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LIFE STYLE移住者の暮らし

生産地で見つけたデザインの楽しみ

田辺 絢子さん

PROFILE
田辺 絢子さん

田辺 絢子さん

東京都文京区出身。2019年2月に東京都から兵庫県西脇市に移住。

  • 移住時の年代:20代
  • 家族構成:独身
  • 移住スタイル:Iターン
  • 職業:会社員

地方には全く縁がなかったが…

「これまで地方に住みたいと思ったことはありませんでした。東京では移動が公共交通機関だけで事足りるので、自動車運転免許もこの先取ることがないかなと思っていました」
田辺さん自身も両親も東京生まれで、地方にはまったく縁がなかった。
美術系大学でテキスタイルを学び、素材から発想するものづくりにも理解を深め、卒業後はアパレル生産会社などに勤務していたが、改めて、洋服作りを素材のデザインから手掛けることができる仕事に就きたいと考えていた。
また、海外旅行に行ったときに、大量の洋服がゴミ袋に入れられてゴミのように売られているのを見てショックを受けたそうだ。日本でもワンシーズン、ツーシーズン着たら捨てられる洋服があるという現実を目の当たりにして、長く大切に着てもらえる服を作りたいという思いも募らせたという。
「そこで、会社を辞めて繊維の生産地のことを学ぶ学校に通いました。生産地のことを知らずにデザインはできないと思ったんです。そこからどんどん生産工程の川上に意識が向き始めて、生産地により近いところでものづくりをしたいと考えるようになったんです」
折しもコロナ禍で、自身の価値観や東京にいる必要性を考え直すきっかけにもなった。やりたい仕事をやろうと決意し、200年以上の歴史を持つ播州織の産地である兵庫県西脇市へ移住。繊維会社にデザイナーとして入社した。

仕事の様子

畑でコットンの収穫も

播州織は“先染め”と呼ばれる技法で生地を作る。先に綿などの糸を染めてから織るため、織り上がった生地を染める“生地染め”より多くのバリエーションができるという。
「西脇市は1970年代、輸出も盛んな大量生産の街だったのですが、効率化を図るために街全体で分業制をとり、今でもそれが受け継がれている点が面白いなと思いました。ものづくりの現場の後継者不足は深刻ですが、播州織を盛り上げていこうと、私の会社を含めたいくつかの西脇ブランドが発信を続けています」
西脇市は播州織を起点とした地方創生として「西脇ファッション都市構想」を策定している。『ファッションを志す若者が「訪れてみたくなる」「働いてみたくなる」「住みたくなる」まち』の実現を目指しており、繊維関係の仕事に就いている若者が多い。市が主催する服飾関係のセミナーや、コットンを育てる会で出会った方、移住してきた若いデザイナーなど、さまざまな方との交流機会があるそうだ。
「各生産地で、現場で働く職人さんを必要としていますが、その中でも西脇市は、生産物を生かすデザイナーの必要性を感じていると思いました。自分たちが普段着ている洋服の原料となる綿花を育てる活動にも参加しています。そこでは畑で採れたコットンで手拭いを作ったりしています。それに、県外から移住してきたデザイナーと交流することも、とても刺激になります」
繊維関係の若手たちが中心となり、地元の人たちが昔から繋いできた綿の種を引き継いで育てているという。

収穫したコットン

市街地から、もっと自然豊かな地へ

東京の実家近辺は都会の住宅地で、その中に住んでいた。今は、隣がスーパーマーケット、会社からも徒歩約5分の西脇の市街地に住み、3年になる。
「初めての地方での一人暮らしですし、車もなかったので、市街地を離れて生活するには不安がありました。でも、自動車運転免許を取得し、車も手に入れたので、もうちょっと市街地を離れて自然に囲まれた場所に住むのもいいかなと思っています。今はベランダで家庭菜園をしていますが、もっと広い畑で野菜を育てたいです。美味しい焼菓子が手に入る店になかなか出会えなくても、自分で作ったり、足を延ばして京都のお店に行ったりして、仕事以外も充実しています。こちらには東京にないお店があるのも新鮮で、そういうところに遊びに行きたいですね」

遠出時の風景

不便だからこそ楽しい発見がある

西脇市では電車やバスの本数が少なく、交通は不便だ。ただ、そこにも楽しむ要素はあると田辺さんは話す。
「都会から移住すると、親しかった友人との距離が遠くなって寂しいと思うことや、何もなくてつまらないと思うこともあるかもしれません。でも私は、ないものは作ろうというマインドで逆に楽しく過ごしています。不便を嘆くという価値観ではなく、便利なことだけが本当にいいのかと問える人が田舎暮らしには向いているように思いますし、不便だからこそ新たな発見をしていけるのでは、と考えています」

西脇市の風景

(2022年12月12日取材)

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