郷里の新潟にUターンして続ける経営者業
渋谷 修太さん
渋谷 修太さん
新潟県出身。2020年6月に千葉県から新潟県新潟市に移住。
- 移住時の年代:30代
- 家族構成:妻、子供
- 移住スタイル:Uターン
- 職業:ソフトウェア会社代表
どこに住んでいても
仕事に支障なかった
ソフトウェア会社「フラー」会長の渋谷修太さんは2020年6月、本社のある千葉県柏市から故郷の新潟市にUターンした。柏市のマンションを引き払い、新潟市内に一戸建てを借りた。
きっかけとなったのは、4月に出た新型コロナウイルスの緊急事態宣言。感染防止のため、在宅勤務に切り替えた。「最初はどうなるか心配だったのですが、始めてみると在宅の方が、仕事の効率が上がったんです」と渋谷さんは話す。それまで、主に首都圏の取引先との相対の打ち合わせは1日に多くても5件程度しかできなかったが、在宅勤務になってから、オンラインでの会議が中心となったため、移動時間などがなくなり、1日に8件の会議をこなせるようになった。
IT関連の企業の多くが首都圏にあり、首都圏に自宅を構えた方が効率的と思い、「さらに便利なところがいい」と2020年の年明けまで東京都内に新居を探していた。「その思い込みをコロナが良い意味で打ち砕いてくれました」。どこに住んでいても仕事に支障がないことに気づき、「それならば」と、東京を飛び越えて17年に開設した新潟支社に移って仕事を続けることに。地元の経営者からも新潟の起業家育成の指南役としても頼りにされていて、「戻ってきたら」と誘われた。「自分が先駆けとなって、働き方を含め、地方での企業活動の新しい流れをつくることができればとも思っていました」
生活コストは3割減り、
アウトドアの趣味も充実
さて、移住によって何か変わったか? 家の広さが2倍になったのに対し、家賃は半額になった。一方、首都圏と違って取引先のオフィスが離れているため、どこへ行くのにも車が欠かせなくなった。「それでも生活コストは、ざっと見積もって3割減ったという感覚です」
オンライン会議が続き、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションも減ったのではと思っていたが、実は移住してからの方が、地元の経営者らと深く付き合えるようになったという。首都圏などに比べ、新潟では感染の影響が少なかったため、夜の会食などに参加しやすかったからだ。「新潟は酒どころで飲み会を重んじる雰囲気があり、日中はオンライン、夜は居酒屋という流れで仕事関係のコミュニケーションもかえって濃密になりました」
プライベートも変わった。移住前はどちらかというと読書が好きなインドア派だったが、新潟ではアウトドアを満喫するようになった。「バーベキューやテントなどアウトドア用品一式を買い込み、家族や仲間と庭などで楽しみ、今はキャンプに夢中です」
移住によって今のところ幸福度は確実にアップしているという。「ビジネス的な成功だけでなく、地域に求められ、役に立っているという実感が大きく影響しているのだと思います」
華やかな都会から
自然に向かう若者の関心
渋谷さんも、若い人の意識は感染拡大の前後で変わってきているとみている。例えば、SNSなどにアップされる写真のテーマ。いわゆる「バエるもの」が変わってきた。コロナ以前は、都会のビルやオシャレなレストランなどを背景に友人などと集っている写真が中心だったが、感染拡大後は人の写っていない自然の景色などが目立つようになっているという。「3密を避ける生活習慣が定着し、関心が華やかな場所を背景にした人から自然や日常の暮らしに向かっているように感じます」
移住を漠然と考えている若い世代に、「自分の人生に対する考え方を逆から発想してみては」と渋谷さんはアドバイスする。会社に就職することから自分の人生を組み立てていくのではなく、どんな人生を送りたいかをまず思い描き、そのためにどこに住んで、どんな仕事をすればいいのかを考えてみる。
そうすれば、必ずしも首都圏に住まなければということにはならないはずだという。「コロナによって暮らし方に対する意識が変わってきていることもあって、妥協せず自分の暮らし方を考えて実践することがかっこいい時代になってきています。その延長線上に移住という選択肢もあるのではないでしょうか」
(2020年9月15日取材)
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