと考えています。

(取材日:2022年11月25日)

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