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LIFE STYLE移住者の暮らし

「自分がどうありたいか」を大切に、心地よい幸せを

桐山 尚子さん

PROFILE
桐山 尚子さんの写真

桐山 尚子さん

埼玉県越谷市出身。2017年4月に越谷市から島根県松江市に移住。

  • 移住時の年代:30代
  • 家族構成:独身
  • 移住スタイル:Iターン
  • 職業:個人事業主

旅先で出会った文化的で自然豊かな松江の魅力

「不昧(ふまい)」と号した藩主、松平治郷の治世によって栄え、京都や金沢のように文化的な洗練を重ねてきた島根県松江市。国宝である松江城の城下では、不昧公が夢中になった茶道が今も盛んで、それに関わる老舗の和菓子店が多く、国内外から観光客を引き付けている。「伝統が現代に引き継がれ、カフェやベーカリーのレベルが高く、ユニークな近代建築が市内に数多く点在しています。文化も大切にする思いの強さに加え、多彩な自然に恵まれていることも、この地域の大きな魅力だと思います」と桐山さんは話す。
桐山さんは埼玉で生まれ育った都会っ子。大学卒業後は、海外の雑貨などを扱う東京の商社に就職。平日は仕事で慌ただしく駆けまわり、休日は全国各地を旅してリフレッシュする日々を過ごしていた。2014年に島根を訪れた際は、JR松江駅から南西に2駅下り、宍道湖沿いにある玉造温泉の旅館に泊まった。「そこの朝食で出された、仁多米のご飯と宍道湖産のシジミのお味噌汁のおいしいこと!身体に染みわたるような味わいに感激しました」。島根県とは縁もゆかりもなかったが、「ここで暮らせたら幸せだろうな」と漠然と思ったという。

島根県松江市の風景

移住イベントへの参加で現地の熱量を実感

勤め先では、若くしてマネージメントを任されるなど、仕事は楽しくやりがいもあったが、ハードワークが重なって体調を崩し、2015年に退社。都内の職業訓練校に通って、ウェブデザインなどを学びながら新しい人生を模索する日々の中で、心の中にずっと残っていた「松江」への関心が高まっていった。「これからは自分の生活も大切にしながら働ける場所で暮らしたいと考えていた時に、松江という街が自然に浮かんできました。東京で行われた『しまねUターンIターンフェア』などのイベントに軽い気持ちで顔を出すうち、松江市の担当者や移住促進の関係者の思いの強さに心を打たれました」。その後、松江市の地域おこし協力隊として、2017年4月に赴任した。現地に親戚や知人はいなかったが、赴任前からイベントで知り合った方に県内のキーパーソンを芋づる式に紹介してもらい、赴任する際には60人近い人たちと知り合いになっていた。「心細さより、この人たちと一緒にこの地域の未来に笑顔を増やす活動をしてみたい」と桐山さんは思ったという。

島根県松江市の方々

試行錯誤しながら多彩な取組に挑戦

地域おこし協力隊では、地域の課題やテーマを自ら見つけ、自由に活動に取り組む「フリーミッション型」の採用だった。赴任当初は「自分は何がしたいのか」「何をやるべきか」と悩むこともあり、人間関係の摩擦もあったという。それでも、周りの人たちに相談したり、小学校で行う起業家育成事業の講師を任されたりするうちに、人と関わることの面白さを発見できたという。2年目からは、地元産のオーガニックのお茶の販売促進に関わりながら、築100年の古民家をリノベーションするプロジェクトに挑戦。2019年6月、シェアオフィス、チャレンジカフェ、チャレンジショップ、ゲストハウスを兼ね備えた多創造複合施設として蘇らせた。この施設では、起業を目指す人に食事提供や物品販売の場を提供したり、イベントスペースを提供したり、「都会と地方をつなぐ」拠点となることを目指して、地域の新しい取組を応援している。

古民家をリノベーションした多創造複合施設

「スペック軸」から「人軸」を重視した移住が叶った

その後もキャリア教育や移住促進などに取り組み、任期満了後の2020年4月からは、個人事業主として、市役所で人材活用の仕事を手伝ったり、学校でSDGsをテーマに授業を行ったり、松江を拠点に多彩な活動を続けてきた。次は、教育機関、民間企業、学生、そして地域の人を結びつける新しい仕事に取り組むそう。松江での人とのつながりが、結果として複数の仕事を手掛けるパラレルワークという働き方につながった。
「スキルや経験といったスペックを重んじる都会型のキャリア形成と違い、ここでは人とのつながりをベースにした仕事ができる。私の人間性や可能性をじっくりと見てもらえたので、特別なスキルのない私でもここまでやってくることができました。収入は東京で勤めていた頃の3分の2程度になりましたが、1LDKのアパートに住み、松江で購入した自動車で動き回る暮らしはとても心地良くて幸せです」

島根県松江市の自然を眺める桐山さん

自分にとっての最適解を冷静に見極めよう

自らの経験を振り返り、地方への移住を考えている人に、「DO」ではなく「BE」優先の選択を勧める桐山さん。「自分にはこれができる」と「DO」をアピールするだけでなく、まず「自分がどうありたいか」という「BE」を大切にして、それが移住によって実現できそうかどうか、という視点で移住を考えてみるのも良いという。

「今の時代、気になる地域と関係人口という関わり方を築いたり、ワーケーションなどで二拠点生活を送ったりすることが可能な中で、『移住が最適解か?』という視点を持っていてほしいです。その土地に合う、合わないは人それぞれなので、『お試し移住』などの制度を利用し、現地の雰囲気を体感してみることも大切ですね。移住先でやっていけるかどうか、自分のスペックの“優劣”から考えるのではなく、出会った人やこれから出会う人を軸に考えることで、移住が豊かで持続可能な暮らし方の選択の1つになるのではないでしょうか」

(2024年2月14日取材)

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