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COLUMN移住に関するコラム

都市と地方を自由に行き来する「二地域居住」 実現可能なライフスタイルに!

都市と地方を自由に行き来する「二地域居住」 実現可能なライフスタイルに!

都市と地方にそれぞれ拠点を持ち、自由に行き来して生活する「二地域居住」が今、注目されています。生活基盤を完全に移す「移住」よりもハードルが低いことが特徴で、リモートワークが普及したことにより、実現可能なライフスタイルとなりつつあります。二地域居住を後押しする「改正広域的地域活性化基盤整備法」(二地域居住促進法)も令和6年11月に施行されました。二地域居住のメリットや課題を考えつつ、法律改正のポイントをご紹介します。

二地域居住とは、主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点(ホテル等も含む)を設ける暮らし方です。豊かな自然や食、レジャーなど地方の魅力と、都会の便利さの両方を享受できることで、新たな暮らし方や働き方を実現することができます。また、自然災害やコロナ禍のような突発的な危機や変動が起きたときに、普段から行き来している地域へ避難できることも大きなメリットです。

社会的には、都市から地方への人の流れを生むことで、地域の担い手の確保や消費等の需要の創出、新たなビジネスや後継者の確保、雇用創出等が見込まれます。地方だけでなく、都市部にもメリットがあり、過密を避けつつ、人の交流を通じて地方の多様な自然や文化を吸収することで、国際競争力の強化が期待できます。

実際、二地域居住や地方移住への関心は高まっています。国土交通省の二地域居住に関するアンケート調査(令和4年8月実施)では、「条件が許せば二地域居住等を行いたいと思う」などの「関心層」が3割近くに上っています。また、別の調査では、20歳代の「地方移住への関心」は2020年では39%だったのに対し、2023年には45%に上昇しました。

二地域居住への関心
地方移住への関心(20歳代)

国全体の人口減少…二地域居住が地方活性化のカギに

政府が二地域居住の促進に力を入れるようになった背景には、国全体の人口減少があります。地方への移住政策だけでは、自治体間で限られたパイの奪い合いになり、すべての地域で定住人口を増やすことはできません。さらに、地方では人手不足が深刻化しており、二地域居住をする人たちに、地方で生活する期間、様々な役割を担ってもらうことで、持続可能な地域づくりを目指すことができます。そこで二地域居住が地方活性化のカギとして期待されているのです。

二地域居住向け住宅や施設整備の要件が緩和

二地域居住促進に関する、主に3つの新しい施策が導入され、自治体が二地域居住を促進しやすくなりました。

■ 市町村計画制度

市町村が「特定居住促進計画」を作成できるようになりました。この計画には二地域居住促進の基本方針や計画地域などの整備計画が盛り込まれます。計画地域に指定されると、住居専用地域の用途制限が緩和され、二地域居住者用の住宅やコワーキングスペース(机・椅子や会議室などを共有して、利用者が各自の作業を行うための施設)の建設、空き家の改修・転用ができるようになります。

二地域居住者用の住宅やコワーキングスペース

■ 特定居住支援法人の指定制度

市町村長が二地域居住促進に取り組むNPO法人や民間企業などを、「二地域居住等支援法人」に指定できるようになります。これにより、空き家や仕事、地域のイベント情報の提供など、二地域居住をサポートする活動に対して法的な支援が受けられるようになります。

■ 協議会制度

市町村や支援法人、地域住民などが連携して、二地域居住の促進に関する協議を行う「二地域居住等促進協議会」が組織できるようになります。

課題検討・解決に向けた官民連携コンソーシアムも設立

私たちが実際に二地域居住のライフスタイルを選択するには様々な課題があります。地方で暮らす住宅の借り入れや購入費用、往復の交通費などのお金の問題のほか、地方での仕事や教育、医療体制なども求められます。こうした課題を集約、研究して、政策提言などを行う組織として、2024年10月末には「全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム」が発足しました。発足時点で709の自治体と、交通や教育、不動産関連など197の企業・団体が参加しています。自治体と二地域居住向けの民間サービスをつなぎ、まずは、二地域を行き来する航空運賃の定額サービスや、子どもが地方で保育園や学校に通える仕組みづくりを検討する方針です。

「全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム」キックオフイベントであいさつする斉藤鉄夫・国土交通大臣。
「全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム」キックオフイベントであいさつする斉藤鉄夫・国土交通大臣。
キックオフイベントには自治体や企業・団体の関係者が多数参加した。
キックオフイベントには自治体や企業・団体の関係者が多数参加した。

国土交通省は、改正法施行後に特定居住支援法人などになり得るモデル的な先行事例として、令和6年度は9件の取り組みを採択し、支援していています。その1つ、北海道厚沢部町(あっさぶちょう)では、①余剰定員枠を活用した認定こども園での子どもの一時預かり事業、②空き家等を活用した移住体験住宅でのワーケーション、③農作物の収穫体験など地元の暮らし体験プログラムを「保育園留学」という形でパッケージ化、を実施しています。これらを推進するため、自治体、認定こども園、地域づくり団体、商工会、観光協会、農協等が連携してコンソーシアムを形成。官民が連携して二地域居住の相談のワンストップ窓口を設置し、住まい・仕事・コミュニティに関するサービスの提供を進めています。

北海道厚沢部町の認定こども園「はぜる」では、余剰定員枠を活用した子どもの一時預かり事業が行われている。
北海道厚沢部町の認定こども園「はぜる」では、余剰定員枠を活用した子どもの一時預かり事業が行われている。

暮らし方にも多様性、二地域居住が当たり前の社会目指す

二地域居住は完全な移住ではないので、地方で過ごす期間も週に2日、月に1日、あるいは特定の季節など、人それぞれです。地域への溶け込み方もそれぞれで、例えば、祭りなどの行事への参加や、地域独自の習慣に従うかどうかも、その人の考え方次第になってきます。地方でも、こうした暮らし方の多様性を受け入れていくことが、都市からの二地域居住や移住のハードルを下げることにつながります。

「豊かな自然の中で暮らしたい」「新たな出会いや体験を得たい」など、二地域居住の目的は様々ですが、現実的な問題として、親の介護などの理由で二地域居住を望む人も少なくないはずです。法律の改正で、国が二地域居住を促進する姿勢を打ち出したことは、希望する人が誰でも二地域居住を選択できるようになる社会に向けて、大きな一歩を踏み出したと言えるでしょう。

(2025年1月作成)



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