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COLUMN移住に関するコラム

移住で失敗しないためのヒント-東京からUターンしたファイナンシャルプランナーが語る-

移住で失敗しないためのヒント-東京からUターンしたファイナンシャルプランナーが語る-

移住というと、かつては定年後の第二の人生というイメージでしたが、コロナ禍をきっかけに、首都圏から地方に移住してみたいと考える若い世代も増えています。親の介護のためなど、明確な目的を持つ人もいれば、何となく移住してみたいと考える人も多いかもしれません。そんな漠然とした移住希望者は、失敗しないためにどんな準備をしたらよいでしょう。自らも東京と愛知県の実家の二拠点生活を送り、移住やワーケーション生活希望者を応援しているファイナンシャルプランナーの遠山有美子さんに、移住への心構えをアドバイスしてもらいました。

移住成功のカギは収支バランスのシミュレーション

移住成功のカギは収支バランスのシミュレーション

「移住するにあたっては、引越し代など一時的にさまざまな支出が必要になりますが、最も気を付けなくてはいけないのは、移住後の日々の収入と支出、つまりランニングコストの変化です。特に、都市部での仕事を辞めて移住すると、多くの場合は収入が減ります。一方で、家賃などの費用は減るケースが多いのですが、そのプラスマイナスをよく見極めなくてはいけません」と遠山さんは話します。「引越しにかかる費用は数十万円。地域によっては補助金をもらえるケースもありますが、それも大金ではありません。この先何十年も住むことを考えると、日常のコストの方がずっと大きくなります。そこをよく考えないと、将来破綻することにつながります」
生活費や物価の面でメリットはあっても、自動車を使う場合は購入費や維持費、ガソリン代などがかかります。公共交通機関を利用するにしても地方は都市部よりも割高ですし、住宅費も考える必要があります。「中でも一番大きいのは仕事です。支店への異動やテレワークが可能で、今の仕事を地方でも継続できる人はよいのですが、転職するとなると、一般的には収入は減少します。起業する場合も含め、仕事の方針と収支を明確に検討しなくてはいけません」

移住に踏み出す前に、現地の暮らしを体感してみては

移住に踏み出す前に、現地の暮らしを体感してみては

遠山さんは、2016年にフリーになり、時間が自由になった頃、父親の介護が必要になりました。初めは2か月に1度、1週間程度実家に帰っていましたが、期間は徐々に増え、コロナ禍をきっかけに1年のうち半分くらいを実家で過ごすようになりました。1週間おきに移動していた頃は、往復の移動に加え、掃除などの家事も二拠点生活で2倍になり疲労がとても大きかったそうです。その後、母親も介護が必要になり、現在はほぼ愛知県で暮らし、仕事で必要な時だけ東京で数日過ごすようになっています。「東京で暮らしていた時は季節を感じることはあまりありませんでしたが、田舎に戻ってみて、改めて四季の自然を感じる暮らしの豊かさを実感しています。雨上がりには地面が湿った独特の香りがしますし、木やコケの香りも日々感じます。同じパソコンに向かう仕事であっても、自然の中では感じるストレスがまったく違いますね」。「母の友人が気遣ってくれるなど温かい人情に触れることがとても多く、お祭りなどで地域の人と触れ合う機会も楽しいです」。一方で、そうしたことが苦手な人もいます。近所付き合いや地域の行事といった目に見えにくい要素も、人によっては考慮しておきたいことだと言います。

ライフステージの変化に応じた計画を

ライフステージの変化に応じた計画を

候補地や仕事はさておき、自然豊かな地方で暮らしたい、東京暮らしから脱出したいなど、漠然と移住を考える人も多いようです。そういう人に遠山さんは、「まず、移住する目的を明確にしてほしい」と言います。「なぜ移住するのか、移住して何を求めるのか、そこを明確にすること。テレビで偶然見て気に入ったなど、漠然としたあこがれだけでは、うまくいきません。そして、どんな地域に移住するにしても、生活をしていくための収入源、つまり仕事について検討する必要があります。また、将来のことも大切です。若いうちだけなら自然に囲まれた暮らしは楽しくても、高齢になった時にどんな暮らしが待っているのか考えなくてはいけません」。例えば、離島に住みたいと思っても、医療施設がなければ、病気やけがをした時にどうするのかシミュレーションしなくてはいけませんし、子どもがいる場合は、保育園や小中学校、高校などの状況を事前に調べておくことも必要でしょう。

地方ならではの交通事情。二段階移住も視野に

地方ならではの交通事情。二段階移住も視野に

「地方の交通事情を理解していない人もいます。バスや鉄道などの公共交通機関が便利なのは一部の大都市だけです。仕事だけでなくスーパーマーケットや病院などに通うのも自動車がなくては不便という地域が多い。場合によっては家族それぞれの車が必要ですし、運転免許がない人は移住前に取得しなくてはいけません。高齢になって運転ができなくなった時、どうするのかも考えておきましょう」
移住するにあたって家を購入する人も多いのですが、遠山さんは初めは賃貸で暮らすことを勧めています。「移住して満足できればそれに越したことはないのですが、まったく知らない土地の場合、実際に住んでみると思っていたのと違った、こんなはずではなかったと後悔することもあります。そんな時、賃貸住宅であれば気軽にやり直せます」
都会暮らししかしたことがない人は、いきなり交通が不便で日常の買い物にも不自由するような暮らしは合わないかもしれません。そうした不安を持つ人に遠山さんは、「札幌や仙台、福岡などの都市部では、東京とあまり変わらない日常生活ができます。いったんそうした地方の大都市に住んでみて、慣れてからじっくりと、さらに地方での暮らしを検討するという方法もあります」と“二段階移住”を提案しています。

移住の目的を明確に、中長期的なプラン設計を

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移住の際の心構えについて、遠山さんは改めて次のように話します。「まずは、移住の目的を明確にすることです。親の介護のため、子どもをのびのびと育てたいため、自分の日々の暮らしのため。人によって目的はまったく違ってきます。次に、仕事をどうするか。それが決まったら収支バランスを検討します。そして、長く住み続ける場合には、老後の暮らし方も考える必要があります。一時的な補助金など移住者に対する支援策のある自治体がたくさんありますが、そうした目先のことにとらわれてはいけません。今は多くの地方都市が人口減に悩んでいて、移住者を歓迎しています。移住の意志が固まってから役場の担当部署を訪ねても、援助などについて丁寧に対応してくれるはずです。候補地が見つかったら、すぐに移住を決めてしまわず、教育や医療、買い物など日常生活をきちんと見極めるため、現地を何度か訪れることも大切。できるなら数日間でも実際に『お試し』で住んでみると、より具体的に地方暮らしを実感できるでしょう」


<取材先>
遠山有美子氏(地方移住・フリーランスのLife&Moneyコンサルタント、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、キャリアコンサルタント)


(2022年11月取材)



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