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LIFE STYLE移住者の暮らし

敢えて高齢化率の高い地域を選択し、移住

榮 大吾さん

PROFILE
榮 大吾さんの写真

榮 大吾さん

神奈川県出身。2018年9月に千葉県から山口県周防大島町に移住。

  • 移住時の年代:20代
  • 家族構成:妻、ウサギ1羽、ニワトリ6羽
  • 移住スタイル:Iターン
  • 職業:集落支援員、ひじき漁師など

自らの人生の収支を予想し、住居費の大きさに驚愕

榮さんは神奈川県横須賀市出身で、かつては大都会で働くエリートビジネスマンだった。政府系の金融機関に勤務していた頃は午前5時ごろ起床してマーケット状況をチェック、満員電車で通勤し、帰宅は午後9時、10時以降という日々を過ごしていた。

結婚をきっかけに、自分の人生の収支予想をしてみると、住居費のあまりの大きさに驚いた。確かに仕事は意義もやりがいもあって楽しい。だが、生き方としてこのままで良いのだろうか、そんな疑問がふつふつとわいてくる。また広島赴任中に出会った妻は広島出身で、東京勤務になっても故郷に帰りたいと望んでいる。いくつかのタイミングが重なり脱サラを決意、移住を考え始めたのだった。

候補地は、妻の実家がある広島から1時間半の圏内と考えて東京・有楽町にある認定NPO法人ふるさと回帰支援センターを訪れ、移住フェアなどに参加した。

「高齢化率」を参考に移住地を検討

移住地を検討する際、重視したものの一つが「高齢化率」だという。

「今、人口減少が課題とされていますが、長い目で歴史を見ると、むしろ日本は明治期以降の人口が異常なほど増え過ぎているとも捉えられます。今後約100年で人口は明治期以前に「戻る」のです。そういった意味で、高齢化率が高く人口減少が進んでいる地域こそが最先端だという仮説を持ちました」

船上で笑顔をみせる榮さん

広島県のほか、岡山県や山口県の主に中山間地域計10か所ほどを候補地として絞って移住先を検討。町が「集落支援員」という町おこしを仕事とする町役場職員を募集していることや、瀬戸内海の小さな島で風光明媚であることなどが魅力的に映ったこと、役場の職員の方々が移住や起業のメリットだけでなく現実をきちんと伝えてくれたことが決め手となって、山口県周防大島町に移住を決めた。

「人口が減り、下げ止まりのポイントは近い将来やってきます。私が今住んでいる周防大島町は、日本全体より30年から50年早くその大転換を体験できるのではないかと思ったのです」

現場で人と企てる これまでの仕事の延長

「実は今の仕事は半官半民の銀行員時代にやっていた仕事の延長という認識です。自分に今必要になるのは公的、民間的取り組みのどちらなのか、あるいは適切な割合はどの程度なのかを日々考えながら業務に取り組んでいます。銀行では主にデスクワークでしたが、現在はいち個人として現場で汗をかくことが多いです」

ひじきを載せた作業台を運ぶ榮さん

非正規の公務員でもある集落支援員としての業務を行う傍ら、自らの事業も進めており、主な収入の柱は、ひじき漁からウェブマーケティングまで多岐にわたる。どれもこれからの地域に必要になってくるものとして関連づけて取り組んでいるという。

最高級のひじきを収穫。量は増やさない

事業の中でも特に注力しているのがひじきの収穫、加工販売だ。個人的に親しくなったひじき漁師から2019年に誘われた。「以前から、自分の手で稼ぐ、畑や漁など一次産業的な生き方を試してみたいと思っていました。過疎地域でも稼げるし、仕事は作れることを証明したい」と語る。

パッケージ化されたひじきを手にする榮さん

真冬に新芽のみを収穫し、鉄釜で煮立てる。できあがったひじきは産地の「沖家室(おきかむろ)島」から名付けた「沖家室ひじき」として商品化し、2021年5月からインターネットなどで販売を開始した。

「12月の大潮の夜中に最も状態の良い新芽のみを刈り、全ての工程を真心こめた手作業で商品化した、最高級のひじきです。煮付けではなくサラダとして食べてほしい」と胸を張る。「反響は大きく、ミネラルや食物繊維が豊富なこともあってリピーターも多いですが、収穫量を増やそうとは思いません。理想は、決まった量だけを収穫して早めに売り切り、その後は定期便のお客様と毎月やりとりさせていただきつつ、畜産や農業にも挑戦していくことです」と、未来を見据える目力がまぶしい。

過疎地は不便だがそう困っていない。
人間関係恐れるなかれ

都会から過疎地へ移住すると、不便は感じないのだろうか。「野菜は自分の畑で獲れて、卵もニワトリが産んだ新鮮なものが手に入ります。そのほかの品物は1週間分スーパーで買いだめしますし、通販で注文すれば翌日には品物が届きますから、便利か不便かと言われれば不便ですが、その不便さが良いところですし、困ることや不安を感じることは多くありません」と語る。

飼育しているニワトリと笑顔の榮さん

ただ、近くに書店がないことには困ったそうだ。「欲しい本は通販でも手に入りますが、それは自分が知っている範囲のものに限ります。そうではなく、たまたま目について手に取った本、そこから新しい刺激を受けると思うんです」。田舎暮らしには、多少の課題はつきもののようだ。

ひじきを載せた作業台を運ぶ榮さん

地方では人間関係の濃さに尻込みする人も少なくないが、そんなことはどこ吹く風。「人が3人以上集まれば、何らかの人間関係ができます。村社会とは言っても、学校の部活動や会社の付き合いと根元は同じ。部活動でも合宿に行かないとか、会社で送別会に参加しないとかいう人はうまくいかないでしょう。それと一緒だと思います。きちんとコミュニティに馴染もうと努力すれば、心は通じますよ」と話している。

(2021年10月29日取材)

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