子育て世代の地方移住、
事前に調べておきたい移住先の情報は?
20代や30代の移住希望者の増加に伴い、子育て世代の移住が増えてきました。子どもがいるからこそ検討しておくべきポイントをまとめてみました。
「自然豊かな生活環境」 と 「都会的なもの」 とのバランス
自然豊かな生活環境の中で、のびのびと子どもを育てたい。子育て世帯が地方移住する際に思い描く、ポジティブなイメージでしょう。車で少し走れば海や川や野山、大きな公園もある。水や空気が美味しく、食べ物も地場の新鮮なものが安くて美味しい。都会生活と比較した際の、地方暮らしの魅力の一つです。
一方で、都市生活でこそ享受できるものの代表格として、数多く存在する商業施設や文化資本(施設やサービス等)は、地方に行けば行くほどその数や選択肢が少なくなり、地域によっては映画館やコンビニさえ存在しない地域も。都会での生活に慣れ切った幼少の子どもがいる世帯にとって、移住先によっては「遊戯・娯楽施設が少ない」ということはある程度覚悟する必要があります。
もちろん、どちらか一方ではなく、自然環境と都会的なものにほどよくアクセスしやすいエリアを移住先に選ぶ方が多いのも事実です。どのように両者のバランスを取るか、家族と事前に協議することが重要です。
「地域社会の活発さ」 や 「人との距離感」
例えば、都心のマンションでは隣の部屋の住民の顔を見たことがないといったケースも珍しくはありませんが、一般的に、地方社会では近所にどんな人が住んでいるのかということには高い関心が払われ、地域の中で人と触れ合う機会が多い傾向にあります。子育て世代は、より一層その傾向が強まると言えるでしょう。子どもの通学や学校行事に始まり、地域の行事やお祭り、町内会など自治会の当番や集まり、毎週のゴミ出しに至るまで、地域住民と接する機会は数多くあります。
子育てや生活に関する情報は、学校や行政からの情報だけでなく、同級生の親御さんや、いわゆる「パパ友」「ママ友」コミュニティの存在が重要な地域もあります。地域によっては、人づてにしか知ることのできない地域文化や慣習などもあるでしょう。
★「おせっかい」が魅力の山口県光市
山口県光市は「人のやさしさ、温かさ」を“おせっかい”というキーワードで表現し、「おせっかい都市宣言」をしています。具体的には、学校と地域、家庭が一体となって、「出会い」「結婚」「出産」「子育て」等のテーマでイベントを企画し、町地域ぐるみで子どもを育てる取り組みを進めています。医療費や保育料の助成も手厚く、市内の未就学児と小学生の保護者を対象にしたアンケートでは、9割以上が「子育ては楽しい」と答えています。
習い事や高等教育で、通学圏での選択肢に限りがある場合も
中には、首都圏並みに教育熱が高く、学習塾をはじめ水泳・ピアノ教室など、習い事の選択肢や環境が充実している地域もありますが、首都圏と比べると、習い事や選択できる学校の数や幅が限られてしまうのが現実です。どうしても欠かせない習い事やジャンルがある場合は移住先での事前の下調べが必要です。
また、高等学校や大学への進学を控えた年齢の子どもがいる家庭の場合、通学圏での教育レベルや選択肢に限りがあることを念頭に入れ、進路の検討をしておくことも重要です。
★地方ならではの特色ある教育
地域ならではの特色ある教育方針で、個性的な授業や課外活動に取り組む学校が各地にあります。大変な人気を博し、子どもをその学校へ通わせたいがために、家族で移住するというケースさえあるほどです。高知県の山間地区・吾川郡にある「森の小学校 土佐じゆう学校」もそんな学校の一つです。「自然との共存」をカリキュラムの軸に据え、田植え稲刈り、収穫祭、川開きやスキーといった地域の自然環境と存分に触れ合う体験が、授業の中に数多く設けられています。また、オーガニック給食を取り入れるなど食育にも力を入れています。高知の豊かな自然が子どもの学ぶ力を育みます。
地域の医療機関や医療体制については、事前に下調べを
小さな子どもほど、熱が出たり、おなかをこわしたり、程度の大小問わず怪我をしたりするものです。「国民一人当たりの病院の数」には当然地域差があり、特殊な疾病や重篤な病状がある場合は地域の医療機関ではなく、医療従事者や設備の整った病院で診てもらう必要があります。移住先の周辺に、どんな規模の、どんな種類の医療機関がどのくらいあるか、交通アクセスや休日・夜間の救急医療体制はどうなっているのかなど、基本的なことを確認しておくことが重要です。また、救急や通院に関しても、車が主な交通手段という地域が多く、事前に下調べをしておくとよいでしょう。
子育て世帯を支える行政の補助やサポート
移住者に対する補助やサポート制度は自治体によって多種多様で、支援のポイントも異なります。例えば、「子育て補助金」だけでなくて、「習い事」に関する費用を補助の対象にしている自治体や、「不妊治療や人工授精の費用助成」や「産後ケアのサポート事業」といった、出産前後に渡って母子のためのサポートに注力する自治体もあります。保育所や幼稚園への入園をはじめ、子育ての過程ではどうすればよいかわからない事態に遭遇することがよくあります。そういう時にどこに相談すればよいかなど、本WEBサイトの「地図から探す地方自治体の取り組み」、や自治体の子育て情報をまとめているWEBサイト、パンフレットなどで事前に確認しておくと安心です。
(2021年11月11日取材)