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事例 企業 自治体

類型離職防止、地方人材の採用・育成、ワーケーション推進を目的とした企業等

愛媛県で基幹オフィスと複数のサテライトオフィスを開設 雇用創出と地域経済を活性化!

2007年に愛媛県松山市にコールセンターの拠点を置き、本社のバックオフィス業務を徐々に集約し、愛媛県と高知県で7箇所のサテライトオフィスを開設した株式会社ベネフィット・ワン。拠点を含めた人員は、15年間で70人から約650人に増加し、地域雇用に大きな影響を与えました。

妻木 宏文さん

株式会社ベネフィット・ワン執行役員
業務推進事業部
松山BPOセンター長

地域

東京都

近江 文俊さん

愛媛県
経済労働部 産業雇用局
企業立地課 担当係長

地域

愛媛県

地方創生テレワークのきっかけ

制度だけではない、行政のサポートが決めてとなり愛媛県に進出

妻木さん:わたしたちは福利厚生の代行サービスが主な事業で、以前は東京と大阪に2か所コールセンターを置いていました。事業拡大に伴い人員が増え、各センターが手狭となったので、第3のセンターを全国で何か所か検討し、最終的に愛媛県松山市に決定し、2007年にコールセンターの拠点を置きました。松山市を選んだ理由としては、各自治体の支援内容もありますが、気候が比較的穏やかで住みやすく、災害による出勤への影響が少ないこと。そして松山市をはじめとして、県と市が連携して積極的にサポートしてくれたからです。例えば求人の際には、愛媛県内で知名度の無いわたしたちを積極的にPRしていただくなどのサポートもしてくださったことが非常に心強いと感じました。

近江さん:2017年のコールセンター拠点の進出の際には、当時の松山市長(現愛媛県 知事)が、県を巻き込み、アプローチをしました。情報提供やサポートなどを手厚くおこなっていました。

取組内容

本社の一部機能を愛媛県の拠点へ集約 人材雇用は地域分散へ

コールセンター事業から始まり バックオフィス業務も地方へ集約

妻木さん:2007年に松山市内の空港近くのテナントオフィスを 間借りして、コールセンターを開設した後、県から工場跡地再開発の話があり、2009 年に自社ビルを建てました。コールセンターの事業は本社の営業や企画部門と連携することが前提となっており、これまでは東京を起点として大阪や松山でカバーをするという体制を取っていました。ただ、松山へ非常にスムーズに一部機能移行ができたことと、自社ビルも建てたことから、2010年に大阪、東京と段階的にコールセンター機能を全て松山へ集約することになりました。また、本社のバックオフィス業務も地方へ移管していき、本社は営業や企画・管理に集約するという方針が決まりました。このように2年をかけて、福利厚生のお客様対応のバックオフィス業務も松山に完全集約しました。その後、顧客の増加とともに松山での業務量が増加し、ヘルスケアなどの新規事業も増え、松山センターでの人員も増加しました。ただセンター開設当初に比べ求人への応募数も少し鈍化が見え、顧客の増加率とスタッフの増加数を平行化できない、という課題を抱えるようになりました。そこで、2018年に愛南町にサテライトオフィス第一号店を開設し、そこから2022年度までに愛媛県内に5箇所、高知県に2箇所サテライトオフィスを開設し、課題解決に努めました。

ベネフィット・ワン サテライトオフィス第一号店「愛南ベース」

働き手は分散型!家の近くで働けるように サテライトオフィスを複数箇所設置

妻木さん:BtoBの事業上、個人情報などもお預かりしているので、セキュリティの観点から在宅での業務は難しい面があります。「それなら事務所が住居の近くにあったらいい」という発想で県内数カ所に展開を始めました。遠隔であっても全く問題なく業務ができるということが松山で実感できていたことが後押しとなりました。現在は松山のセンターを基幹として、四国の各地域に業務を分散してオペレーションを行っています。サテライトオフィスですが、セキュリティは松山と同等にしており、さらに来客対応は松山に限定するなど、物理的な入室制限も行っています。

弊社は開業当時から、日本社会の将来の慢性的な人手不足への危機感を持っていました。そこでわたしたちは、人が資産の組織ということで、弊社独自の名称ですが、「Neo Works」という働き方改革を行ってきました。それはオフィスに定時に出社して働くという従来の働き方の「当たり前」から脱却し、テレワーク等を採用し、働き方をネットワーク化、そして「環境さえあれば、場所はどこでも働くことができる」という考えのもと、働き手を集約するのではなく、分散しようという取り組みです。

最初のサテライトオフィスは敢えて県の端に開設

近江さん:県としては、愛媛県内にサテライトオフィスを開設されるにあたって相談をいただき、市町をご紹介する等のサポートを行ってきました。また紹介先の市町と一体となって、空き物件の紹介や、人材確保のためのサポートを行ってきました。最初に愛南町を推薦したのは、県庁所在地である松山市から一番離れている町に進出いただくことで、他の市町に対する刺激を与えたいという戦略もありました。

妻木さん:わたしたちとしては、愛南町は水産業や漁業が発達していて、一方で事務系の職種の求人が少ないので、一定のニーズがあるのではという仮説を持っていました。実際に、県外から嫁いで来て以前と同じ事務系の仕事を求めていた方などから多く応募いただきました。これが実績となり、他の地域へ横展開してきました。また最近では、県外から愛媛県への移住希望も増えてきた印象があります。移住後の就職先として選ばれてきていると感じています。

移住の際にネックとなる「仕事」の1つの選択肢に

近江さん:2015年から東京に愛媛県の移住相談窓口を設け、コロナ禍ではオンライン移住相談会なども積極的に実施してきました。その結果が、現在の移住増加にも繋がっていると思います。実際、移住者数が2015年度は年間270人ほどでしたが、2021年度は4,910人と過去最高を記録しました。県内への転職を考えるうえで、東京での仕事と同等の職種を希望される方もいらっしゃるので、ベネフィット・ワンという事務系の就職先があることは移住のきっかけの一つになると感じています。

さまざまな形で地域を応援していく

妻木さん:女子サッカーチーム「愛媛FCレディース」は愛媛県をホームタウンとしています。女子サッカーリーグのうち、「なでしこリーグ」はアマチュアリーグのため、選手は昼間仕事をしてから夜練習を行います。2018年に選手の就職先になるというご縁をいただき、2019年からユニフォームスポンサーとなりました。そこからご縁が繋がり、現在は男子のプロサッカーリーグ(J3リーグ)に所属する「愛媛FC」のユニフォームスポンサーもしています。人材採用というのはわたしたちが大事にしていることで、それがきっかけとなり地域貢献に繋がったいい機会になったと思います。また昨年は県内の2チームが戦う試合(伊予決戦)を全力でサポートを行った結果、会場に通常の3倍以上の来客があり、地域と一体となって盛り上がれることができました。

近江さん:わたしたちも伊予決戦は職員総出で応援に行かせていただきました。普段から、定期的に訪問して、課題やニーズをいつでも吸い上げられる状態、いつでもサポートできる関係を持続できるようにしています。県の企業立地課としては、県の魅力をPRして企業に進出いただくのも大きな仕事ですが、それと同じだけ、縁があって来ていただいた企業の事業拡大や側面的なサポートをすることも重要なミッションだと考えています。

「愛媛FC」応援企画 マッチスポンサーイベント『ベネワンデー』

温暖で風光明媚な八幡浜

取り組みの結果

地方での貴重な事務職の雇用拡大

妻木さん:開設初年度の採用は70人近くでしたが、現在松山センターだけで550人。サテライトオフィス(7拠点)を含めると650人になりました。カスタマーセンターからスタートしていますが、会社として業務系の仕事を地方に集約する成功事例となり、松山に続き長野県や兵庫県にも同様の拠点を構えることになりました。
近江さん:愛媛県は、東部(東予地域)は二次産業が、そして西南部(南予地域)は一次産業が中心になっています。そして愛媛県の人口減少の原因は若者、特に女性の流出になります。女性が働きやすく若者にも人気の事務職はとても貴重であり、650人もの地域採用というのは、県内でもとても大きい数字です。県内に進出した企業が事業を拡大している非常によいモデルケースになっています。

愛媛県5つ目のサテライト拠点「内子ベース』

今後の展開

愛媛県をあげて 地元に戻りたくなるような取り組みを

妻木さん:現在、新卒採用は四国内においては松山のセンターのみですが、各サテライトオフィスで成長してきた人員に対して管理者としての育成を行うとともに、将来的には各拠点でも新卒の定期採用を行いたいと考えています。また、愛媛に縁がある、愛媛が好きで戻りたい、と考えている人はまだ全国に多数いると思います。そんな方達に向けUターン、Iターン含めて、愛媛県における雇用の確保、より地元に帰って来てもらえるような取り組みをぜひ県と一緒に行っていきたいです。また、愛媛県内で成功した松山の基幹オフィスとサテライトオフィスというような形を、更に他の地方で広げていくこともできると考えています。

近江さん:若者、特に女性が地元に定着して、結婚や出産を迎え、愛媛で未来をつなぐ人の循環をつくっていく必要があります。そのための課題は、いかに望まれる仕事の場をつくって、県内に若者が定着して、将来を描けるような形にしていくか、また進学等で県外に出て行っても、帰ってきてここで働きたいと思える職場を確保していくか、というのも重要です。そのために、県と各市町がしっかりと連携体制が取れていて、進出後のサポート体制も充実していること、まじめで離職率の低い県民性など愛媛県の特徴をPRし、事務職やIT職など若者や女性の希望する職場を広げていきたいと考えています。

(取材日:2022年11月10日)

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