「お手伝い旅」で地域を体感! 地方移住のきっかけに
旅感覚の移住体験
空気がきれいで自然豊かな地方に住んでみたいと漠然と思っても、いきなり知らない土地に移住するのは勇気がいることでしょう。何より、思い切って移住はしたものの、「こんなはずじゃなかった」と後悔するようなことは避けたいものです。ならば、気になる地域でお手伝い(仕事)をしながら、短期間の地方暮らしを旅感覚で体験してみてはいかがでしょうか。マッチングサービスの一つ「おてつたび」は、収穫期の農家や繁忙期の旅館など、特定の期間に人材を確保したい地方の受け入れ事業者が、期間と時給を決めて人を募集し、参加者が、やりたい仕事や行きたい場所を選んで申し込む仕組み。期間は1週間から10日間程度が多いですが、日帰りや長いものでは2か月などさまざま。ウェブサイトで手軽にマッチングできるとあって利用者は年々増え、今では全国47都道府県すべてに受け入れ先があり、登録者数は約3万人に達しています。
働きながら地域の魅力に気づくかも?
- 交通費や宿泊費の負担を減らし、魅力あふれる地域を知るきっかけづくり
- おてつたび代表の永岡里菜さんは、コンサルティング会社に勤めていたときに農林水産省の和食推進事業を担当し、全国各地に出張したことがありました。その際、あまり知られていなくても魅力ある地域がたくさんあることに気づいたそうです。「魅力があるのに旅先として選ばれにくい地域と、知らない地域に行きたい若者をつなげられないか。そこで思いついたのが、『お手伝い』+『旅』=『おてつたび』でした。人手不足に困っている地方の事業者と、働きながら旅をしたい人を、ウェブサイトを通じてマッチングする。若い人から見れば、知らない地域に行くきっかけはなかなかないし、そういう地域は交通費が意外と高くつくので、お手伝いを目的に地域を訪れるおてつたびなら、仕事の報酬を得て宿泊費も節約でき、リーズナブルに旅ができます。小さな一歩で地方暮らしをお試し体験できるのが魅力です」
- 若者からシニアまで、幅広い年齢層から支持
- 広報担当の園田稚彩さんによると、登録者のうち実際に参加した人の約6割が10代、20代。コロナ禍以降ではフリーランスなど社会人、シニアの利用も増えているといいます。その理由として、▽働き方が多様化している▽コロナ禍で海外に行きにくい期間があり、国内に目を向けるようになった▽都市部から地方へ移住先を探す目的で利用する人も増えた――などが挙げられると話します。「特に、全国旅行割などが始まって観光客が増えたことから、観光関係の人手不足が拡大していることも利用者増につながっています。急に忙しくなったものの、先行きが不透明で、長期雇用が難しいという事業者が多く、繁忙期のみ短期間で人材を確保するために募集するケースが多くなっています」
お手伝い旅で地域も参加者もwin&win
参加者からは、「知らなかった地域を知ることができてよかった」「経験したことがない仕事を体験でき、人生の選択肢が増えた」などという感想がありました。一方で、受け入れ事業者からも、「地域内で求人してもなかなか集まらなかったが、全国から応募が来た」「お手伝いに来た人から新しい意見やアイデアが出て、刺激になった」などと好意的な声が多いといいます。
お手伝い旅をきっかけに、その土地が気に入り、移住したという人もいるそう。講義がすべてオンラインになってキャンパスに行く必要がなくなった大学生が、お手伝い旅参加をきっかけに「もう少し長く居たい」と半年間の“プチ移住”をしたというケースもあります。移住したのは日本人だけにとどまらず、広島県のワイナリーに4日間のお手伝い旅をしたベルギーからの留学生は、すっかり土地の景色と人情が気に入り、そのワイナリーに就職することを決めたそうです。
園田さんは、「いきなり知らない場所に移住するのはハードルが高いですが、おてつたびだと気軽に地方を体験することができます。仕事を継続する人もいれば、別の地域で違う仕事をする人もいます。移住する・しないにかかわらず、知らない仕事や地域を知ることで、人生の幅が広がったという人が多いです。利用者には日本各地のさまざまな地域の魅力をもっと知ってもらいたいです。そして、若い人たちが地方で活動することで、地域の活性化につながれば良いなと思います」と話しました。
(2022年11月取材)