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LIFE STYLE移住者の暮らし

起業の場としてもローカルは十分に魅力的

早坂 正年さん

PROFILE
早坂 正年さん

早坂 正年さん

愛知県出身。2009年から東京都・宮城県仙台市の2拠点生活、2011年に宮城県大崎市に移住。

  • 移住時の年代:30代
  • 家族構成:妻、子供2人
  • 移住スタイル:Iターン
  • 職業:デザイン企画会社代表

元理髪店だった一軒家を
リノベしてオフィスに

ここ、いくらで借りていると思います?――。真っ白な壁に埋め込まれた無垢(むく)の木材がインテリアのアクセントになったオフィスで、早坂正年さんはそう問いかけてきた。広々とした空間にデスクが整然と並び、東京・渋谷あたりのITベンチャーのオフィスを思わせる。

答えあぐねていると、「実は月1万円なんです」と早坂さんが笑いながら教えてくれた。
宮城県大崎市の岩出山地区。東北新幹線が止まるJR古川駅から、車で約20分の場所に2014年、デザイン企画会社「ブルーファーム」を設立した。元理髪店だった2階建ての一軒家を見つけ、そこを改装してオフィスに。

デザイン企画会社「ブルーファーム」のオフィスで打ち合わせ

高校まで愛知県のサラリーマン家庭に育ち、写真に興味を持って山形市にある東北芸術工科大学に進学。そこでデザインを中心とした企画立案の実務を学び、東京に本社のある大手カタログギフト通販会社に就職し、バイヤーとして全国を駆け回り、各地の特産品を扱った。その経験を生かそうと退職金の300万円を資本金に起業した。

しかし、なぜ大崎市? 大学在学中にアルバイト先で大崎市出身の妻と出会い、09年に結婚。妻が兼業農家の長女だったこともあり、婿に入った。11年3月11日の東日本大震災を機に妻の実家で農業を手伝いながら生活するように。それから2年後に起業した。

経営を助ける地方の
ランニングコストの安さ

「八百屋とデザイン事務所の融合」を旗印に、東北地方を中心とした農産物を都会に売り込んだ。最初の仕事が、山形県南部で収穫した特別栽培米を都心の外資系高級ホテルに売り込むことだった。「東北の食材にはとてつもない潜在力がある。その魅力をデザインの力を借りて、世の中にアピールするのが僕たちの仕事だと思っています」と早坂さんは話す。

海で撮影の仕事中の早坂さん

今ではプロジェクトごとに委託する仲間を含めて10人前後スタッフを抱え、年間売り上げを伸ばしている。

もっとも、最初から順調だったわけではない。さまざまな出費がかさみ、資本金は半年ほどで底をついてしまった。「それでも事業を続けてこられたのは、岩出山地区で起業したから」。事務所の家賃が月1万円と会社のランニングコストが格段に安く済んだことが大きかった。もし、首都圏や仙台などの大都市で起業していたら、数十万円かかるオフィスの家賃だけでギブアップしていたかもしれないという。新型コロナウイルスの感染拡大で仕事が全く入らなくなった時期も、経営の先行きを悲観することはなかった。

「実家が農家なので、最低限食べるものには困りませんから」。むしろ、岩出山地区という田舎で起業したからこそ、自分たちの仕事が埋没せず、都会の取引相手にも見つけてもらいやすかった。ローカルであることが経営の上でも重要な武器となった。

会社のメンバーと集合写真

東北が秘めている魅力を
体験してもらう機会を

経営に加え、近年は地域振興にも力を入れている。たとえば、大崎市内にある鳴子温泉で18年から始めた「農ドブル」という取り組み。「農家」と「オードブル」をかけ合わせた造語で、岩出山地区で収穫した野菜や米を、それを育てた農家が調理して宿泊客に振る舞う。「食材の魅力を直接伝える試みです」。さらに宿泊客が生産者を訪ね、収穫などの農業体験をする「ランチ農ドブル」も行っている。

さらに宮城県内にある家具メーカーと組み、宮城県産の木材を使ったテーブルや食器の生産も企画中だ。安価な外国産木材に圧倒されている今、国産材の魅力を伝えるのが目的。地元産の食材に加え、食器や家具を地元のものにすることで、東北の食を文化として体験してもらえる。知らない人には体験してもらうのが手っ取り早いPRになる。

地元の人たちと集合写真

「移住もそう」と早坂さんは話す。移住を考えている人に、1週間なり1か月なり、早坂さんの地元で暮らしてもらう。「そうすれば、ローカルの生活がいかにお金を必要とせず、都会では経験できない生活を送れるかに気づいてもらうことができる」。そうした安価に長期滞在できる場を地元につくれないか、早坂さんの魅力発信の試みは次のステージに向けて広がっている。

(2020年9月10日取材)

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