古民家暮らしの楽しみ方
新しい地域で、楽しく快適に住むため、物件は特に重要な要素です。賃貸や一戸建てなどに加えて、「古民家」も選択肢の1つです。
夫婦で富山県南砺市に移住し、築70年の古民家暮らしを楽しむ東山浩二さんに、お話をお聞きしました。
地方ならではの広さが古民家の魅力
2019年6月に富山に引っ越した東山さん。もともと名古屋で民泊を営んでいた東山さんは、富山のゲストハウスの管理人募集をSNSで見かけたことがきっかけで移住を検討。「妻は僕よりも田舎に行きたいという気持ちが強かったと思います。妻と一緒に現地の様子を見に行った際、めっちゃ天気が良くて、住んでもいいかも、と思いましたね 」と夫婦で移住することを決めた。
今住んでいる古民家は2年前に購入した。「近所の人が家を手放すことになり、声をかけてくれました。それまで家を買うということに現実味がなかったんですが、欲しいなって。実際、住んでいらしたので、見た目は生活できる状態でした」
「部屋はたぶん17~18部屋あるんです」と東山さん。「富山県の砺波地方って、家の敷地面積が日本でもトップレベルに広いエリアらしく、豪邸ではないですが、住宅がとても広い。まさに地方でしか巡り合えない物件です。さらに、価格も良心的で、都心の手狭な建売住宅を買うより、購入費も維持費も安いですね」
東山さん曰く、小さな子どもがいる子育て世代も一考の価値ありとのこと。
「隣と壁一枚という世界ではないので、子どもを無理に大人しくさせたりする必要がないのは大きなメリットです。こちらに引っ越してきて、子どもに注意する内容というのは、ものすごく環境に左右されていたということに気づきました。『玄関から飛び出さないで』『家の中で走らないで』『静かにして』……。こういった注意は、家が広いだけで、7~8割はなくなると思います」
建物の傷み具合もしっかりと確認することが重要
空き家等の対策を推進する国土交通省では、空き家の所有者・管理者に、水回りの設備、柱・はり、床・壁の破損や老朽化、屋根材や外装材の破損、庭の立木や雑草等の管理・確認を推奨しています。引っ越す前に東山さん自らチェックした結果、シロアリに食べられた柱が1本あり、専門業者に取り替えてもらったそうです。
「特に気になったのは、見えない箇所の傷み具合。実際に見に行った時に、家の土台、足元がシロアリにやられていないか、床下から潜らせてもらい確認しました。そもそもしっかりと住める状態なのか、確認したかったんです」
「リノベーションは自分でもやっています。1人でやっていると寂しくなっちゃうので、近所の友だちに手伝ってもらって喋りながら作業して、こんなものがあったら便利かも、と思うものを足していっています。整理整頓が苦手なので、子どもたちの分も含めて個人のロッカーをつくろうかな」
古民家との楽しい付き合い方を心得ているようです。
富山県南砺市は周囲にスキー場や温泉がある、どちらかというと寒い地域。古民家だと隙間風も気になります。「家の構造がシンプルになればシンプルになるほど、煙突のように冷たい空気を下から寄せ集めて上から放出していくので、上を塞ぐのか下を塞ぐのか、そういうことも素人なりにいろいろ考えてやっています」
自然との折り合いを付けながら、自然を楽しむ暮らし。「家のすぐ近くには大きな池もあり、新緑、紅葉と木々が四季の移ろいを感じさせてくれます。通勤の道中も気持ちいい」と東山さん。もうこの土地を捨てることはない、と感じるほど、愛着が湧いてきているそうです。
古民家暮らしの不便さも楽しんで
東山さんが、古民家暮らしを検討している人にアドバイスすることはなんでしょうか?
「不便を楽しめる人が向いています。確実に新築よりも手がかかるので。なぜ新築じゃなくて古民家に住みたいのか、古民家をリフォームしたいのか、ということを考えておけば、ストレスはないんじゃないかな、と思います」
暑さ寒さが厳しい地方もありますが、「古民家」ならではの趣と自然を感じる暮らしを、選択肢のひとつに加えてみては?
(参考)8割以上の市区町村は、空き家等の利活用を推進
住宅・土地統計調査(総務省)などをまとめた『空き家対策の現状と課題及び検討の方向性』(国土交通省住宅局 令和4年10月)によると、空き家の総数は、この20年で約1.5倍(576 万戸から849万戸)に増加。別荘などの二次的利用、賃貸や売却用の住宅を除いた、転居や入院などで長期にわたって不在の「その他空き家」(349万戸)はこの20年で約1.9倍に増加しています。
空き家の取得経緯は相続が55%で、所有者の約3割は遠隔地(車・電車等で1時間超)に居住。その対策として、8割以上の市区町村で、「移住・定住」や「二地域居住」の促進など、空き家等の利活用に関しての取組を実施しています。
(2024年3月作成)