「超都会志向」が一変、気取らず身軽に。自分の生き方アップデート
佐野 麗佳さん
佐野 麗佳さん
東京都東村山市出身。2025年7月に横浜市から和歌山県白浜町に移住。
- 移住時の年代:20代
- 家族構成:独身
- 移住スタイル:Iターン
- 職業:個人事業主
INDEX
心底リラックスできた南紀白浜の魅力
和歌山県南部に位置する南紀白浜は、年間約340万人が訪れる日本有数のリゾート地として知られる。白砂の浜が広がる白良浜(しららはま)に加え、有馬や道後と並ぶ古湯の一つ、白浜温泉も楽しめる。そんな非日常へのゲートウェーとなる南紀白浜空港まで、羽田空港から飛行機で約1時間。真っ白な砂浜と青い海のコントラストが美しい白良浜が人気で、夏には多くの海水浴客で賑わう。東京ドーム約17個分の広大なテーマパーク「アドベンチャーワールド」や、おいしい海鮮グルメが楽しめる「とれとれ市場」も多くの観光客を惹きつけている。近年はICT企業の誘致に地元自治体が力を入れており、「ワーケーションの聖地」としても知られるようになった。当然、移住を考えている人からの注目度も高い。
もっとも、「そうした予備知識はほとんどありませんでした」と佐野さんは笑う。ワゴン車で全国を旅している作家の知人から、「あなたに似合う街がある」と連絡をもらい、2泊3日で南紀白浜を初めて訪れた。2023年夏のこと。現地のことはほとんど知らなかったが、「妙にしっくりきた」。程よいリゾート感、作り込まれ過ぎていない観光地、そして太平洋に沈む夕日……。「そんな環境で心底リラックスすることができたんです」。滞在3日目には生活していた横浜市との2拠点生活を送ることを決め、2023年10月から実行に移した。
2拠点生活に適した「たくましさ」と「身軽さ」
大学4年生の時に「就職はまだしたくない」と、1年間休学して、オーストラリアのシドニーでワーキングホリデーを経験。そこでアルバイトをして、普通に就職した人より収入がよく、「これなら就職しなくてもよさそう」と佐野さんは思ったという。「自分で稼いで生活していく自信というか、度胸がついたのかもしれません」。大学卒業後もインフルエンサーやSNSのコンサルタントなどを行いながら個人事業主として生活を続けている。そうした仕事をテキパキとこなすたくましさと、会社勤めでは実現の難しい身軽さを兼ね備えた佐野さんのライフスタイルも、2拠点生活に適していたのかもしれない。
実は、南紀白浜と出会うまでは「超都会志向」で、都心の超高層マンションへ引っ越す計画も立てていたという。それが南紀白浜を訪れて一変した。都会の生活では、洗練された内装のレストランや超高層ビルの上層階にあるラウンジで時間を過ごすことがステータスだったが、南紀白浜では、「おばあちゃんが営んでいる素朴な食堂」で地場のとびきり新鮮な食材を気取らず堪能できる。この雰囲気が、気を張って生きてきた佐野さんの心を動かした。
移住先を拠点に海外での仕事もこなす
2拠点生活を送っているうち、佐野さんの中で南紀白浜での生活の比重が徐々に増していき、2025年7月、横浜の家を引き払い、内陸部にあるゲストハウスに住民票を移した。横浜のマンションの家賃は15万円プラス共益費だったが、南紀白浜は家賃6万円。その代わり、バスとトイレは共同だ。「2拠点生活の時代は両方の家賃だけで20万円を超えていたので、移住によって支出も減って身軽になりました」と佐野さんは話す。
仕事は横浜時代のものを引き継いでいる。女性誌向けに南紀白浜の情報を発信したり、企業が行うSNSの発信を手伝ったり。地元ではチョコレート店でアルバイトをして人脈を広げ、2024年7月には、臨海浦に浮かぶ観光名所の円月島を望める場所にコーヒースタンドも開いた。ワーキングホリデーで身につけた英語も役に立っている。和歌山県で造られている梅酒の海外販促を手伝い、2025年秋にはアメリカのサンディエゴ、ベルリン、そしてロンドンを回った。今年1月には日本貿易振興機構(ジェトロ)の商談会に随行してスペインのマドリッドとバルセロナへ行ってきたばかり。「南紀白浜は関西国際空港にも近いので、海外へでかけるのにも便利な場所なんです」
移住を小さく試し、実現の可能性を探る
「移住といっても、以前の生活すべてを捨てる必要はありません」と佐野さんは話す。佐野さん自身、2拠点生活から始め、首都圏での仕事をリモートでこなしながら、白浜の比重を徐々に増やしていった。こうした「段階的な移行」が、移住に対する精神的なハードルを下げてくれた。移住を考えている人には「移住したい」という想いと、そのために必要な生活費や仕事の有無、そして現地での移動手段など現実とのギャップを、時間をかけて埋めていくことが大切だという。そのためには自治体などが行っている試住や週末滞在など、「移住を小さく試すことを勧めたい」と佐野さんはアドバイスする。
地域に歩み寄り、ネットワークを広げる
地方での生活を成功させる秘訣として、佐野さんは「自ら地域に歩み寄ること」の重要性も説いている。「地元のチョコレート店でアルバイトを始めたり、地域のイベントに参加したりすることで、ネットワークが自然に広がっていきました」。一歩踏み出すことで、移住先が単なる「静かな場所」から、かけがえのない「自分の居場所」へと変わっていくという。「移住とは単に生活の場所を変えることではなく、自分の生き方を再定義し、より自分らしく、より心地よく生きるための『前向きなアップデート』の手段なのかもしれません」
(2026年2月24日取材)
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