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LIFE STYLE移住者の暮らし

移住先で蔵をサウナに 全国の地域再生に貢献したい

丸山 耕佑さん

PROFILE
丸山 耕佑さんの写真

丸山 耕佑さん

福岡県北九州市出身。2016年10月に東京都世田谷区から岡山県美作市に移住。

  • 移住時の年代:30代
  • 家族構成:妻、子ども1人
  • 移住スタイル:Iターン
  • 職業:一級建築士

自分が住む町で、そこに住む人たちのための建物を

岡山県の北東部、兵庫県との県境に位置する岡山県美作市に、古民家の蔵を改修したサウナがある。ゲストハウスに隣接していて、宿泊者はサウナを楽しむことができる。このゲストハウスとサウナを手掛け、運営しているのが、2016年10月に同市へ移住した一級建築士の丸山耕佑さんだ。
北九州市出身の丸山さんは、大学卒業後、東京の建築設計事務所に就職し上京した。「東京の設計事務所では、主に一般住宅や店舗の設計をしていました。地方の公共施設建設のコンペティションに参加することもあり、あるコンペティションの最終選考で、審査員から『東京から来てくれるのはありがたいけど、終わったら戻るんでしょう』と言われたんです。それがずっと頭に残っていて、いずれは、自分が住む町でそこで暮らすみんなのために建物を建てる仕事をしたい、と思い始めました。また、東日本大震災をきっかけに、住み方そのものを変えてみようと、具体的に地方移住を考えるようになりました」

古民家を改修した店内の様子

いきなり飛び込んだイベントで同世代の活力に感化

岡山県とは縁もゆかりもなかったが、2013年に美作市で開かれた「山村ワーキングホリデー」という催しに知り合いの薦めで参加して、初めてこの地と出会ったそうだ。1週間ほど同市の山間部に滞在し、田植えや古民家改修をはじめとした田舎の暮らしを体験するプログラムだった。
当時は今ほど「移住」がポピュラーではなく、移住に関する情報をどこで調べたら良いのかわからなかった。「今思えば、どの地域が移住に適しているかという先入観を持たずに、とりあえずイベントに飛び込んだのが良かったのかもしれません。情報を調べるだけでは美作市にたどり着けなかったと思います。そのイベントを企画・運営していたのは、美作市の地域おこし協力隊の、大学を卒業して間もないような若い人達で。いろんなことにエネルギッシュに挑戦していて、この人達に感化されました」。また、このイベントへの参加をきっかけに、先に大阪から移住していた同年代の友人ができたことも、移住する気持ちを後押ししたそうだ。

「山村ワーキングホリデー」の様子

蔵をサウナに改造 人々のコミュニケーションツールに

「設計事務所を辞めて移住をしようと決意してから、準備に3年かかりました。当時はまだ一級建築士の資格は持っていなかったので、まず、資格を取ることを目標にしました。先に移住すると勉強する時間が取れないだろうと思ったので」と語る。そして、準備期間中に美作市が地域おこし協力隊を募集していることを知った。募集要件に「空き家管理・活用ができる人」との記載があり、「これなら資格を活かせそうだ」と思い応募したところ採用され、美作市への移住が決まった。
移住先は、住民30人ほどの限界集落。住民のほとんどが65歳以上の高齢者だった。丸山さんは、「美作市は、冬になると雪が降ってとても寒い。ほとんど人も歩かないような地域なんです。冬の間も、気持ちが前向きになって、人々がコミュニケーションをとれるような方法はないだろうかと思いました」と話す。
「近所の使われていない蔵が目に留まりました。日本の蔵は内部が密閉されてるため、断熱性があります。調べるうちに、この構造はフィンランドのサウナに似ていることに気づきました。北欧では、サウナが冬のコミュニケーションツールになっていることを知っていたので、蔵をサウナにできれば、地域の交流の場として良いのでは、と思いました」。サウナを作った経験はなかったが、蔵の所有者だった大家と、近所に住む住民に声をかけて3人で作り始めた。

サウナを作っている様子

全国各地で地域性を活かした再生を手がける

2018年の暮れにサウナが完成。「本当にサウナができるかどうか半信半疑だった地域の人たちも来てくれて、すごく好評でしたね」と丸山さん。
古い蔵を再利用したサウナの成功は思わぬ反響を呼んだ。全国各地から、古民家や蔵を改修、再生する設計の依頼が来るようになったのだ。地域おこし協力隊を2年半務めた後、市職員として2年間働いていたが、次第に設計の仕事が増え、設計と宿の仕事で収入の目処が立ち、個人の一級建築士事務所を開設した。「使われなくなった古民家や蔵は、全国各地に数えきれないほどあります。それぞれの地域性を考えて、地域にあった再生方法を考えています」と丸山さんは話す。

古い蔵を再利用したサウナの外観

課題や壁も味わいながら乗り越える

移住した当初は独身だった丸山さん。「何のしがらみも縛りもなかったので、新たな土地へ気軽に飛び込むことができました。妻とは、先に移住していた友人の紹介で出会いました」
結婚後、妻は、大阪で「あんこ」(餡)の卸業をしていた経験を活かし、市内で喫茶店を始めた。そして今年(2024年)2月には娘が産まれた。「自営業なので、自由にスケジュールを組めます。家族ともゆったりとした暮らしをすることができ、充実した日々を過ごしています。娘が産まれたことで、これまでとは違う課題や壁にぶつかることもあると思いますが、それも家族一丸となって味わいながら乗り越えたいです」
丸山さんは移住をすることについて、「私自身は何の情報もなく飛び込んだのですが、これから移住しようという人は、先に移住している人の意見を聞いてみると良いと思います。長く住んでいる人は、その土地の良い面も悪い面もわかっていますからね。また、移住者が長く住み続けているところは、その地域が暮らしやすいという証拠の1つかもしれません。移住先の候補にするポイントになると思います」と話している。

集落の方々と丸山さん

(2024年2月13日取材)

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