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COLUMN移住に関するコラム

「山梨移住」推進で地銀が県とタッグ。危機感と使命感から自ら動く

地方への移住に感心が集まる中でも、いざ実行しようとすると、「資金面で大丈夫なのだろうか」「地域のコミュニティーになじめるのだろうか」という心配があって、躊躇するケースも少なくありません。こうした中、地方銀行は移住を後押しする支援策を展開しています。その一つ、山梨県を地盤とする山梨中央銀行は県とタッグを組んで、主に首都圏をターゲットとした移住事業を推し進めてきました。「地域を元気にするのは『地銀の使命』だから」(移住を担当する行員)との思いが行内で強まっているといいます。

ローン条件を緩和 県の認定受ければ金利優遇も

東京都の隣県である山梨県でも人口減少は深刻で、2000年に88万8,172人だったのが、2025年は78万3,870人と、この間に10万人以上減りました(共に10月1日時点)。山梨県唯一の地銀で地域経済の大車輪である山梨中銀は「官民で取り組まなければ解決しない課題」と捉え、2015年に県と人口確保に関する連携協定を結んで山梨への移住を促す事業を展開してきました。

山梨県の人口推移(各年10月1日時点。県資料より作成)

山梨中銀は他の地銀と異なり、東京都内に10か所以上の豊富な店舗網を持っています。こうした顧客インフラをいかし、都内の各支店長が山梨県から「山梨移住アドバイザー」に任命を受け、「やまなし移住相談窓口」を開設。都心から近いのに地価が安いというメリットを前面に打ち出し、訪れた人を県の窓口へと繋ぐ役割を担っています。移住を希望する都内の人にとっては、相談のために気軽に立ち寄れる点がメリットです。

移住するハードルの一つは、住宅や生活関連費用の負担が大きいことです。山梨中銀は得意分野である多様な金融サービスを提供しています。このうち「移住応援ローン(移住専用住宅ローン)」は、通常は会社などでの勤続年数の記載が申請の条件になっているところを不問にし、山梨で働いたばかりの人でも活用できるようにしました。また、今までの生活も続けざるをえない人向けに、「セカンドハウスローン」も実施しています。県が「二拠点居住者」と認定すれば、住民票をはじめ山梨県に住んでいる証明が不要で、さらに通常よりも金利面で優遇されます。

このほか、「公益財団法人山梨中央銀行地方創生基金」は、U(故郷に戻る)・I(故郷ではなくても転居する)・J(故郷から近い場所に転居する)の各ターンで山梨県内の中小企業に就職する人に対し、毎年度10人想定で30万円を上限に助成金しています。U・I・Jターンをしたい学生を含む個人を資金支援することで、実行を促し、地域の社会、経済の活性化につなげる狙いがあります。具体的な対象者は、県内の中小企業へ新たに就職し、県内に居住する個人です。助成は累計で180先、計3,540万円に達しており、「新しい生活をスタートするために助成金は非常にありがたい」という声が挙がっているとのことです。

「移住応援ローン」のポイント(山梨中銀HPより)

静岡・長野県の地銀と提携 移住以外も共同で

地方公共団体との連携は県だけにとどまりません。県内10超の基礎自治体と歩調を合わせて移住事業を展開しており、例えば避暑地・清里で有名な北杜市をはじめとする19市町村と、移住者に対する住宅支援として、市町村が補助金、銀行が金利優遇という「互いに移住者へのメリットを提供する」策を実施しています。県の枠組みを超えた広域での取り組みも始まりました。

2025年には、共に隣県で中部横断自動車道の開通により人的、物的交流が活発になっている静岡県の静岡銀行、長野県の八十二長野銀行と包括業務提携を結びました。この「富士山・アルプス アライアンス 移住促進プロジェクト」は、移住に関する共通のローン支援だけではありません。地域企業への人材紹介に取り組む民間企業と提携し、3県への就職を希望する人と各地場企業とのマッチング事業も開始。これによって、移住希望者にとって重要である就労の心配を和らげるだけでなく、選択肢も広げています。

「地域を活性化したい」 まずチャレンジ

山梨中銀をはじめ地銀が移住を強化する理由は何でしょうか。多くが金利の上昇局面により収益が改善されたとはいえ、人口減少は大きな懸念材料です。消費者や労働者が少なくなれば地域企業の活動は鈍化し、経済の地盤沈下を招きます。地銀にとって重要な顧客基盤が揺らぐことになるのです。

ただ、経営的な側面だけにとどまりません。山梨中銀地方創生推進部で担当部長兼公務推進室室長を務める長田武生さんは「金融業だからという視点とは別に、地域を活性化したい、地域のために何かをやりたいという行員は多く、知恵を絞っています」と語ります。人口減少に直面したことで、地域住民と企業は、単なる顧客という枠組みを超えた存在であることが改めて認識されていると言えます。

こうした中で、山梨中銀内は、東京の支店網が集めた企業情報を山梨県内の企業とマッチングさせるために柔軟に利用できる仕組みを作りました。また、山梨県が2023年に「人口減少危機突破宣言」を発令した際は早速、管理職を派遣。職員らとの二人三脚で人口の自然増につながる施策を進めています。「富士山の近くに住んでみたい」という人々にとっても、こうした取り組みを知ることは大きな判断材料になります。

粘り強く情報発信 リニア開業にも期待

金融機関は移住促進策を一段と進めるために、模索を続けています。大都市圏は賃金を含めた就業の選択肢が多く、充実した交通網、教育や衣食住、娯楽といった生活インフラも地方よりも充実しています。山梨中銀地方創生推進部公務推進室室長代理の古屋利行さんは、「促進策はまだ『認知のフェーズ』」と分析したうえで、「移住者による正しい情報発信で多くの人の共感を得ることが大事だと思います。3行のアライアンスを通じて、住宅ローン優遇をはじめ移住がメリットになる策を深掘りし、潜在的な希望者にアプローチするのがベストと思います」と述べました。2027年以降に開業が予定されるリニア中央新幹線は地価が高騰する首都圏からの移住を促す大きな追い風として期待されています。東京の品川駅から甲府駅まではわずか約25分。通勤圏としては十分です。

金融機関による同様の事業は他の地銀にも広がっています。全国地方銀行協会が2024年にまとめた「地方銀行における地方創生への取り組み」によると、複数の銀行が地域の中小企業と多様な働き方、活躍機会を求める都市部などに住む人々をマッチングさせる事業を展開しています。資金面だけでない多様な取り組みによって、移住のハードルは低くなっているのです。

山梨中銀は山梨県の立地メリットをアピールする(山梨中銀HPより)

(2026年2月作成)



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